研究成果情報

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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • ベトナム肉牛ふん天日乾燥過程における温室効果ガス排出係数(2022)

    ベトナム南部の肉牛農家は主に天日によりふんを乾燥処理する。その過程における温室効果ガス排出は単位有機物及び初発単位窒素あたりそれぞれCH4: 0.295 ± 0.078 g kg−1 VS、N2O: 0.132 ± 0.136 g N2O-N kg−1 Ninitialであり、当該国当該処理区分における温室効果ガス排出係数として活用できる。天日乾燥処理により、ふん中微生物によるメタン代謝が大きく低減し、メタンは乾燥初期にのみ排出される。

  • タイ肉牛生産過程における温室効果ガス排出の包括的評価(2022)

    タイ肉牛飼養過程およびふん尿堆積過程におけるメタン排出はそれぞれ6.87%GEI(総エネルギー摂取量), 0.68%GEI程度であり、堆積ふんへの稲わら混合(重量比5%)は有機物分解を促進し、メタン排出ピーク及びメタン生成古細菌によるメタン代謝を低減するが、総温室効果ガス排出量に与える影響は限定的である。

  • 東南アジア肉牛反芻胃由来メタン排出推定式(2022)

    東南アジアにおける肉牛反芻胃由来メタン排出量は、乾物摂取量、飼料成分(中性デタージェント繊維)、体重を説明変量に用いた推定式により、現行推定方法よりも高精度で簡易に推定できる。

  • 三期作を通じた間断かんがいは農家の利益向上と温室効果ガス削減に貢献(2022)三期作(通年)を通じた調査は作期による栽培管理、生産費用、収量や販売価格の違いを考慮した評価を可能にする。これらを考慮した評価によると、ベトナム・メコンデルタにおいて、間断かんがい(AWD)三期作実施農家はAWD導入により利益を6%上げながら、温室効果ガス排出量を38%削減できる。農家の利益を向上しつつ、気候変動緩和・適応に貢献するコベネフィットな技術としてアジアモンスーン地域への展開が期待される。
  • バリ島の水利組合(スバック)の資源配分における価値観の変化をゲーム理論で予測(2022)

    バリ島の水利組合(スバック)を対象に、エージェントベースモデルとゲーム理論を組み合わせた手法により資源利用における価値観を分析すると、協力関係の維持に価値が置かれている現在の資源配分が、労働資源の減少の進行に伴う価値観の変化によって、非協力的な資源配分になると予測される。

  • 水田でのメタン発酵消化液の施用によるメタン排出促進は間断灌漑で相殺できる(2021)ベトナム・メコンデルタの水稲三期作において、メタン発酵消化液の肥料利用と間断灌漑の組み合わせは、現地慣行である化学肥料と常時湛水の組み合わせと比較して、水稲収量を減らすことなくメタン排出量を11~13%削減できる。
  • 再生稲の水分消費は、移植稲と比較して生育初期で大きく生育後期で小さい(2021)これまでに報告事例のない水稲再生二期作の用水計画の策定に必要な再生稲の水分消費割合を明らかにする。再生稲の生育に応じた水分消費割合はその旺盛な分げつ特性により生育初期から放物線的増加を示すことから、移植稲と異なる用水計画の策定が必要となる。
  • オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす(2021)オイルパーム古木の慣例的農地還元による影響を確認するために、パーム古木繊維を混合した土壌で植物栽培を行った結果、生育不良や土壌に糸状菌Trichocladium属菌が有意に増殖する。パーム古木繊維の直接的な農地還元は土壌環境に負の影響を与える。
  • 少ない窒素肥料で高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)強化コムギの開発(2021)高いBNI能を持つ野生コムギ近縁種であるオオハマニンニクとの属間交配により、多収品種にBNI能を付与したBNI強化コムギを開発できる。BNI強化コムギは、土壌中のアンモニア態窒素の硝化を遅らせ、その土壌中濃度を向上させ、低窒素環境でも生産性が向上する。BNI強化コムギの活用により、窒素肥料の損失に伴うN2O排出による地球温暖化の緩和と水質汚濁物質の削減が期待できる。
  • トウモロコシ根の生物的硝化抑制(BNI)物質の発見(2021)BNI活性を有するトウモロコシ根の表層の疎水性画分から、新規高活性BNI物質ゼアノンが見出されるとともに、HDMBOAとその類縁体、HMBOA及びHDMBOA-β-グルコシドが見出される。今回同定した4物質が、トウモロコシ根のBNI活性の重要な役割を担っている。
  • BNI強化コムギによる窒素肥料由来温室効果ガス削減効果(2021)開発済の土壌の硝化抑制率30%のBNI強化コムギにより、2030年までに施肥窒素量を11.7%削減、窒素利用効率を12.5%向上可能と試算される。さらに、土壌の硝化抑制率が40%に向上し、最適栽培地域に導入された場合、ライフサイクルアセスメントを用いた評価に基づくと、2050年までに世界のコムギ栽培地域から窒素肥料由来の温室効果ガスを9.5%削減可能と推定される。
  • フタバガキ科熱帯林業樹種Shorea leprosulaの茎の成長と新葉の関係(2021)フタバガキ科樹木のS. leprosulaでは、茎は葉と同調して断続的に成長し、葉の切除により茎の伸長が顕著に抑制される。葉の成長は茎の伸長の制御要因となっており、その制御機構の解明は、木材生産や適切なサイズの苗木の安定供給に役立つことが期待される。
  • ラオス山地では植栽密度と立地選択によりチーク成長が倍増する(2021)ラオス山間部では植栽密度のコントロールと植栽する斜面の形状や傾斜の選択によって人工林チークは肥大成長および伸長成長に倍程度の差異を持つことから、適地判定が重要である。凹形緩傾斜面の下部が適地として最も推奨され、密植は避けた方が成長がよい。
  • 洪水インデックス保険に対して稲作農家が支払う保険料の算出(2021)

