国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

資源・環境管理

開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発

 気候変動や砂漠化の進行、土壌の塩類集積など、地球規模の環境問題が深刻化していますが、これらの原因の一つとして、人間による農業活動が挙げられています。特に脆弱とされる開発途上地域では、肥沃な土壌が失われ、地下水位の上昇により土壌に塩が集積し、肥料が溶脱し地下水や海洋が汚染され、またメタンや一酸化二窒素などの強力な温室効果ガスが発生しています。プログラム「開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発(資源・環境管理)」では、以下の4つのプロジェクトを実施し、「土壌」、「水」、「肥料」等の農業生産資源を持続的に管理し、これら環境問題を緩和するための農業技術、また環境変動に適応した農業技術を開発します。

資源・環境管理プログラム

資源・環境管理プログラムの概要

研究成果情報

  • ⽔稲の葉⾊に基づく施肥設計はメタン発酵消化液の肥料利⽤でも有効である (2019)

    ベトナムのメコンデルタにおける水稲栽培において、バイオガスダイジェスターのメタン発酵消化液を肥料利用する際に、安価な葉色板で測定・数値化できる葉色の変化から施用時期を決定することで、慣行レベルの子実収量を達成できる。

  • 酸素ナノバブル⽔による湛⽔⽔⽥⼟壌の⾼酸素化とメタン⽣成抑制 (2019)

    ナノバブルとは直径1 µm以下の微小気泡で、水中に長期間存在できる。純酸素を材料ガスとするナノバブルを高密度に含む水を作成し、湛水状態の土壌カラムに上部から通水すると、土壌表面付近の浅層中の酸素濃度が上昇するとともに、メタン生成が抑えられる。

  • エチオピア⾼原の⼩流域流末のため池堆砂を利⽤した農地造成 (2019)

    エチオピア高原の小流域の流末に位置するため池では、堆砂による取水機能の低下が進行している。ため池堆砂を除去・運搬し、農地造成用土として用いる。ため池の堆砂量と利用可能水量を推定し、農地造成計画を樹立できる。

  • ⼟壌改良資材のナノ加⼯による施⽤効果の向上 (2019)

    石灰をナノ加工することで、土壌下方への移動が容易になる。リン鉱石をナノ加工し、酸性土壌にヘクタールあたり1,000 kg施用することによって、土壌酸度が矯正されるとともに、植物体にリンが吸収され、植物の生育が良くなる。

  • ソルガムの⽣物的硝化抑制にはアンモニア酸化古細菌の抑制が関連する (2019)

    ソルガムが根から分泌する難水溶性の硝化抑制物質であるソルゴレオンは、生育とともに下層土に向かって新生される根から分泌され、分泌量には系統間差がある。ソルゴレオンの分泌量が多い系統の根圏土壌では、硝化活性とアンモニア酸化古細菌数がともに低下することから、ソルガムの生物的硝化抑制にはアンモニア酸化古細菌数の抑制が関連している。

  • アフリカ産低品位リン鉱⽯は炭酸カリウム添加焼成により肥料化できる (2019)

    アフリカ産低品位リン鉱石の肥料化においてアルカリを加えた焼成処理が有効であるが、炭酸ナトリウムに代えて炭酸カリウムを添加することで土壌中のナトリウム集積を回避でき、肥料化が可能である。炭酸カリウム添加焼成物の施用効果は、市販の肥料である重過リン酸石灰と同等である。

関連するJIRCASの動き

令和元年度研究成果情報・主要普及成果を公開

2020-03-30

毎年度の試験研究活動によって得られた研究成果のうち、特に「現場での生産技術等として活用される成果」 、 「学術的に高度で、有効な新手法、新知見等の成果」及び「行政施策の改善に極めて有効または参考になる成果」の中から顕著なものを選定し公表しています。
令和元年度の主要普及成果は「SSRマーカーを利⽤したホワイトギニアヤム品種識別技術パッケージ 」「タイ発酵型⽶麺の液状化は、麺をpH 4程度の酸性に保つことで抑制できる」の2件です。

南雲生産環境・畜産領域長が、ブルキナファソ国立科学技術研究センター所長から感謝状を授与されました。

ブルキナファソ国立科学技術研究センター所長から感謝状を授与

2020-03-13

南雲生産環境・畜産領域長が、ブルキナファソ国立科学技術研究センター所長から感謝状を授与されました。

関連するイベント・シンポジウム

現地の動き

  • Pick Up 6. 気候変動と世界食料生産危機 - 持続的資源・環境管理技術への期待

    2019年、権威ある国際機関がこぞって気候変動と環境劣化の進行が予想以上に進行していることに警鐘を鳴らしました。環境劣化・気候変動は農業への負のインパクトをもたらすと同時に、農業自身が環境劣化と気候変動の主要な原因の一つでであることにも着目しなければなりません。農林業その他土地利用(Agriculture, Forestry and Other Land Use -AFOLU)は、人間活動を原因とする温室効果ガス(GHG)の23%を占め、AFOLUの変化はまた、人間活動に起因する生物多様性の喪失の主要な原因となっています。食料・栄養安全保障の達成を目指しつつ、将来取り返しのつかないリスクを回避するためには、AFOLUによる気候変動や環境への負の影響を最小化していく技術開発と普及が必要です。国際農研は、水・土壌・肥料等の農業資源を持続的、安定的に活用しつつ、生産性を改善する技術開発を通じて、農業の持続的集約化の実現と気候変動問題への貢献を目指しています。

  • 海外連絡拠点 タイ科学技術博覧会2018にてサトウキビ白葉病の防除技術と熱帯土壌の肥沃度改善について展示

    タイ科学技術博覧会において、国際農研はタイ研究機関との共同研究の中から、サトウキビ白葉病が拡大する要因を解明し開発した防除技術と熱帯における土壌肥沃度の変動を長期連用試験で解明した成果を展示・説明し、来訪したたくさんの小中高校生や一般の方が熱心に耳を傾けました。