国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

SSRマーカーを利⽤したホワイトギニアヤム品種識別技術パッケージ

要約

西アフリカの育種プログラムや種苗会社が利用するホワイトギニアヤムの品種および遺伝資源・育種系統について、品種・系統間の識別を簡易かつ迅速に行うことができる技術をパッケージ化するとともに、技術の利用支援のためのツールキットを提供する。

背景・ねらい

西アフリカの重要な主食作物であるホワイトギニアヤム(Dioscorea rotundata)は、全ゲノム配列が解読される等(平成29年度国際農林水産業研究成果情報B02「ギニアヤムのゲノム情報の解読および性判別マーカーの開発」)、品種開発とその普及において大きな転機を迎えている。一方、育種や苗生産の現場では、地上部やイモの外観からの品種識別が非常に困難であることから(図1)、植え付け・栽培・収穫・保存の各工程での他品種・系統の混入が長年の問題となっている。そこでDNA(SSR: Simple Sequence Repeat)マーカーを利用し、育種プログラムや種苗会社、普及機関等が、現場で簡易かつ迅速に利用できる品種識別技術パッケージを構築し、適用を図る。

成果の内容・特徴

  1. 品種識別技術パッケージは、小規模な実験施設での利用を想定し、最低限の機材・消耗品の購入やトレーニングによって実施できる技術と必要なサービスの組み合わせとする。
  2. 品種識別の簡易化・迅速化のために新たに開発した以下の技術・サービスを提供する。
    1. 増幅断片長の違いを利用して精度よく品種・系統を識別できるホワイトギニアヤム用に選抜した16個のSSRマーカー(図2)。
    2. 西アフリカの育種プログラムや種苗会社が利用する約550品種・系統のSSR多型情報を収蔵するデータベース(2020年2月時点)。
    3. 2)のデータベースと連動し、指定した品種・系統を識別するための最小数のSSRマーカーの組み合わせ(最小マーカーセット)を検索できるWebアプリケーション。
    4. これまで利用できなかったイモ表皮のサンプルを使用した品種識別を可能にすることで、ユーザーの品種識別技術利用の期間や目的を大幅に拡大するDNA抽出技術(図3)。
    5. 複数個体の葉の混合サンプルから一回のDNA抽出を行うことによって、100個体中1個体までの感度で他品種・系統の混入の有無を確認できる他品種混入検出手法(図4)。
  3. 品種識別技術パッケージの利用支援のために、利用案内、各種技術マニュアル、Webアプリケーション、サポート情報を含むツールキットを国際農研Webサイト上に公開する(図5)。

成果の活用面・留意点

  1. 品種識別技術を交配親の確認、栽培の各工程での他品種・系統混入の防止、普及・販売する苗の品質保証などに利用することで、育種や苗生産の効率化や質的向上に貢献できる。
  2. 最小マーカーセットや他品種混入検出手法の利用を通じて、品種識別に必要な作業時間および費用を大幅に軽減できる。
  3. 新規に取得した品種・系統のSSR多型情報は国際農研担当者がデータベースに随時追加でき、即時にWebアプリケーションでの最小マーカーセットの検索に利用できる。
  4. データベース未登録の品種・系統の識別には対応できない。

具体的データ

  1. 図1 ホワイトギニアヤム (D.rotundata)
    図1 ホワイトギニアヤム (D.rotundata
     左:圃場に生育する複数品種の地上部
     右:同一個体(DrDRS-139)から得られたイモ

  2. 図2 SSRマーカーによる品種識別の例
    図2 SSRマーカーによる品種識別の例
    SSR多型を利用して植付け前に品種が確認できる。

  3. 図3 二種類のサンプルが取得可能な時期
    図3 二種類のサンプルが取得可能な時期
    葉とイモ表皮の利用により技術利用期間が拡大する。

  4. 図4 他品種混入検出手法の利用例
    図4 他品種混入検出手法の利用例
    苗増殖の際の品質管理などに利用ができる

  5. 図5 SSRマーカーを利用した品種識別の流れと提供する技術・サービス
    図5 SSRマーカーを利用した品種識別の流れと提供する技術・サービス

所属

国際農研熱帯・島嶼研究拠点

国際農研生産環境・畜産領域

分類

技術

国名
  • ナイジェリア
  • 研究プロジェクト

    アフリカの食料問題解決のためのイネ、畑作物等の安定生産技術の開発(アフリカ食料)

    プログラム名

    農産物安定生産

    予算区分

    交付金アフリカ食料

    研究期間

    2019年度(2011~2020年度)

    研究担当者
  • 村中 (生産環境・畜産領域)
  • 山中 愼介 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • Tamiru Muluneh (岩手生物工学研究センター)
  • Agre Paterne (国際熱帯農業研究所)
  • 発表論文等

    Tamiru M et al (2015) Crop Science, 55:2191–2200 https://doi.org/10.2135/cropsci2014.10.0725

    品種識別技術ツールキットWeb サイトhttps://www.jircas.go.jp/ja/database/yam_toolkit

    日本語PDF
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  • English PDF
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