ラオスの農家在来技術である強酸性土壌でのコウモリ糞の植え穴施用の作用
ラオスの強酸性水田土壌での水稲跡畑作物栽培ではアルミニウム害が問題となるが、農家在来技術であるコウモリ糞の植え穴施用は、土壌の交換性アルミニウムを低下させて畑作物に対するアルミニウム害を軽減し、初期生育を促進する。また、カルシウムやマグネシウム等の交換性陽イオンや有効態リンなどを富化し、養分溶脱の進んだ土壌の改善に寄与する。
背景・ねらい
ラオスの天水田では養分の溶脱により土壌の酸性化が進みつつあり、中山間地には石灰岩地帯に属するにもかかわらず強い酸性を示し、リン酸肥沃度が極めて低い天水田が存在する。このような水田では、水稲収穫後に播種されたトウモロコシの生育が著しく抑制される現象が見られるが、農家では少量のコウモリ糞を土壌に混ぜ植え穴に客土することで、トウモロコシの生育を改善する例がある。そこで、コウモリ糞の作用を明らかにし、水田土壌の改善につなげる。
成果の内容・特徴
- プロジェクトサイトのナームアン村は石灰岩地帯にあるにもかかわらず、調査圃場の9割弱が土壌pH(KCl) 4.0以下を示す。土壌の交換性アルミニウムはpH(KCl)が4.0を下回ると急激に増大するが、ナームアン村ではアルミニウム害の危険性の大きい水田が多く存在する(図1)。
- 農家トウモロコシ圃場において客土された植え穴土壌は、畦間に比べ、pH(KCl)、有効態リン及び交換性カルシウムが高く、pH(H2O)と交換性アルミニウムは低い値を示す。同様なpHの変化と交換性アルミニウムの低下は、水田土壌にコウモリ糞を添加し畑条件で培養した場合にも認められ、その効果は牛糞を大きく上回る(図2)。
- コウモリ糞添加土壌のアルミニウム型リン画分(観測値)は、コウモリ糞のリン酸構成から推定される値(計算値)を大きく上回り、コウモリ糞中のリン酸イオンと土壌中のアルミニウムイオンとの結合が示唆される(図3)。
- 水田土壌に塩化アルミニウムを添加して交換性アルミニウム濃度を高めると、供試作物に共通して濃度に応じた発芽の遅延と初期生育の抑制が生じるが、コウモリ糞を加えることで交換性アルミニウムは低下し、作物の生育抑制は軽減される(図4)。
成果の活用面・留意点
- ナームアン村では隣接する石灰岩山中の洞窟でコウモリ糞の採取が行われており、年間の産出量は20-30 t(リン含有率は約10%)に達し、村内での消費量はその20%程度とされる。十数年後には資源の枯渇が予想されおり、適正な基準に基づいた有効活用が求められている。
- ナームアン村水田土壌の有効態リンは、調査圃場の80%が20 mg P kg-1以下(ブレイII法にて測定した結果)と低水準であり、畑作物へのコウモリ糞施用によって水田土壌のリン肥沃度の改善の可能性がある。
具体的データ
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図1 土壌pH(KCl)と交換性アルミニウムとの関係
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図2 コウモリ糞、牛糞添加が培養土のpHと交換性アルミニウムに及ぼす影響
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図3 コウモリ糞添加培養土における形態別リン構成
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図4 塩化アルミニウムとコウモリ糞の添加が畑作物の初期生育に及ぼす影響
*塩化アルミ:AlCl3・6H2O;標準量:0.74 cmol kg-1風乾土;倍量:1.5 cmol kg-1風乾土
- Affiliation
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国際農研 生産環境・畜産領域
- 分類
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研究B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » インドシナ農山村
- 研究期間
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2013年度(2011~2015年度)
- 研究担当者
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松尾 和之 ( 生産環境・畜産領域 )
科研費研究者番号: 70370533阿江 教治 ( 酪農学園大学 )
Vorachit Saykham ( ラオス国立農林研究所森林研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Matso K.et al. Plant Produciton Science (accepted)
- 日本語PDF
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2013_C02_A3_ja.pdf272.55 KB
2013_C02_A4_ja.pdf380.38 KB
- English PDF
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2013_C02_A4_en.pdf204.68 KB
- ポスターPDF
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2013_C02_poster.pdf285.21 KB