国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

エチオピア⾼原の⼩流域流末のため池堆砂を利⽤した農地造成

要約

エチオピア高原の小流域の流末に位置するため池では、堆砂による取水機能の低下が進行している。ため池堆砂を除去・運搬し、農地造成用土として用いる。ため池の堆砂量と利用可能水量を推定し、農地造成計画を樹立できる。

背景・ねらい

サブサハラ地域東部のエチオピア高原は半乾燥地で、地形の起伏や傾斜が激しいため、雨期の降雨が深刻な土壌侵食をもたらす。エチオピア国ティグライ州に分布する小流域には、畜産・生活・灌漑用水を供給するために計92カ所のため池が設置されたが、それらの半数以上でガリ侵食に起因する堆砂が発生しており(Berhane et al. 2016)、水の利用量が減少している。堆砂の蓄積は、ため池の利用目的である灌漑用水の供給と作物栽培にとって深刻な問題となることが懸念される。ため池堆砂の除去は喫緊に取り組むべき課題だが、堆砂の処理が困難なため、放置されている。本研究では、この地域の小流域にある典型的なため池の貯留量と堆砂量の推定を行い、農地造成用土としての堆砂の活用を試みる。

成果の内容・特徴

  1. アディザボイため池は、急傾斜なアディザボイ小流域(約8.5 km2)の流末に位置する。この小流域の降雨量等の気象条件とため池水深の自動観測を行う。ため池の貯留量変化を1年間で0と仮定し、ため池の水収支から造成農地の潜在的利用可能水量を算定する(図1)。
  2. 水面のボートの上から発信した音波によって短期間で堆砂量が推定できる、新しいバスメトリックサーベイ(ため池の底地の地形調査)法を適用する。比較的堆砂が少ないため池水面周囲の座標を、異なる水深で観測する(図2上)。測定した堆砂表面と、推定したため池現況底地面との間の堆砂量(図2下)を計算する。
  3. 農閑期でため池に貯水がない乾期の終わりに、ため池右岸の荒地を整地し、人力掘削(14人日)と畜力利用によりため池堆砂を運搬する。石積みによる土留めや堆砂の敷き均しを行い、農地(約322 m2)を造成する(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. 造成農地は村の管理地とし、村内の若い土地なし農民などの就農機会をつくるため、営農グループに対して無料で提供される。市場価値の高い野菜栽培を行うことで農家の現金収入源が生まれ、住民の生活向上が期待できる。造成後1年目の農地で栽培したタマネギの収量は11.93 t/haであり、全国平均(10.38 t/ha)とほぼ同じである。
  2. 造成農地はため池の満水位より高い位置に施工される。乾期野菜栽培を行う場合、造成農地内の高い場所に灌漑用水確保のためのファームポンドの設置が必要となる。
  3. 本技術を普及するためには、地方政府、大学、住民と連携し、場所の選定、土工、及び付帯施設の施工等において、参加者の経験・知識を活かす取り組みが実用的と思慮される。
  4. ため池堆砂量を推定する本手法は、設計・施工データの記録が残っていないため池にも適用できる。

具体的データ

  1. 図1 アディザボイため池の水収支
    図1 アディザボイため池の水収支
    ため池貯留量は20万m3である。基盤岩中の漏水量、堤体からの漏水・洪水量、及び下流の湧水量を潜在的な利用可能水量とする。流出係数はハイドログラフから算定する。

  2. 図2 アディザボイため池の貯水域の変化及び断面図 上:貯水域の変化図 下:断面図
    図2 アディザボイため池の貯水域の変化及び断面図 上:貯水域の変化図 下:断面図
    上図の数字は貯水域の面積を示す。下図の水深は底樋取水口の下端を0 mとしている。
    アディザボイため池の堆砂量は6,400 m3と推定される。農地造成の厚さを0.2 mとした場合、造成可能な農地面積は3.2 haである。底樋が埋没し機能しなくなる前に、一部の堆砂を除去して造成に使用するだけでも効果が見込まれる。

  3. 図3 アディザボイため池の堆砂による造成農地
    図3 アディザボイため池の堆砂による造成農地
    上:造成前、下:造成後

所属

国際農研農村開発領域

分類

技術

国名
  • エチオピア
  • 研究プロジェクト

    サブサハラアフリカの土壌侵食危険地域における集約型流域管理モデルの構築(アフリカ流域管理)

    プログラム名

    資源・環境管理

    予算区分

    交付金アフリカ流域管理

    研究期間

    2019年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • 幸田 和久 (農村開発領域)
  • Girmay Gebrayohannes (メケレ大学乾燥地農業・自然資源学部)
  • Berihu Tesfay (メケレ大学乾燥地農業・自然資源学部)
  • 発表論文等

    Koda K et al. (2019) Sustainability, 11(7):2038 https://doi.org/10.3390/su11072038

    Koda K et al. (2019) Ch.9 of Climate Smart Agriculture, World Agroforestry http://www.worldagroforestry.org/publication/climate-smart-agriculture-ethiopia-and-beyond-0

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