研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- タイに自生するエリアンサス遺伝資源の多回株出し栽培における農業形質情報(2021)タイに自生するエリアンサス遺伝資源は、多回株出し栽培における農業形質に大きな遺伝的多様性を有する。多回株出し栽培での農業形質情報や生産性等が優れる育種素材は、タイにおけるサトウキビの育種やエリアンサスの新規資源作物としての育種で利用できる。
- 主要普及成果 簡易茎頂接ぎ木法によるパッションフルーツのウイルスフリー化技術(2021)簡易茎頂接ぎ木法により、トケイソウ潜在ウイルス(PLV)に感染したパッションフルーツ株からPLVフリー株を得ることができる。無菌操作や特殊な施設は不要なうえ、処理約2カ月後にはウイルス検定が可能で、現場への導入が容易である。
- カシューナッツ殻液給与によるライシン牛からのメタン排出量削減効果(2020)
ベトナム在来牛(ライシン牛)にカシューナッツ殻液を給与することにより、第一胃内のメタン生成古細菌等の微生物群集のメタン代謝に抑制的に作用し、第一胃由来メタン排出量をおよそ2割強削減できる。
- 間断灌漑技術(AWD)によるライフサイクル温室効果ガス削減効果(2020)
ベトナムのメコンデルタにおける間断灌漑技術導入(AWD)農家は、収量を維持しつつ、播種量、窒素施肥量、リン酸肥料施用量を減らし、ライフサイクル温室効果ガス(LC-GHG)を削減させる。
- 衛星画像を使ってミャンマーの沿岸部の塩水遡上がモニタリングできる(2020)
東南アジアの主要な農業生産地である大型河川のデルタ地帯では、塩水遡上が問題になっている。衛星画像から塩分濃度を直接推定することはできないが、河川水の電気伝導度と濁度との間の強い関係性から、間接的に塩分濃度と塩水遡上の季節的変化を推定できる。
- 水稲再生作では前作稲収穫前後の土壌乾燥が再生稲の収量性を高める(2020)
ミャンマーの熱帯地域では、前作稲収穫前後4週間を土壌乾燥条件で水管理した再生稲の籾収量は、飽和条件で水管理した場合に比べて50%以上増加する。また、前作収穫後に行う再生作のための追加的な株刈りには増収効果は認められない。
- サイレージ調製はソルガムとトウジンビエ茎葉部の飼料利用率を向上させる(2020)
西アフリカ半乾燥地域においてソルガムとトウジンビエの茎葉部は反芻家畜の主な粗飼料源であるが、収穫後に放置すると栄養成分が減少する。しかしサイレージとして調製することで良質に発酵しその飼料利用率は向上して、乾季における飼料不足の緩和が期待される。
- エチオピアの共有林維持管理には協力行動の意義に関する情報提供が欠かせない(2020)
エチオピアティグライ州の農民は、エチオピア高原の共有地を利用しながら、保全するための協力行動を行っている。このような農民による共有林保全活動を持続的に行うためには、協力行動の意義に関する情報提供を行う必要がある。
- 改良部分耕と表土被覆の組み合わせによる環境保全型タロイモ栽培技術(2020)
傾斜地において、携帯型深穴掘り器や深溝掘り機を用いた部分耕と有機物マルチを組み合わせてタロイモを等高線栽培すると、慣行(全面耕起、マルチ無し)に比べて土壌侵食量が80~91%減少し、タロイモが3倍程度増収する。
- 石垣島のサトウキビ栽培では基肥窒素半量でも収量を維持し溶脱量を削減できる(2020)
新植サトウキビ栽培では、植付け直後に施用される施肥窒素はサトウキビの初期生育に影響しない。硝酸態窒素溶脱は主に生育初期に発生することから、基肥窒素の施用量を半減しても、収量を維持しつつ地下への窒素負荷量が削減可能である。
- ブラキアリアは株間土壌のアンモニア酸化古細菌を抑制し硝化速度を低減する(2020)
