スーダンサバンナにおけるササゲ生産を広範囲で改善するための品種選抜法

要約

ササゲの収量は狭い地域内でも場所や年によって大きく変動するが、土壌型と降水量によって栽培環境を分類し、環境間の収量安定性にもとづいて品種を選抜することで、広範囲における平均収量の改善に向けた効率的な育種および品種利用が可能となる。

背景・ねらい

マメ科作物のササゲ(Vigna unguiculata)は西アフリカのスーダンサバンナ(年平均降水量が600~900 mmの半乾燥地)において重要なタンパク質供給源および現金収入源である。しかし、その平均収量はアジアや北米の半分以下と極めて低い。現地の育種機関ではササゲの収量改善に向けた品種選抜が続けられているが、栽培環境によって収量が大きく変動することが適正品種の選抜を困難にしている。よって、品種選抜を効率的に行うためには、この収量変動を説明する環境要因を明らかにする必要があるが、これまでのところ十分な情報は得られていない。地理的要因に関しては、現地の土壌は川からの距離に応じて数百m程度でも物理及び化学的性質が大きく変化する。さらに、主流である無施肥栽培において収量形成に重要な役割を果たす窒素固定は土壌水分量の影響を受けやすいため、保水性などの土壌物理性および降水量の違いが生育や収量に強く関係すると予想される。そこで、収量変動要因として土壌型と降水量の年次変動に着目し、両者に対するササゲの応答を明らかにするともに、生産改善に向けた効率的な品種選抜法を検討する。

成果の内容・特徴

  1. 試験対象地では互いに400〜600 m離れた場所において、スーダンサバンナで優占する3つの土壌型(①、②、③)の圃場が存在する(図1)。これらの圃場を栽培試験に用いることで、ササゲの生育、収量に対する土壌の影響を同一の気象条件下で評価することができる。
  2. 高い収量を得る品種は土壌型によって異なり、同じ土壌型でも栽培年により異なる(図2)。多雨年の2016年は土壌型に関わらず品種Jの収量が高いが、平年並みの降水量であった2017年は土壌型①では品種P、土壌型②では品種N、土壌型③では品種Lの収量が最も高い。
  3. 土壌型と栽培年の降水量を要因として環境を分類し、環境間の安定性と品種の基本収量(環境以外の要因による収量で、計算によって求めた値)を基準にすることで土壌型や降水量の影響を受けにくく、収量が比較的高い品種を選抜することができる(図3の品種Gと品種P)。

成果の活用面・留意点

  1. 環境の定義に使用した土壌型はスーダンサバンナで広範囲に分布するため、今後、同地域内における降水量の異なる地点に対して同解析法を適用することで、地域を包括したササゲ品種の最適な割り当てを行うことができる。
  2. 農村レベルの狭い地域内における土壌型の分布や降雨パターンを考慮した品種の使い分け指針の提供にも利用可能である。
  3. 安定性の解析にもとづく品種選抜に加え、施肥や畝立てなど、土壌型に応じた栽培管理を組み合わせることで、収量のさらなる向上と安定化が期待できる。
  4. 本手法を品種選抜に適用する際には、複数年の栽培試験を行うことにより対象地域における降水量の年次変動幅を包含するデータセットを得る必要がある。

具体的データ

  1. 図1 スーダンサバンナで優占する3つの土壌型

    それぞれに有効土層厚(植物が根を伸ばすことができる深さ;図の両矢印)、養分量、保水性が異なる。有効土層厚、養分量、保水性はいずれも土壌型①>土壌型②>土壌型③である。

     

  2. 図2 供試した16品種の子実収量

    5反復の平均値±標準偏差を示す。横軸のA-Pはそれぞれに異なる品種で図中の矢印は各環境で収量が最大の品種を示す。年間降水量は2016年が999 mm、2017年が795 mmであった。 

     

  3. 図3 各品種の栽培環境(土壌型+降水量)間での収量安定性

    横軸は遺伝子型-環境交互作用の解析法である相加主効果相乗交互作用(AMMI)分析から求めた指標であり、値が小さいほど安定性が高い。縦軸は各品種の基本収量を示す。品種Gと品種P(図中赤色)は安定性と同時に基本収量が高い。 

所属

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究

研究プロジェクト

アフリカの食料問題解決のためのイネ、畑作物等の安定生産技術の開発(アフリカ食料)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金 » アフリカ食料

研究期間

2020年度(2016~2020年度)

研究担当者

井関 洸太朗 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 80748426
見える化ID: 1761

伊ヶ崎 健大 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 70582021

Batieno Joseph ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

ほか
発表論文等

Iseki K et al. (2021) Field Crops Research, 261:108012
https://doi.org/10.1016/j.fcr.2020.108012

日本語PDF

2020_B04_A4_ja.pdf584.9 KB

2020_B04_A3_ja.pdf584.54 KB

English PDF

2020_B04_A4_en.pdf499.82 KB

2020_B04_A3_en.pdf499.6 KB

ポスターPDF

2020_B04_poster.pdf700.28 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。