研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- キノボリウオの水田養魚は種苗の低密度放流により無給餌でも成立する(2018)
ラオス山村域では、農民の動物タンパク質摂取不足を改善するために養魚振興が求められている。山村域の小規模農家が実施可能な水田養魚において、在来種であるキノボリウオを用いた場合、養魚種苗の低密度放流により無給餌でも高水準の生産性が見込まれ、さらに給餌することで生産性は向上する。
- 養魚ため池の貯留水を雨季水稲と乾季畑作に利用することで収益増が期待される(2018)
ラオス中部の中山間農村では、養魚用ため池の貯留水の活用により、雨季初期に水が不足する圃場の初期灌漑と乾季には畑作を行うための補給灌漑が可能になる。養魚に必要な最低水量を維持することで、ため池を養魚と灌漑に併用できる。また4月上旬に貯留水を抜く慣行法よりも、乾季畑作の灌漑に合わせて2月に水を抜く方が利益の増加が見込まれる。
- 稲わら堆肥連用はメコンデルタ水田に増収をもたらし、炭素隔離に貢献する(2017)
ベトナム・メコンデルタの水田における長期連用試験より、ヘクタールあたり6 tの稲わら堆肥の施用は、無施用に比べ、水稲収量を乾期作で0.75~0.87 t、雨期作で0.91~0.96 t高め、土壌炭素量を年間356~401 kg ha-1 year-1増加させる。
- フィリピンのサトウキビ単作地域における地下水への窒素負荷量の推定(2017)
地下水の窒素汚染が懸念されるフィリピンの代表的なサトウキビ栽培地域での窒素負荷量を推定した。地表面への窒素の負荷源として、肥料・家畜排泄物・人排泄物・降雨があるが、地下への潜在的な窒素負荷の多くは、肥料由来の窒素である。
- 塩害軽減のための低コスト浅層暗渠排水技術マニュアル(2017)
乾燥・半乾燥地域の灌漑農地における塩害軽減対策のための技術マニュアルである。塩類集積の要因と対策を示し、リーチング効果促進のため圃場の排水性の改善を図る低コスト型浅層暗渠排水技術を解説している。マニュアルは政府関係者、水消費者組合、農家が利用する。
- ソルガム根での難水溶性と水溶性の硝化抑制物質の分泌機構には差異がある(2017)
ソルガム根から分泌される水溶性硝化抑制物質の分泌は低い根圏pHで促進され、細胞膜のプロトンATPアーゼの活性が関与する。一方、ソルゴレオンが抑制活性の多くを占める難水溶性硝化抑制物質の分泌は、根圏pHの影響を受けにくい。
- 西アフリカ産イネ遺伝資源におけるいもち病抵抗性の変異(2017)
西アフリカ産遺伝資源のうち、アジアイネの栽培種 (Oryza sativa L.) は、いもち病に対して広い変異を有し、多くの品種が高い抵抗性を示すが、アフリカイネの栽培種 (O. glaberrima Steud.) は中程度でO. sativaに比べ低い。
- ギニアヤムのゲノム情報の解読および性判別マーカーの開発(2017)
ヤマノイモ(Dioscorea)属作物の一種であるギニアヤム(D. rotundata)の全ゲノム配列を世界に先駆けて解読した。得られたゲノム情報からギニアヤムの性別を決定するゲノム領域を同定した。この領域に特異的な性別判定マーカーを用いることで品種改良を加速できる。
- ガーナの河川氾濫原が畔のない天水条件でも生産性の高い稲作適地となる(2017)
ガーナで未利用の河川氾濫原は、畦畔および灌漑設備のない天水条件においても、土壌炭素量の高い土地の選定と、欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることで、施肥窒素の利用効率に優れ、最大5.4 t ha-1の籾収量を実現する優良な稲作可耕地となる。
- ガーナの農家が自ら実践できる自生植物の被覆による水田水利施設の補強技術(2017)
