研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- ラオスの重要な⾷⽤⿂パケオの資源保全に資する⽣態的情報(2019)
ラオスの重要な漁業資源であるパケオ Clupeichthys aesarnensis はニシン科の小魚で、乾物や発酵食品の主要な原料であるが、主な漁場では乱獲による漁獲量の減少が強く懸念されている。本種は周年産卵することから、適切な資源管理を行うには禁漁期ではなく禁漁区の設定が有効である。
- 家禽加⼯残渣の活⽤によるミルクフィッシュ⽤⿂粉削減飼料の開発(2019)
ミルクフィッシュ養殖用飼料原料として家禽加工残渣を12%配合することにより、ミルクフィッシュ養殖用飼料中の魚粉を75%、魚油を15%削減できる。本飼料を用いることで、近年高騰する魚粉及び魚油の使用量が削減され、養殖魚の成長率や化学成分含量、味わいに影響を及ぼすことなく、飼料コスト軽減による水産養殖業者の経営改善が期待できる。
- RNA⼲渉法によるバナメイエビ卵⻩形成抑制ホルモン遺伝⼦の発現抑制(2019)
バナメイエビにおける卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子構造を明らかにし、定量PCR法を構築することにより、体内の遺伝子発現量の変動を把握できる。また、遺伝子情報を基にRNA干渉法を用いることで卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子発現を抑制できる。
- 国内保有マンゴー遺伝資源の多様性および品種特性(2019)
国際農研および沖縄県農業研究センターで保存されているマンゴー遺伝資源120点は、SSRマーカーによる系統および遺伝的多様性の解析により、重複を除いた83の異なる遺伝子型に区別され、育成地を反映する3つのグループに分かれる。世界各国に由来するこれらの遺伝情報および品種特性情報は、品種利用の促進や多様性比較の基盤として活用できる。
- 東南アジアにおける肉牛からの消化管発酵由来メタン排出量の推定(2018)
東南アジアにおける肉牛からの消化管発酵由来メタンの排出量と変換係数は、飼料摂取量、飼料の化学成分と飼料消化率から推定できる。メタン排出量の推定に利用されているメタン変換係数の東南アジア肉牛での値は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による既定値よりも高い。
- キャッサバパルプは肉牛用飼料に適し、成分の季節・工場間変動も小さい(2018)
タイ東北部のキャッサバデンプン抽出工場から排出されるキャッサバパルプの化学成分の工場や季節による変動は比較的小さく、これを飼料中50%(乾物ベース)まで混合した飼料を肉用牛に給与した場合、良好な増体成績を得られる。
- アジアモンスーン地域の天水稲作における最適播種期予測による収量改善(2018)
全球スケールの季節予報を統計的にダウンスケーリングした気象予測値をモンスーンアジアの100 km2程度の天水稲作地域に適用できることを明らかにした。これにより、作物生育モデルを使った最適播種期の予測が可能となり、農家の収量を改善できる。
- スーダンサバンナでは地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を測定できる(2018)
地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を精度良く測定できることを世界で初めて明らかにした。スーダンサバンナでは鉄石固結層の出現深度で土壌型や土地生産力を推定できるため、今後地中レーダーで簡単・迅速に土壌型および土地生産力の評価が可能になる。
- スーダンサバンナでは間作を除いた保全農業で十分土壌侵食を抑制できる(2018)
スーダンサバンナでは最小耕起と作物残渣マルチの2要素からなる保全農業で土壌侵食を抑制でき、「マメ科作物との間作」という要素を加えても更なる土壌侵食抑制効果は得られない。
