研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- ギニアヤムのゲノム情報の解読および性判別マーカーの開発(2017)
ヤマノイモ(Dioscorea)属作物の一種であるギニアヤム(D. rotundata)の全ゲノム配列を世界に先駆けて解読した。得られたゲノム情報からギニアヤムの性別を決定するゲノム領域を同定した。この領域に特異的な性別判定マーカーを用いることで品種改良を加速できる。
- ガーナの河川氾濫原が畔のない天水条件でも生産性の高い稲作適地となる(2017)
ガーナで未利用の河川氾濫原は、畦畔および灌漑設備のない天水条件においても、土壌炭素量の高い土地の選定と、欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることで、施肥窒素の利用効率に優れ、最大5.4 t ha-1の籾収量を実現する優良な稲作可耕地となる。
- ガーナの農家が自ら実践できる自生植物の被覆による水田水利施設の補強技術(2017)
水稲栽培の機運が高まっているガーナ内陸低湿地を対象に、コメの増収かつ安定生産の要となる用排水路や畦畔の地表面を自生植物で被覆する。これは、農家の技術水準および経済状況を考慮した施工工法で、持続的な維持管理が可能な補強技術である。
- イネのアンモニア態窒素の吸収を向上させる遺伝子(2017)
水田環境でアンモニア態窒素濃度が上昇すると、イネの根による窒素吸収能力は低下する。アンモニア態窒素吸収能力を調整する遺伝子OsACTPK1を同定した。 OsACTPK1の機能が失われたactpk1変異体では、アンモニア態窒素の吸収が向上する。
- 幼苗期におけるイネ根系分布に関する簡易検定法(2017)
播種箱を用いたイネ冠根の伸長方向および数を分布として評価する簡易検定法は、従来のバスケット法に比べて、調査期間を短縮し、かつ単一面積当たりの調査個体数を大幅に増やすことができ、多様な遺伝資源や大規模な雑種集団における変異の解析に利用できる。
- AtGolS2 遺伝子を導入したイネは干ばつ条件下での収量性が原品種より高い(2017)
シロイヌナズナのガラクチノール合成酵素遺伝子AtGolS2を導入した遺伝子組換えイネは、原品種である陸稲品種CuringaおよびNERICA4に比較してガラクチノールを多量に蓄積する。この遺伝子組換えイネ系統の中には干ばつ条件の圃場で原品種より高い収量を示すものがある。
- ダイズの干ばつ耐性に関わる遺伝子GmERA1 の機能を解明(2017)
GmERA1遺伝子の発現を抑制したダイズでは、乾燥ストレスに対する生理応答が促進され、干ばつ耐性が向上する。
- 電照処理を利用した早期出穂性エリアンサスの出穂遅延技術(2017)
サトウキビより出穂が早い日本で収集されたエリアンサスの出穂は、電照処理により遅延させることが可能である。株出し時期を遅らせた材料に処理を実施することで遅延効果が高まる。出穂を遅延させた穂は花粉親としてサトウキビとの属間交配等に利用可能である。
- 葉緑体ゲノム情報に基づくエリアンサス、ススキ、サトウキビの系統分化の解明(2017)
エリアンサスおよびススキの葉緑体ゲノムサイズは、それぞれ141,210bpおよび141,416bpであり、イネ科植物に共通の76種類のタンパク質コード領域を含む。これらの塩基配列を用いた系統解析の結果は、サトウキビがエリアンサスよりススキとより近縁であることを示す。
- 日本で収集されたエリアンサスの遺伝学的特性の解明とSSRマーカーの開発(2017)
日本で収集されたエリアンサスは、染色体数に違いはないものの、温帯地域(九州以北)で収集された遺伝資源のDNA含量は、沖縄を含む熱帯・亜熱帯地域で収集された遺伝資源のそれより有意に高い。これらの遺伝資源は、SSRマーカーに基づく遺伝子型から、異なる分類群を形成する。
- サトウキビ白葉病の主要な媒介虫に対し高い効果を示す殺虫剤(2017)
ジノテフランは、サトウキビ白葉病の主要媒介虫であるタイワンマダラヨコバイに対し高い殺虫効果を有するが、サトウキビ圃場でズイムシ防除用に放飼されている天敵昆虫への影響が少ない。本剤は健全種茎増殖圃場で本病の虫媒感染リスクを低下させる技術の開発に利用できる。
- バングラデシュにおけるいもち病菌レースの分化とイネ遺伝資源の抵抗性変異(2017)
バングラデシュにおける、イネ遺伝資源のいもち病抵抗性変異は多様である。イネいもち病菌レースは栽培されているイネ品種の抵抗性遺伝子型に対応しており、天水田と灌漑水田では異なるレースが分化している。
- 微酸性電解水を用いたブロッコリースプラウトの機能性向上(2017)
微酸性電解水を用いてブロッコリースプラウトを生産すると、抗酸化作用等を有する機能性物質スルフォラファンの含量が増加するとともに、スプラウトに付着する生菌数が低減する。
- オイルパーム樹液のpH調整で乳酸発酵が改善する(2017)
オイルパーム幹から得られる樹液は、糖分が高く微生物にとって極めて有望な天然培地となるが、乳酸発酵において発酵能低下が認められる。樹液を弱アルカリ性に調整することで、不溶性沈殿を形成・除去できるとともに、微生物生育阻害をもたらす芳香族化合物が減少するため、樹液成分が改質され発酵阻害を防ぐことができる。
- 開花遺伝子の発現動態から東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」現象を予測する(2017)
東南アジア熱帯雨林の主要林冠構成樹種であるフタバガキ科樹種は、一定の乾燥かつ低温の気象条件が9~11週間続くと一斉開花する。環境要因、開花遺伝子の発現、一斉開花の関連性に基づいて開発したモデルにより、これまで困難であったフタバガキの一斉開花が降水量と気温のデータから予測できる。
- ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生飼育技術の開発(2017)
ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生は、孵化後から着底するまでは塩分3.5 pptの人工海水で飼育し、その後1週間を1.7 pptで馴致飼育した後に淡水飼育を開始することが好適条件である。この方法を用いることで浮遊幼生の70%以上が稚エビまで成長する。
- 家庭用バイオガス発生装置は温室効果ガス排出削減と農家の便益を実現する(2016)
途上国の農村部に家畜の排せつ物等を原料とする家庭用バイオガス発生装置を導入することは、温室効果ガスの排出削減と農家の調理用燃料経費の節減、労働時間の短縮など農家の便益を実現する気候変動緩和策である。
- 食糧政策は気候変動下の米価変動を緩和するが政策コストは上昇する(2016)
気候変動に脆弱なバングラデシュを対象とし、米価変動を緩和するための食糧政策の効果とコストを、政策を含む米需給モデルで試算する。気候変動シナリオRCP6.0に基づくと、価格の変動係数を1ポイント低下させるには、年に1.67億ドルの追加的支出が必要である。
- アフリカ産低品位リン鉱石は焼成処理で可溶化され高い肥効を示す(2016)
未利用資源であるブルキナファソ産低品位リン鉱石に、炭酸ナトリウムを添加し、900~1000°Cで焼成することでクエン酸可溶性リン割合が大幅に向上する。焼成物のトウモロコシおよび水稲に対する施用試験の結果、水稲では重過リン酸石灰と同程度の施用効果が認められる。
- 赤外光を利用したササゲ子実タンパク質含有量の迅速評価技術(2016)
赤外光を利用してササゲ子実の粉体サンプルの窒素含有量を推定し、これをタンパク質含有量に換算することにより、育種過程で利用可能な子実タンパク質含有量を迅速に評価できる。