スーダンサバンナの栽培データを用いて気候変動がササゲ栽培に及ぼす影響を推定

関連プロジェクト
アフリカ畑作システム
要約
西アフリカのスーダンサバンナにおける詳細な栽培データを基にしたササゲの収量予測では、気候変動により今後30年間で降雨量が増すため、保水性の高い土壌(リキシソル)では多雨年にササゲの過湿害が深刻化する。一方、保水性の低い土壌(プリンソソル)では、引き続き干ばつが主な収量低下リスクとなる。半乾燥地であっても土壌型に応じて、干ばつだけでなく過湿害への対策が必要である。

背景・ねらい

アフリカ西部のスーダンサバンナと呼ばれる半乾燥地域では、乾燥に強いマメ科作物のササゲが広く栽培されている。しかし、単位面積当たりの収量は極めて低いうえ、今後、豪雨や干ばつなど、気候変動による極端気象の影響が顕在化することが懸念されている。ササゲは当地域における重要なタンパク質供給源として、将来の生産変動の予測やその要因の特定など、気候変動への対策が急務となっている。
収量予測モデルは雨量や気温などの気象情報と土の肥沃度や水分保持に関する情報を入力することで目的の環境条件における作物の収量を推定することができる。しかし、ササゲを対象とした既存のモデルは、環境ストレスが少ない好適な栽培環境における収量予測に特化しているため、アフリカの厳しい栽培環境に適用することが難しい。
そこで、国際農研の過去の研究で蓄積されたスーダンサバンナにおけるササゲ栽培データを用いて既存モデルの収量予測精度を改善し、同地域における今世紀半ばまでのササゲ収量に対する気候変動の影響を評価する。

 

成果の内容・特徴

  1. 当該地域を代表する2種類の土壌型リキシソルとプリンソソルを対象に、降雨条件が異なる4年間における20品種のササゲ栽培データ(n=1380)をもとに収量予測モデルを作成することで、乾燥条件や過湿条件(図1)など、幅広い栽培環境における収量推定を行うことができる。
  2. 収量予測に用いた最新の全地球的な気候変動予測(第6期結合モデル相互比較プロジェクト、CMIP6)では、西アフリカにおいて今後30年間でササゲ栽培期間(7~10月)における降雨量および日30mm以上の強雨日数が増加する(図2上)。降雨が多く、強雨日数が増加するとリキシソルのササゲ収量が大きく低下する(図2下)。
  3. 将来、干ばつ発生時のササゲの収量低下は、土壌型によらず現在より軽減されるが、プリンソソルでは干ばつによる収量低下が引き続き最も深刻である(図3)。一方、リキシソルでは、多雨年における過湿害が現在よりも深刻化すると推定される。

 

成果の活用面・留意点

  1. リキシソルは比較的肥沃で収量が高いため、主要な作物生産の場となっているが、ササゲにおいては今後、雨量増加による過湿害が深刻化すると予想されることから、過湿害に強い品種の導入などの対策が必要である。
  2. プリンソソルでは過湿害よりも干ばつによる収量低下が相対的に大きく、今後も干ばつへの対策を中心に生産の安定化を図る必要がある。

 

具体的データ

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

食料

農産物安定生産

予算区分

交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ畑作システム

交付金 » アフリカ食料

研究期間

2016~2023年度

研究担当者

井関 洸太朗 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 80748426
見える化ID: 1761

伊ヶ崎 健大 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 70582021

酒井 ( 社会科学領域 )

飯泉 仁之直 ( 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) )

科研費研究者番号: 60616613
見える化ID: 1584

塩竃 秀夫 ( 国立環境研究所 )

科研費研究者番号: 30391113

今田 由紀子 ( 東京大学 )

科研費研究者番号: 50582855

Batieno Joseph ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

ほか
発表論文等

Iizumi et al. (2023) Agricultural and Forest Meteorology 344: 109783. 
https://doi.org/10.1016/j.agrformet. 2023.109783

日本語PDF

2023_B14_ja.pdf1.15 MB

English PDF

2023_B14_en.pdf1.35 MB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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