現地の動き - Pick Up
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812. 自然への投資は公平性および経済的な利益をもたらす
持続可能な開発は、経済成長と自然環境保全を同時に実現させながら、その状態を長期的に維持していくことが求められます。しかし、経済成長と自然環境保全はしばしトレードオフの関係にあると考えられてきました。これに対し、最近PNAS誌で公表された論文は、自然環境の劣化は経済に大きな喪失をもたらし、とりわけ低所得国への打撃が大きいこと、逆に、自然環境保護に投資をすることで、経済的に大きな便益が見込まれ、とりわけ低所得国の人々への恩恵が期待できることを示しました。 -
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811. 肥料が効かない?ササゲの世界的な生産地、西アフリカスーダンサバンナにおける収量安定化を目指して
乾燥に強いササゲは雨の少ない西アフリカ内陸部(スーダンサバンナ)において広く栽培され、現地で生きる人々の貴重なタンパク質供給源です。しかし、農家におけるササゲの栽培は伝統的な方法が主で、土壌の貧栄養や不安定な降雨のため収量は低く、肥料をやっても効果が安定しません。スーダンサバンナの代表国であるブルキナファソの農業環境研究所(INERA)と国際農研の共同研究により、肥料効果が変動する要因をつきとめました。この知見は効果的な施肥技術と栽培方法の開発につながります。 -
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810. 2022年における世界の森林破壊
6月27日、世界資源研究所(WRI)が運営するグローバル・フォレスト・ウォッチは、2022年にスイスの国土面積に匹敵する410万ヘクタールの熱帯原生林が失われたと報告しました。世界の原生林喪失面積の43%をブラジルが占め、アフリカのコンゴ民主共和国やガーナでも記録的な規模の原生林が破壊されました。一方、インドネシアやマレーシアでは、産業の規制や企業のコミットメントが功を奏してか、森林喪失が減少したと報告されています。 -
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809. 日本の熱帯農業研究現場の最前線 「熱研」
6月29日は国連で制定された国際熱帯デー(International Day of the Tropics)です。地球温暖化により日本各地でも気温の上昇、台風・豪雨の増加や海面水面の上昇など熱帯化の進行が疑われる現象が起きるようになってきています。農業面では、果実の着色不良、イネ、トマト等作物の高温障害等が頻発しています。熱帯・島嶼研究拠点、略して「熱研」は、石垣島の亜熱帯海洋性の湿潤島嶼といった気候・地理的条件を活かし、気候変動を始めとする地球規模で発生する食料・環境問題の解決に日々取り組んでいます。 -
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808. 複数の環境ストレス・攪乱要因により人新世のエコシステム崩壊が早まる可能性
気候変動に関する議論では、人新世の時代における人為的な経済活動によって、地球がある時点を境に不可逆性を伴うような劇的な変化を伴うティッピング・ポイント(転換点tipping point)に達しつつあるとされています。6月22日にNature Sustainability誌で公表された論文は、人為的経済活動による温暖化・環境負荷・極端現象などの攪乱要因など、複数のストレスが相関しあうことで、エコシステムが崩壊する時期がさらに早まる可能性について警鐘を鳴らしました。 -
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807. 国家の管轄権の及ばない海洋地域の保全と持続性に向けた歴史的な合意
地球の表面積の7割を占める海洋は、その3分の2以上が、公海・海底・極地を含む、国家の管轄権の及ばない海洋地域(Marine Areas Beyond National Jurisdiction)となっており、生物多様性保全に関する国際的な取り組みの必要性が叫ばれてきました。6月19日、国連は、国家の管轄権の及ばない海洋地域における生物多様性の保全と持続可能な利用を保障するための歴史的な合意を採択したと発表しました。 -
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806. 黒海穀物イニシアチブのゆくえ
6月20日、国連事務総長は、黒海穀物イニシアチブのもとでの食料・肥料輸出の手続き・交渉の遅れについて失望しているとの声明を発表、ロシアとの基本合意の継続の重要性を訴えました。そんな中、6月24日、ウクライナ侵攻に参加していたロシアの民間軍事会社「ワグネル」がロシア南部で一旦反旗を翻したあと引き揚げたことが伝えられ、食料サプライチェーンをめぐる地政学的な不確実性は高いままです。 -
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805. 持続可能な開発報告書2023: すべてのSDGsが軌道を外れている
2015年から2030年を対象としたSDGsも折り返し地点です。今週刊行された持続可能な開発報告書2023では、すべてのSDGsが軌道を外れているとされました。SDG指標の国別ランキングでは日本は年を追うごとにランクを落とし、今回は166か国中21位でした。 -
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804. 世界が掲げる「ネットゼロ」目標
人間活動による二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガス排出量から、炭素吸収量と除去量を差し引いて相殺することを意味する「ネットゼロ」概念。各国はネットゼロの達成を掲げていますが、「誰も取り残さない」世界を実現するには、未だに食料栄養安全保障に課題のある国々における農林畜産業の生産向上は必須であり、温室効果ガス排出削減と両立しうるイノベーションの推進・普及が早急に求められています。 -
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803. 2023年6月食料見通し
2023年6月15に公表された国連食糧農業機関(FAO)による食料見通しは、世界の食料システムが異常気象・地政学的緊張・デリケートな需給バランスのリスクに直面しており、政策変化や他の市場における動向が食料価格高騰や世界の食料安全保障危機に転じる懸念について言及しました。食料の純輸入国である途上国にとり、多くの食料品の国際価格の下落が国内小売価格の下落に反映されず、2023年も引き続き生活費上昇圧力がかかっています。 -