    気象災害の多いミャンマー国の沿岸域の稲作農家の経営安定化のためには、農家が受け取る最適なインデックス保険の保険金と保険会社の保険料を求める必要がある。降水量、リスク回避度、コメ販売価格変化にしたがって保険金と保険料を算出する手法を開発する。

  • アフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は天水稲作で輸入肥料を代替できる(2021)未利用のアフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は、ブルキナファソの天水稲作において、高価な輸入リン肥料である過リン酸石灰と同等の施肥効果を示すことから、代替となり得る。収量に寄与する肥料中のリン成分は場所で異なり、地下水位の高い河床では水溶性リンと可溶性リンの両者が、地下水位の低い河岸斜面では水溶性リンが寄与する。
  • ダイズ根系の改良に資する根長に関与する遺伝子座の特定(2021)ダイズ品種「Fendou 16」は長い主根を持つ。QTL解析の結果、主根長に関与する遺伝子座は第16番染色体のDNAマーカーSat_165とSatt621間のゲノム領域に存在する。同定されたダイズの長根型品種ならびにその遺伝的な情報はダイズの根系の遺伝的改良に利用できる。
  • ダイズの種子サイズと形状に関与する遺伝子座の特定(2021)ダイズ種子のサイズと形状を制御する多数のQTLが検出され、特に効果の大きいQTLクラスター(qSS2)は、第2番染色体に座乗している。準同質遺伝子系統を用いた圃場試験により、qSS2の効果が実証できたことから、これらのQTLが、ダイズの種子サイズや形状の改善に資することが期待される。
  • ウイルスベクターを用いたキヌアの遺伝子機能解析法(2021)有用な分子育種技術が開発されていないキヌアにおいて、ウイルスベクターを用いてキヌアの遺伝子発現を制御し、遺伝子機能を解析する技術を確立する。本手法はキヌアの新規遺伝子の同定や、分子育種素材の開発に利用できる。
  • ダイズ紫斑病菌のゲノム情報(2021)新たに取得したダイズ紫斑病菌のゲノム配列は、完成度が高く、ダイズ紫斑病菌の病原性関連遺伝子等の研究、分子生物学的情報に基づいた病害診断技術の開発などに利用できる。
  • メキシコのダイズさび病菌の病原性は2つの傾向に大別される(2021)

    メキシコの2州で2016年から2019年に採取されたダイズさび病菌は、全く異なる病原性の特徴を示す2つのグループに分けられる。病原性の明瞭な地理的差異の情報は、さび病抵抗性品種の導入による病害防除に利用できる。