- 畝間灌漑を改良した簡易サージフロー灌漑法は浸透損失を抑制し節水できる(2018)
畝間への給水を1日間隔で2回に分けて行う簡易サージフロー灌漑法は、通常の畝間灌漑と比べ、灌漑中に生じる浸透損失を削減できる。この灌漑法は、新たな投資や大幅な労力の増加を伴わずに、圃場への給水量を19~22%節減できる。
- 環礁島の地下淡水レンズの汚染源対策は地下水の滞留時間にも配慮すべきである(2018)
マーシャル諸島共和国では、発生源から環境中に排出される窒素負荷量は豚舎において最大である。大規模な豚舎に加え、地下水の滞留時間が長い島の外洋側や南側から汚染源対策を導入することが効果的である。
- 支柱栽培したヤムイモ地上部バイオマスの非破壊推定(2018)
支柱栽培したヤムイモの地上部バイオマスを非破壊的に推定する簡便・安価な手法を開発した。これにより、ヤムイモの生育調査を大幅に省力化することができるだけでなく、農家圃場における生育診断指標として利用できる。
- アフリカ小農支援のための農業経営計画モデル(2018)
アフリカ小農の技術普及や生計向上を目的として、小農の技術水準、生計戦略などを反映した農業経営計画モデルを構築し、所得を最大化する作付体系や技術導入規模を特定する。
- ゲノムワイド関連解析によるイネの側根形成に関与する遺伝子座の特定(2018)
ゲノムワイド関連解析により検出された遺伝子座qTIPS-11はイネ生育初期の側根形成に関与する。推定される原因遺伝子はグリコシル加水分解酵素遺伝子である。この機能型対立遺伝子は、より多くの側根を持つ直播適性に優れたインド型イネ品種の開発に利用できる。
- ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群(2018)
栽培ダイズ品種の遺伝的背景を持ち、染色体の一部のみが野生ダイズに置換された>染色体断片置換系統群を開発し、それらの系統を用いて種子重や開花期QTLのゲノム上の座乗領域を明らかにできる。開発した野生ダイズの染色体断片置換系統は重要形質の遺伝解析に利用できる。
- 人工気象器を用いたダイズの省スペース・低コスト高速世代促進技術(2018)
閉鎖環境栽培で昼間に不足しがちなCO2を補充できる人工気象器を用い、未熟種子を利用して、適切な光・温度条件のもとでダイズを栽培することにより、年間5世代の交配を伴う世代促進が可能である。
- サトウキビの新しい育種素材となるサトウキビとエリアンサスの属間雑種の作出(2018)
サトウキビ普及品種とその近縁遺伝資源エリアンサスを交配して作出した属間雑種は、エリアンサスの染色体数が系統毎に異なり、農業特性に多様な変異がある。サトウキビ育種での遺伝的基盤拡大や新規特性の導入に向けた新しい育種素材として利用できる。
- アフリカにおけるサバクトビバッタの時空間的分布パターン(2018)
アフリカで大発生するサバクトビバッタの幼虫および成虫は、夜間は大型の植物上に群がり不活発になる。成虫は温度依存的に逃避行動を変化させ、低温時には不活発になり逃避能力が低下する。この行動特性を応用することで殺虫剤の使用量を軽減できる可能性がある。
- 穂ばらみ期の地上分光計測データから収穫前にコメの収量が予測できる(2018)
穂ばらみ期の水稲群落上で分光計測を行うことで、収穫1カ月前に収量を予測することが可能である。さらに早い生育ステージ(幼穂形成期)でも低い精度で収量を予測できるが、開花後の成熟期に入ると予測は困難になる。収量の推定には、分光データのうち窒素とバイオマスに関連したレッドエッジ(700–760 nm)と近赤外(810–820 nm)の波長が重要である。
- 新規アルカリ好熱嫌気性菌Herbivorax saccincola A7はバイオマス分解能に優れる(2018)
リグノセルロース系バイオマスを原料とする堆肥から分離した新種の好熱嫌気性細菌H. saccincola A7はアルカリ環境を好み、セルロースとヘミセルロースを分解できる。本菌は、近縁菌には無いキシロースやキシロオリゴ糖の代謝酵素を持つことから、リグノセルロース系バイオマスの効率分解に適している。