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764. 欧州の気候変動政策

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764. 欧州の気候変動政策

欧州は、環境問題に積極的な姿勢で臨んでいることで知られています。4月18日、欧州議会は、2030年まで気候変動対策目標を達成するために、野心的な政策を採択したと報道されました。


欧州のカーボンマーケットは汚染物質を排出する工場等に二酸化炭素排出権の購入を義務付けるなど、欧州において環境汚染のコストを大幅に引き上げることで抑止を目指しています。2022年末、欧州議会は加盟国に、2030年までに1990年の温室効果ガス排出水準比で少なくとも55%削減することを目的とした法案(Fit for 55 in 2030 package)を提案していました。排出権取引制度(Emissions Trading System :ETS)に関しては、2030年までに、2005年比で62%の排出削減を目指す野心的な内容が多数決で採択されたとのことです。

議会はまた、非EU加盟国に対して気候変動に野心的な目標推進へのインセンティブを供与するメカニズムである、炭素国境調整措置* (Carbon Border Adjustment Mechanism: CBAM) にかかるルールを採択しました。CBAMは、EUが温室効果ガス削減規制を強化する中で、規制の緩いEU域外への生存拠点の移転や域外からの輸入増加などを防ぐ措置と位置付けられています。CBAMの対象となるのは、セメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力等であり、これら産品の輸入業者は生産国におけるカーボンプライスとEU排出権取引のもとでのカーボンプライスの価格差を支払うことが求められるそうです。

 

気候変動・環境対策にまつわるルールセッテイングにおいて世界的な大きな影響力をもつ欧州の動向は、世界各国の政策・戦略にも大きな影響を及ぼしそうです。

 

*炭素国境調整措置 (Carbon Border Adjustment Mechanism: CBAM) : EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品をEU域外から輸入する際に、域内で製造した場合にEU排出量取引制度(EU ETS)に基づいて課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるもの。この背景には、EUが温室効果ガス削減規制を強化する中で、規制の緩いEU域外への生存拠点の移転や域外からの輸入増加など、いわゆるカーボンリーゲージに対する懸念がある。欧州委は、カーボンリ―ケージはEUの削減目標に悪影響を与えるだけでなく、世界全体の排出量増加にもつながりかねない点を強調、あくまでも気候変動対策としてCBAMの導入を目指すとしている。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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