モザンビークにおける乳牛飼養の存立条件を反映した耕畜複合経営計画モデル

要約

モザンビークの小規模農家による乳牛飼養の存立条件を解明し、耕畜連携を通じて効率的に食料と飼料の確保、リスク分散、所得向上等を達成するための複合経営計画モデルを作成する。同モデルは、乳牛飼養の定着と耕畜連携の促進に向けた意思決定支援に有効である。

背景・ねらい

モザンビークでは、増加する牛乳需要への対応、農村住民の生計向上、栄養改善などを目的として、耕種経営に大きく依存した国内の小規模農家に対する乳牛の供与、飼育指導が進められているが、乳牛飼養の定着は未だ限定的である。そこで、南アフリカからジャージー種が近年導入されたマプト州マニサ郡を対象に、乳牛飼養の存立条件を明らかにし、その上で小規模農家の限られた経営資源、技術水準で実現可能であり、かつ耕畜連携を通じた食料と飼料の確保、リスク分散、所得向上等に有効な複合経営計画を策定するためのモデルを作成することで、乳牛飼養の定着と耕畜連携の促進に向けた意思決定支援に貢献する。

成果の内容・特徴

  1. 作成されたモデルは、平成30年度国際農林水産業研究成果情報B02「アフリカ小農支援のための農業経営計画モデル」を応用し、アフリカ小農特有の各種条件に加え、乳量に応じた乳牛の養分要求量を充足する飼料供給、乳牛の再生産が可能な牛群構成と牛舎スペースの確保を条件として、混合整数計画法による計算を行い、農家所得全体の向上に最適な作付体系、並びに乳牛飼養規模を特定する(図1)。
  2. マニサ郡では、乳牛飼養農家の全数調査(70戸)の結果、感染症等の疾病や人工授精の欠如により、現状では乳牛の死亡率、分娩間隔が大きく、生産可能な牛群の維持が困難な状況にあるため(図2:赤字)、乳牛の衛生・繁殖管理の改善が酪農の存続、並びに複合経営計画モデルの適用にとって重要である。
  3. 繁殖対策などにより分娩間隔が短縮し、牛群維持が可能になった場合(図2:青字)、マニサ郡の典型的な乳牛飼養農家では、同モデルを用いた分析の結果から、リスク分散型混作体系のもとで食料自給を達成しつつ、作物残渣の有効利用等を通じ経産牛3頭、育成牛1頭を飼養することで(表1)、農家所得が現状の44%、モザンビーク国立農業研究所が近年農家に指導している生乳のヨーグルト加工を行った場合は62%、増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. 同モデルは、乳牛飼養や耕畜連携の促進に向けた農家の意思決定支援に加え、乳牛の感染症等の疾病対策や人工授精の普及による農家経営への影響等、モザンビーク政府が衛生・繁殖管理の改善に関する政策検討を行うための参考情報の提供に利用できる。
  2. 現状の技術設定だけでなく、耕畜連携に関する新規栽培技術、飼料調製技術などを導入した場合の最適な作付体系、乳牛飼養規模の特定や所得増大効果の解析などにも活用できる。
  3. 同モデルの計算、結果の出力は、アフリカ小農支援のための農業経営計画モデルの計算・出力支援プログラムでも可能であるが、酪農特有の設定に際してやや複雑な操作を要することから、これらの設定・操作を簡素化したプログラムの作成が望まれる。

具体的データ

  1. 図1 アフリカ小農支援のための農業経営計画モデルを応用した複合経営計画モデルの概略図

     

  2. 図2 マニサ郡の乳牛飼養農家による牛群維持の条件

    現状では(赤字)、経産牛1頭に対し、年間0.19頭が後継用に補充される一方、その後の供用(乳牛を生産に利用すること)中の死亡率(22%)を考慮すると、0.15頭が廃用として淘汰されるため、牛群維持に7産必要となり、分娩間隔2.14年では供用年数が約15年に及ぶ。繁殖管理の改善により分娩間隔が1.5年になると(青字)、必要な産次は5産、供用年数は7.5年まで短縮される。

     

  3. 表1 マニサ郡の乳牛飼養農家の最適作付体系・飼養規模

      現状 最適解
    耕種 (ha) キャッサバ+トウモロコシ+ササゲ+落花生+カボチャ混作 0.22 0.24
    トウモロコシ+ササゲ+落花生混作 0.33 0.32
    トウモロコシ+サツマイモ+サトウキビ+カボチャ混作 0.48 0.70
    トウモロコシ+サトウキビ+バナナ+カボチャ混作 0.28 0.89
    その他 0.84      0
    酪農 (頭) ジャージー経産牛      1      3
    ジャージー育成牛      3      1

    マニサ郡のジャージー種導入村で実施した世帯全数調査に基づく典型的な小規模家族経営を対象としたモデル分析の結果。

     

  4. 図3 最適作付体系・乳牛飼養による農家所得の増加​​​​​​

    MT:メティカル(現地通貨) 棒グラフ上部の数値:増加割合(%) 

所属

国際農研 社会科学領域

分類

研究

研究プロジェクト

アフリカの食料問題解決のためのイネ、畑作物等の安定生産技術の開発(アフリカ食料)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金 » アフリカ食料

研究期間

2020年度(2018~2020年度)

研究担当者

小出 淳司 ( 社会科学領域 )

大矢 徹治 ( 生産環境・畜産領域 )

松本 武司 ( リスク管理室 )

Tinga Benedito ( モザンビーク国立農業研究所 )

ほか
発表論文等

Koide J and Tinga B (2020) Tropical Animal Health and Production, 53:130
https://doi.org/10.1007/s11250-020-02547-5

日本語PDF

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2020_B06_A3_ja.pdf621.39 KB

English PDF

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2020_B06_A3_en.pdf912.87 KB

ポスターPDF

2020_B06_poster.pdf555.12 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。