ホワイトギニアヤムの早植えはイモの増収を可能にする
ホワイトギニアヤムのイモ肥大は日長ではなく主に植え付けからの日数に依存するため、雨季開始初期の早植えにより乾季が始まる前にイモ肥大が完了する。これにより、通常よりも早い収穫とイモ収量の増加が見込める。雨季初めの不安定な降雨はイモ収量にほとんど影響しない一方、降雨開始の遅延に対応するために植え付けを遅らせることは、イモ肥大期の降雨停止による収量低下リスクを高める。
背景・ねらい
ホワイトギニアヤム(以下、ヤム)は西アフリカのギニアサバンナ地域で広く栽培される主要作物である。ヤムの栽培は植え付けから収穫まで8~10か月を要するため、雨季の開始と終了の時期は茎葉の生長およびイモの肥大にとって重要な要因となる。ギニアサバンナでは2050年までに雨季の短期化によりヤムの収量が33%減少すると予想されており、降雨パターンの変化はヤム生産にとって深刻な問題である。
ヤムの種イモの植え付け時期を変更することは、降雨パターンの変化に対する有望な対策である。通常、ヤムは生育初期の乾燥を避けるため、降雨が安定する雨季開始からおよそ1か月後に植え付けを行う。気候変動により雨季の開始が遅れ、植え付け時期を後ろ倒しにすると、生育後期が乾季に重なるため、乾燥ストレスによってイモ収量が減少する可能性がある。一方、近縁種のダイジョではイモの肥大が日長に強く依存するため、植え付け時期を変更してもイモの肥大開始には影響しない。
ホワイトギニアヤムに関するイモ肥大の日長応答については知見が少なく、植え付け日が収量に与える影響は明らかではない。そこで、本研究では世界最大のヤム生産国であるナイジェリアの現地圃場において植え付け時期の変更がイモ収量に与える影響を明らかにし、将来の降雨パターンの変化に対する植え付け時期変更の有効性を検証する。
成果の内容・特徴
- 種イモの植え付け日を雨季初め(早植え)、雨季開始後1か月(通常作期)、雨季開始後2か月(遅植え)の3パターンで栽培した場合、早植えでは通常作期よりも90日程度早く収穫でき、収量が21%増加する(図1)。
- イモの肥大開始は暦日ではなく植え付けからの日数に依存し、日長はイモ肥大にほとんど影響しない(図1)。植え付けが早いほどイモの肥大開始が早まり、土壌水分が十分にある雨季中に肥大が完了する。
- 雨季初めの少雨は茎葉の生育やイモ収量にほとんど影響しない。一方、植え付けが通常よりも遅れてイモの肥大期が乾季に重なる場合、乾燥ストレスにより収量が大幅に低下する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 将来予想される降雨パターンの変化に応じて最適なヤムの栽培体系を提案する際の基礎的な情報として利用が期待できる。
- 早植えを行う際、品種によっては種イモの萌芽が不安定になることがあるため、この点について新たな品種や技術の開発が必要である。
- 雨季初めの降雨が極端に少ない場合、地上部の生育遅延などに対するリスクを高める可能性がある。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 食料プログラム » 新需要創造
- 研究期間
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2021~2024年度
- 研究担当者
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井関 洸太朗 ( 生物資源・利用領域 )
Olaleye Olajumoke ( 国際熱帯農業研究所 )
松本 亮 ( 国際熱帯農業研究所 )
ORCID ID0000-0002-0106-6728 - ほか
- 発表論文等
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Iseki et al. (2024) Plant Production Science 27(3): 272-282.https://doi.org/10.1080/1343943X.2024.2351623
- 日本語PDF
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2024_B03_ja.pdf650.33 KB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。