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802. フラッシュ干ばつリスクの増大
気候変動に伴い、異常気象の頻度が増加する中、極端な干ばつや洪水の食料システム・農業生産性への影響が懸念されています。最近、Communications Earth & Environment誌で公表された論文は、温暖化により、急激な乾燥化を伴うフラッシュ干ばつ(flash drought)と呼ばれる現象の頻度が増加し、農業・食料システムに大きな影響を及ぼすとの予測を発表しました。 -
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801.サステナブル・ガストロノミー『持続可能な食文化』
昨日6月18日は、国連によって「持続可能な食文化の日(Sustainable Gastronomy Day)」に制定されています。今日は持続可能な食文化について考えてみたいと思います。 -
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800. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー 「彼女の土地、彼女の権利」
本日、Pick Upは800記事目となりました。明日の6月17日は、「砂漠化および干ばつと闘う世界デー」です。砂漠化は地球規模の問題であり、生物多様性、環境、貧困、社会経済、持続可能な開発などに深刻な影響を及ぼします。今年は「彼女の土地、彼女の権利」をテーマとし、女性が土地回復と干ばつから回復する取り組みの最前線に立つ時が来たと呼びかけています。国際農研は、持続的な土地管理技術の開発・普及を通じて、砂漠化・土地劣化の問題解決に取り組んでいます。 -
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799. 安全で公正な地球システム・バウンダリー
地球システムの強靭性および人類の厚生は分かちがたく結びついています。人類の安全性および公正という観点から地球システムの限界を定義し、グローバルのみならず地域レベルで評価する必要性があります。プラネタリー・バウンダリー概念を提唱したことで知られているRockström博士らのグループが、Nature誌にて「安全で公正な地球システム・バウンダリー Safe and just Earth system boundaries」概念を発表、極めて重要な地球システムの領域の多くにおいて、既に安全および公正な限界を超えていることを指摘しました。 -
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798. ウクライナ情勢の食料安全保障への影響
ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが決壊したことに関して、国連の高官が、「世界の穀倉地帯」における環境的破壊が食料危機の不安を高めることへの懸念を語ったと伝えられています。また、ウクライナ産作物の輸出を保障することで世界食料危機の回避に貢献してきた黒海穀物イニシアチブですが、ロシアが合意から脱する可能性をちらつかせているところ、国連が仲介に尽くしていることが伝えられています。 -
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797. 過去10年間の温暖化に関する最新情報
6月9日、気象庁は、エルニーニョ現象が発生しているとみられると発表、今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)と予測しましたが、エルニーニョ現象のもとで世界の気温はさらに押し上げられる可能性があります。Earth System Science Data誌で公表された論文は、最新の推計により、2013-2022年の10年間で0.2℃の温暖化が進行したことを示しました。論文はまた、2020年代の間に温室効果ガス排出削減を社会的に選択することで、人類による気候への人為的な影響を転換する必要性を強調しました。 -
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796. メタンガス削減に寄与するカギケノリ養殖研究
牛や羊の“げっぷ”に含まれるメタンガスは温室効果ガスの一つで、気候に大きな影響を与えていると考えられています。近年、海藻を牛の飼料に添加して与えることで、牛のメタン排出が抑えられることがわかってきました。特に「カギケノリ」という海藻はメタン削減効果が高く、大きな関心が寄せられています。現在、カギケノリの養殖事業は世界中で開始され、新たな海藻産業として期待されています。 -
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795. リン鉱石由来の肥料を有機物施用や穀物・マメ科植物と組み合わせることで、耕作地の土壌動物相を改善できる
サハラ以南のアフリカでは、土壌肥沃度の低さと密接に関連した農業生産性の低さが、同地域の持続的な発展を大きく妨げています。増え続ける人口の食料需要を満たすためには、農地の肥沃度を施肥により向上させることが必須条件です。そのためアフリカの低品位リン鉱石を焼成し、リン肥料(焼成リン肥)を製造することが提案されています。一方、大型土壌動物は、土壌の生物学的な健康指標として不可欠であり、土壌団粒の形成を増加させることが知られています。国際農研では、ブルキナファソ環境農業研究所等との共同研究により、リン鉱石由来の肥料を有機物施用や穀物・マメ科植物と組み合わせることで、耕作地の土壌動物相を改善できることを示しました。 -
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794. 持続可能なブルーエコノミーに向けて~世界の海洋の展望~
6月8日は世界海洋デーです。本日のPick Upでは、『The Economist』を発行するエコノミスト・グループのWorld Ocean Initiativeが執筆した『World Ocean Outlook 2023(2023年 世界の海洋の展望)』を紹介します。この報告書では、持続可能なブルーエコノミーに向け、気候変動、生物多様性の損失、環境汚染などの地球規模課題への解決策と行動に焦点を当てています。