ウシエビ養殖初期に糸状緑藻と微小巻貝を摂餌させることで収益性が向上する

要約

ウシエビ養殖初期における補助的生餌料として、糸状緑藻(ジュズモ属の一種)を総消費餌料量の8%、微小巻貝(ミズゴマツボ属の一種)を同2%、人工飼料とともに摂餌させることにより、ウシエビ養殖の収益性が約1.5倍向上する。

背景・ねらい

熱帯産クルマエビ類の集約的養殖は、開発途上にある熱帯諸国の重要な外貨獲得手段であるが、人工飼料の多給餌に伴う環境負荷や低品質飼料・飼料原料の高騰等による生産性・収益性の低下が問題となっている。一方、海藻類等を補助的生餌料として活用する混合養殖技術は、熱帯産クルマエビ類の成長並びに飼料効率を向上させる(平成27年度国際農林水産業研究成果情報C12「タイ産の高い塩分耐性を持つ新規ジュズモ属緑藻によるウシエビの生産性向上」)。本研究では、混合養殖技術の有用性を明らかにするため、タイ国キングモンクット工科大学ラカバンの大型コンクリート実験池(9m×9m×1.2m)を用いて、糸状緑藻ジュズモ属の一種と微小巻貝ミズゴマツボ属の一種を補助的生餌料としてウシエビを生産し、仲買業者に販売して収益性を検証する。

成果の内容・特徴

  1. 稚エビ(体重2mg:全長9mm)に、市販の人工飼料に加えてコンクリート実験池内で増殖させたジュズモ(Chaetomorpha sp.)及びミズゴマツボ(Stenothyra sp.)を摂餌させると(図1)、15週間で市場サイズ(15g超)に成長する(図2、表1)。
  2. ウシエビ養殖初期の1〜2ヶ月間に、補助的生餌料として、ジュズモを総消費餌料量の8%、ミズゴマツボを同2%、それぞれ摂餌させた場合、対照区に比べてウシエビの生産性は33%、飼料効率は12%、収益性は46%向上する(表1)。
  3. 飼育期間中の成長モニタリングにおいて、実験区では開始4週間後よりウシエビの成長に有意な差異が生じる(図3)。
  4. 上記の結果より、ウシエビ養殖初期にジュズモとミズゴマツボを養殖池内で増殖させて補助的生餌料として摂餌させることにより、比較的容易にウシエビの初期成長を促進させ、生産性及び飼料効率、収益性を改善できる。

成果の活用面・留意点

  1. ウシエビ以外のクルマエビ科の集約養殖にも活用できる可能性があり、熱帯産クルマエビ養殖業者の経営改善が期待できる。
  2. ジュズモ、ミズゴマツボは飼育開始後1~2ヶ月で全て消費され、それ以降は人工飼料のみによるウシエビ集約養殖となる。これら両種をより長期に渡ってコンクリート実験池内で増殖させることにより、ウシエビのさらなる生産性・収益性向上が期待できる。

具体的データ

  1. 図1 放流直後のウシエビ(全長約9mm)(黄矢印)とジュズモ(紺枠)・ミズゴマツボ(赤矢印)

     

  2. 図2 実験により収獲されたウシエビと仲買所での仕分け作業

     

  3. 表1 コンクリート実験池でのウシエビ養殖試験結果

      対照区 実験区
    成長・生産性    
     収獲時個体重量 (g WW)  16.0 ± 0.61   18.2 ± 1.07 *
     収獲量 (kg WW) 33.0 ± 1.8  43.9 ± 0.5 *
    摂餌量・飼料効率    
     ジュズモ量 (kg WW)  ―  6.81 ± 1.45
     ミズゴマツボ量 (kg WW)  ―  1.96 ± 0.05
     人工飼料量 (kg WW) 61.0 ± 3.2  72.0 ± 3.8 *
     飼料効率 (%) 54.1 ± 1.8  61.1 ± 4.0 *
    コスト・収益性    
     人工飼料費 (USD) (a) 83.55 ± 4.45   98.59 ± 5.24 *
     諸雑費 (USD) (b)  ―  12.11 ± 0.00
     エビ販売価格 (USD) (c) 155.73 ± 10.27  215.97 ± 4.37 *
     収益 (USD) (c-a-b) 72.18 ± 7.55  105.27 ± 3.02 *

    平均値±標準偏差。同じ項目における*印は実験区間に有意な差異があることを示す(n=3)(検定、p < 0.05)。飼料効率は人工飼料あたりの増重量。諸雑費は増殖させる生餌料の収集に要した経費。WW:湿重量。

     

  4. 図3 対照区(緑)と実験区(橙)におけるウシエビの体重変化

    同じサンプリング週における異なるアルファベットは実験区間に有意な差異があることを示す(Mann-Whitney U検定、p < 0.05として繰り返し検定の多重性をBonferroni法で補正)。

所属

国際農研 水産領域

分類

研究

国名

タイ

研究プロジェクト

熱帯域の生態系と調和した水産資源の持続的利用技術の開発(熱帯水産資源)

プログラム名

高付加価値化

予算区分

交付金 » 熱帯水産資源

研究期間

2020年度(2016~2020年度)

研究担当者

筒井 ( 水産領域 )

科研費研究者番号: 80425529

Aue-umneoy Dusit ( キングモンクット工科大学ラカバン )

ほか
発表論文等

Tsutsui et al. (2020) PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0244607

日本語PDF

2020_C09_A4_ja.pdf588.92 KB

2020_C09_A3_ja.pdf583.64 KB

English PDF

2020_C09_A4_en.pdf434.35 KB

2020_C09_A3_en.pdf436.02 KB

ポスターPDF

2020_C09_poster.pdf435.61 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。