中国山東省における水資源変化が食糧需給へ及ぼす影響
中国山東省では水資源の変動が穀物生産変動の大きな要因となっており、地域の食糧需給への影響が大きい。水供給量の制約が将来の食糧需給に大きな供給制約を生じさせる可能性を示している。
背景・ねらい
中国においては、農業生産の多様化、近代化が進行する中で、灌漑用水への依存が高まる一方、都市や郷鎮企業(農村工業)などからの水需要の増加が農業生産の制約となっている。このため水資源の変動と食糧生産との関連性を定量的に解明する必要がある。本研究では中国における食糧の主産地である山東省の水需給の変化が食糧生産におよぼす影響を、シミュレーション分析によって明らかにする。
成果の内容・特徴
- 山東省における干ばつは、1980年代の被害年(年間300万ヘクタール以上の被害面積の年)の平均面積は345万ヘクタールであったが、1990年代では416万ヘクタールと被害面積の大規模化が確認され、年間の食糧需給ギャップ(生産量-消費量)の被害年平均(1,287万トン)と通常年(被害年以外の年)平均(1,589万トン)との差は300万トン以上に達する。(図1)
- 将来の人口増加、都市拡大や工業進展による耕地面積の減少が加速すること、灌漑の反収への影響等を含むシステムダイナミックスモデルを用いて、水の供給量による食料需給ギャップのシミュレーション分析を行った。
- 結果、水供給量が近年の平均供給量である250億m3の水準で続くと仮定した場合、食糧需給ギャップは年々拡大し2008年には2,000万トンを超える供給不足となる。(図2)
- 一方,水供給量が350億m3に増えたと仮定した場合(2030年に山東省の水需要の下限が335億m3という予測(聞き取り調査による))には,食糧需給ギャップはかなり緩和され,最大でも1,000万トンの供給不足に留まる。(図2)
(ア) いずれにしても、水の供給状況は、山東省の食糧需給の動向を大きく左右し、山東省は食糧主産地としての地位を失う可能性が高い。
成果の活用面・留意点
モデルの構成と他の地域の特性やデータを考慮した上で、山東省だけではなく中国の他の地域にも応用できる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 国際情報部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 受託研究〔アジア食料〕
- 研究課題
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アジア地域の環境変化と食料安全保障に関する研究
- 研究期間
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2001年度(1999~2001年度)
- 研究担当者
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銭 小平 ( 国際情報部 )
小山 修 ( 国際情報部 )
- ほか
- 発表論文等
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銭小平(2002):食料生産と環境変化の定量分析. 農業経営研究, 6, 152-155.
Koyama,O. (2000): Food security and management of rural environment in Asia. Global Environmental Research, 3(2), 79-87.
- 日本語PDF
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2002_02_A3_ja.pdf787.34 KB
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2002_02_A4_en.pdf68.96 KB