水稲栽培の機運が高まっているガーナ内陸低湿地を対象に、コメの増収かつ安定生産の要となる用排水路や畦畔の地表面を自生植物で被覆する。これは、農家の技術水準および経済状況を考慮した施工工法で、持続的な維持管理が可能な補強技術である。
- イネのアンモニア態窒素の吸収を向上させる遺伝子(2017)
水田環境でアンモニア態窒素濃度が上昇すると、イネの根による窒素吸収能力は低下する。アンモニア態窒素吸収能力を調整する遺伝子OsACTPK1を同定した。 OsACTPK1の機能が失われたactpk1変異体では、アンモニア態窒素の吸収が向上する。
- 幼苗期におけるイネ根系分布に関する簡易検定法(2017)
播種箱を用いたイネ冠根の伸長方向および数を分布として評価する簡易検定法は、従来のバスケット法に比べて、調査期間を短縮し、かつ単一面積当たりの調査個体数を大幅に増やすことができ、多様な遺伝資源や大規模な雑種集団における変異の解析に利用できる。
- AtGolS2 遺伝子を導入したイネは干ばつ条件下での収量性が原品種より高い(2017)
シロイヌナズナのガラクチノール合成酵素遺伝子AtGolS2を導入した遺伝子組換えイネは、原品種である陸稲品種CuringaおよびNERICA4に比較してガラクチノールを多量に蓄積する。この遺伝子組換えイネ系統の中には干ばつ条件の圃場で原品種より高い収量を示すものがある。
- ダイズの干ばつ耐性に関わる遺伝子GmERA1 の機能を解明(2017)
GmERA1遺伝子の発現を抑制したダイズでは、乾燥ストレスに対する生理応答が促進され、干ばつ耐性が向上する。
- 電照処理を利用した早期出穂性エリアンサスの出穂遅延技術(2017)
サトウキビより出穂が早い日本で収集されたエリアンサスの出穂は、電照処理により遅延させることが可能である。株出し時期を遅らせた材料に処理を実施することで遅延効果が高まる。出穂を遅延させた穂は花粉親としてサトウキビとの属間交配等に利用可能である。
- 葉緑体ゲノム情報に基づくエリアンサス、ススキ、サトウキビの系統分化の解明(2017)
エリアンサスおよびススキの葉緑体ゲノムサイズは、それぞれ141,210bpおよび141,416bpであり、イネ科植物に共通の76種類のタンパク質コード領域を含む。これらの塩基配列を用いた系統解析の結果は、サトウキビがエリアンサスよりススキとより近縁であることを示す。
- 日本で収集されたエリアンサスの遺伝学的特性の解明とSSRマーカーの開発(2017)
日本で収集されたエリアンサスは、染色体数に違いはないものの、温帯地域(九州以北)で収集された遺伝資源のDNA含量は、沖縄を含む熱帯・亜熱帯地域で収集された遺伝資源のそれより有意に高い。これらの遺伝資源は、SSRマーカーに基づく遺伝子型から、異なる分類群を形成する。
- サトウキビ白葉病の主要な媒介虫に対し高い効果を示す殺虫剤(2017)
ジノテフランは、サトウキビ白葉病の主要媒介虫であるタイワンマダラヨコバイに対し高い殺虫効果を有するが、サトウキビ圃場でズイムシ防除用に放飼されている天敵昆虫への影響が少ない。本剤は健全種茎増殖圃場で本病の虫媒感染リスクを低下させる技術の開発に利用できる。
- バングラデシュにおけるいもち病菌レースの分化とイネ遺伝資源の抵抗性変異(2017)
バングラデシュにおける、イネ遺伝資源のいもち病抵抗性変異は多様である。イネいもち病菌レースは栽培されているイネ品種の抵抗性遺伝子型に対応しており、天水田と灌漑水田では異なるレースが分化している。
- 微酸性電解水を用いたブロッコリースプラウトの機能性向上(2017)
微酸性電解水を用いてブロッコリースプラウトを生産すると、抗酸化作用等を有する機能性物質スルフォラファンの含量が増加するとともに、スプラウトに付着する生菌数が低減する。