国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

タイ科学技術博覧会2018にてサトウキビ白葉病の防除技術と熱帯土壌の肥沃度改善について展示

2018-09-04

2018年8月16日(木)~26日(日)、タイ王国バンコク郊外で、タイ王国科学技術省主催のタイ科学技術博覧会2018(Thailand National Science and Technology Fair 2018)が開催されました。当博覧会は、子供たちに科学の面白さを知ってもらうことを目的とし、毎年開催されており、本年も開催期間中100万人を超える来訪者がありました。国際農研は、タイ王国の研究機関と共同研究を長年行っており、その成果を毎年展示しています。今年は、サトウキビ白葉病の防除技術と熱帯土壌の肥沃度改善について展示を行いました。

1. サトウキビ白葉病の防除技術

サトウキビ白葉病はサトウキビの生長を阻害する病気で、有効な治療法がないことから、感染したサトウキビは白化したのち枯死します。2015~2016年にタイ国内で蔓延し、水不足による乾燥害と併せ、サトウキビ生産量が激減しました。タイは世界第2位の砂糖輸出国ですが、この影響で輸出量が25%低下しました(世界第2位は維持)。また、砂糖生産の副産物である廃糖蜜の生産量も減少したため、それから生産されるエタノールが不足し、エタノール混合ガソリンの供給にも支障を来しました。国際農研とコンケン大学は、2011年からサトウキビ白葉病に関する共同研究を行っています。これまでに、サトウキビ白葉病が媒介虫や白葉病に感染した種茎(サトウキビは茎を植えます)の定植によりどのように拡散するのか、を解明しました(参照:サトウキビ白葉病を媒介するヨコバイ類の移動分散能, https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2015_b11)。これにより、白葉病に感染していない健全な種茎を生産し定植することが重要であることを示しました。現在、国際農研とコンケン大学で健全な種茎を生産するための防除技術を開発しています(参照:サトウキビ白葉病の主要な媒介虫に対し高い効果を示す殺虫剤https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b12)。これらの成果をポスターで展示するとともに、白葉病にかかったサトウキビと健全なサトウキビ、媒介虫、組織培養した苗を展示し、説明を行いました(写真)。開会式の日には、コンケン大学の共同研究者が説明しました。

2. 熱帯土壌の肥沃度改善

タイでは、農家や農業関係機関から、近年、農地土壌の肥沃度が低下しているという話を聞きます。土壌肥沃度を高めるためには有機物を施用すれば良いことは知られており、有機物の種類や量を変えて試験が行われています。ここで、土壌に投入された有機物は微生物などにより分解され、養分となったり、鉱物と結合し団粒を構成したりします。その微生物は有機物の量や状態により種類や量が変化します。こうしたことから、土壌有機物の変化を明らかにするためには長期間(数十年以上)の測定データが必要です。タイ農業局は40年ほど前から作付けを継続(連用)している試験圃場を保有しています。国際農研はこうした圃場において同局と共同で連用試験を行っています(参考:タイの天水地域の土壌有機炭素に対す有機物施用と緑肥作物栽培の長期連用効果(英語), International Soil and Water Conservation Research, 1(3), 29-36, 2013 https://doi.org/10.1016/S2095-6339(15)30028-9;タイ天水地域の土壌特性とトウモロコシ収量における長期連用有機物施用の効果(英語), https://www.jircas.go.jp/ja/publication/jarq/44/2/133)。また、農業局が保有する他の試験圃場の長期連用試験のデータについても解析を進めています。その成果として、堆肥施用は熱帯においても土壌肥沃度を向上すること(熱帯では有機物の分解が早いため、土壌肥沃度向上が難しいと考えられています)、ただしそれが顕在化するには5年以上の時間を要することが明らかになりました。一方、作物残渣の施用は土壌肥沃度の向上への効果が堆肥より低いものの、10年、20年と徐々に向上することも明らかになりました。博覧会では、これらの成果をポスターで展示するとともに、説明を行いました。開会式の日は、農業局の共同研究者が成果を説明しました(写真)。訪問者から、「農業生産の基盤である土壌肥沃度がどのようなしくみで変化しているのか」に関心を持って貰え、研究に携わるものとして非常に嬉しいことでした。

 8月17日に行われた開会式にはタイ王国のプラユット・チャンオチャ(Prayuth Chan-ocha)首相とスウィット・メーシンシー(Suvit Maesincee)科学技術大臣が参加され、開会式の後、日本ブースを訪問されました(写真)。また、8月26日に国際農研をはじめとする外国の展示ブース代表者へ出展協力への感謝の証として、タイ国立科学博物館ラウィン・ラウィウォン(Rawin Rawiwongse)館長よりトロフィーが授与されました。

(文責:松本成夫)

サトウキビ白葉病の拡大要因の解明と防除技術の展示。白い葉の鉢が白葉病にかかったサトウキビ

コンケン大学の共同研究者が解説(写真右の左側)

長期連用試験圃場データの解析結果を示し、土壌肥沃度改善のしくみと時間がかかることなどを説明

農業局の共同研究者

プラユット首相が日本ブースを訪問されました。