ブラキアリア属牧草の栽培における硝化抑制効果は株間土壌においても確認でき、その硝化抑制作用はアンモニア酸化古細菌数の抑制によって生じる。株間土壌の硝化抑制効果は品種によって異なり、根圏分泌物に加えて根組織中の生物的硝化抑制活性が影響する。
- 西アフリカ天水稲作の各農業生態域区分に最適なリン鉱石直接施用頻度(2020)
西アフリカ天水稲作に対する低品位リン鉱石直接施用効果は、1年目には農業生態域区分の違いで顕著な差異が認められる。全ての農業生態域で前年に施用したリン鉱石の残効が期待され、残効の大小によりそれぞれ最適な施用頻度が異なる。
- リン鉱石富化堆肥中の有効態リン含量に及ぼす根圏土壌添加の効果(2020)
ソルガム残渣にブルキナファソ産リン鉱石を加えて堆肥化する際に、根圏土壌を添加すると堆肥中のリン酸塩可溶化微生物(特にリン酸可溶化糸状菌)とリン酸可溶化酵素(特にアルカリホスファターゼ)が、土壌を添加しない場合に比べて多くなる。完熟堆肥中の有効態リン含量は、根圏土壌の添加により高くなる傾向が見られる。
- 量的遺伝子座MP3の導入は養分欠乏によるイネの穂数不足を緩和する(2020)
サブサハラアフリカにみられる養分欠乏土壌では、イネの分げつ発生の抑制に伴う穂数不足が収量制限要因の一つとなっている。日本型品種コシヒカリからインド型多収品種タカナリに導入した量的遺伝子座MP3は、マダガスカルの2.0~4.1 t ha-1の低収量環境において、分げつ発生を促進し、穂数および籾数を増加させることができる。
- 主要普及成果 移植苗のリン浸漬処理はイネの施肥効率を改善し低温ストレスを回避する(2020)
少量のリン肥料を加えた泥を苗の根に付着させてからイネを移植するリン浸漬処理は、熱帯に広く分布するリン吸着能の高い土壌でも施肥効果が大きい。加えて、従来の施肥法に比べて生育日数を短縮するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では、登熟不良の改善にも効果をもつ。
- 効率的な遺伝解析及び特性評価を可能にするギニアヤム多様性研究材料の選定(2020)
西アフリカで最も重要な作物の一つであるギニアヤムについて、遺伝解析及び特性評価を容易にし、効率的な育種及び栽培研究を可能とする、遺伝的多様性を保持した多様性研究材料セット102系統を選定した。
- スーダンサバンナにおけるササゲ生産を広範囲で改善するための品種選抜法(2020)
ササゲの収量は狭い地域内でも場所や年によって大きく変動するが、土壌型と降水量によって栽培環境を分類し、環境間の収量安定性にもとづいて品種を選抜することで、広範囲における平均収量の改善に向けた効率的な育種および品種利用が可能となる。
- モザンビーク飼料資源を用いた発酵TMR給与は牛乳生産量と収益性を向上させる(2020)
モザンビーク南部で入手できる飼料資源を活用して良質な発酵TMR(混合飼料)を調製できる。発酵TMRを給与することで、慣行的な飼養法に比べてジャージー種乳牛の採食量と消化率を改善し、乳生産量と収益性を向上できる。
- モザンビークにおける乳牛飼養の存立条件を反映した耕畜複合経営計画モデル(2020)
モザンビークの小規模農家による乳牛飼養の存立条件を解明し、耕畜連携を通じて効率的に食料と飼料の確保、リスク分散、所得向上等を達成するための複合経営計画モデルを作成する。同モデルは、乳牛飼養の定着と耕畜連携の促進に向けた意思決定支援に有効である。
- リン利用効率の高いイネを推定するための代謝物マーカー(2020)
代謝物の網羅的解析により、活性酸素除去に関わる代謝物やアミノ酸等がイネのリン利用効率と密接に関わることが示された。これらはリン利用効率の高いイネを推定するための代謝物マーカーとして利用できる。