国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

スーダンサバンナでは間作を除いた保全農業で十分土壌侵食を抑制できる

要約

スーダンサバンナでは最小耕起と作物残渣マルチの2要素からなる保全農業で土壌侵食を抑制でき、「マメ科作物との間作」という要素を加えても更なる土壌侵食抑制効果は得られない。

背景・ねらい

西アフリカのスーダンサバンナ(年平均降水量が600~900 mmの半乾燥地)では、水による土壌侵食(表層土壌が削られる現象で水食と呼ばれる)を主要因とする砂漠化が深刻である。FAOは土壌侵食を抑制する技術として①土壌かく乱の最小化、②有機資材による土壌被覆、③マメ科作物(例えばキマメなど)との輪作/間作の3要素をパッケージ化した保全農業を世界的に推進している。しかし、スーダンサバンナでは農民に3要素の全てを実施する余裕がないため、保全農業は普及していない。従って、今後保全農業を土壌侵食対策として普及するためには、少しでも農民の負担を軽減すべく、パッケージ化された3要素の全てが本当に土壌侵食の抑制に不可欠なのか再検討する必要がある。特にマメ科作物との間作(当地域では輪作より間作が一般的である)は土壌侵食の抑制に貢献しない可能性があることから、その検証は喫緊の課題である。

成果の内容・特徴

  1. 土壌侵食量は、土壌侵食量 [g]=土砂濃度 [g L−1]×降水の流出率 [%]×降水量 [L]、という式で表現できる。土壌保全技術は土砂濃度あるいは降水の流出率(土壌に浸み込まなかった割合)を下げることで土壌侵食を抑制する。スーダンサバンナで保全農業を実施した場合、土壌侵食は土砂濃度の低下というよりは降水の流出率の低下によって抑制される(図1)。
  2. 降水の流出率の低下は、主に土壌被覆材(マルチ材)として用いたソルガム残渣の直下に発達したシロアリおよびコモリグモの穿孔によって雨水の浸潤速度が高くなること(図2)、さらにその粗間隙が最小耕起によって維持されることに起因する。
  3. 上記2の効果が非常に大きいため、最小耕起およびソルガム残渣マルチとともにマメ科作物との間作を実施した場合、間作は土壌侵食の抑制に寄与しない(図3)。この結果は、最小耕起とソルガム残渣マルチの2要素を実施すれば、パッケージ化された3要素の保全農業と同様の土壌侵食抑制効果が得られることを示している。従って、スーダンサバンナで土壌侵食を抑制する際には、農民の負担を軽減するためにも、マメ科作物との間作を除いた2要素の保全農業が適している。

成果の活用面・留意点

  1. 保全農業を実施する際の農民の負担が軽減されるため、本成果はスーダンサバンナにおける保全農業の今後の普及に可能性を開くものである。
  2. 本成果は、気候、土壌、生物相の条件が類似する各国の農業技術普及機関で活用できる。
  3. 本研究は保全農業を対象としているため、マメ科作物との間作のみを実施する処理は設けておらず、間作単体の土壌侵食抑制効果については検討していない。従って、本成果はマメ科作物との間作それ自体の土壌侵食抑制効果を完全に否定するものではない。

具体的データ

  1. 図1 各処理における土砂濃度(左)と降水の流出率(右)
    図1 各処理における土砂濃度(左)と降水の流出率(右)
    *慣行法とは通常耕起、残渣マルチなし、ソルガム単作の組合せを指す。
    ブルキナファソ環境農業研究所サリア支所に設置した侵食試験区における3年間の試験結果(図3も同様)。
    異なる文字は群間に有意差があることを示す(P<0.05、チューキーのHSD検定)。

  2. 図2 処理および場所による透水性の違い
    図2 処理および場所による透水性の違い
    コモリグモおよびシロアリはソルガム残渣の直下に発達したそれぞれの穿孔周辺の結果を、また穿孔なしはソルガム残渣が薄く動物による穿孔が見られなかった場所の結果を示す。

  3. 図3 各処理における土壌侵食量
    図3 各処理における土壌侵食量
    異なる文字は群間に有意差があることを示す(P<0.05、チューキーのHSD検定)。

所属

国際農研生産環境・畜産領域

分類

技術

国名
  • ブルキナファソ
  • プログラム名

    資源・環境管理

    予算区分

    交付金アフリカサバンナ農業

    研究期間

    2018年度(2011~2015年度)

    研究担当者
  • 伊ヶ崎 健大 (生産環境・畜産領域)
  • 南雲 不二男 (生産環境・畜産領域)
  • Simporé Saïdou (ブルキナファソ環境農業研究所)
  • Barro Albert (ブルキナファソ環境農業研究所)
  • 発表論文等

    Ikazaki K et al. (2018) SSPN, 64: 230-237 DOI: 10.1080/00380768.2017.1422393

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