研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
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2023 適切なリンの肥培管理により黒米の生産性と品質を両立できる
リンの供給力が低い熱帯地域の土壌では、リン施肥によって黒米の収量が向上するが、過剰なリン施肥は抗酸化力を持つフラボノイド類量を減少させ、玄米表面色の黒色を薄くする。適切なリンの肥培管理により、付加価値の高い黒米の安定生産が可能になる。2023 ツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性を国際間で比較するための簡易検定法
検定に供試する個体の採集法、入手が容易な材料で作成する人工飼料による供試虫の累代飼育法、人工飼料を用いる殺虫剤塗布法から構成される簡易検定法を用いることで、越境性害虫であるツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性を容易に国際間で比較できる。2023 穂数を増加させる量的遺伝子座MP3は高CO2環境でイネを増収させる
温帯ジャポニカ品種コシヒカリ由来の量的遺伝子座MP3は、インディカ品種の分げつ数・穂数を20~30%増加させ、高CO2環境で6%増収させる。MP3のインディカ品種への利用により、大気中CO2濃度の上昇が続く気候変動下での国内外の持続的な稲作への貢献が期待される。2023 ゲノム編集でOsTB1遺伝子の機能を弱めたイネはリン欠乏条件での収量性が高い
イネの分げつ伸張抑制遺伝子TEOSINTE BRANCHED1 (OsTB1) の機能をゲノム編集により弱めることで、背景品種X265に比べて、分げつ数が2割増加した変異体が作出される。同変異体は、リン欠乏条件での籾収量が背景品種に比べて4割多い。OsTB1遺伝子の機能を調整することで、分げつが抑制されるリン欠乏環境でのイネの生産性向上が期待される。2023 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは冠水害の回避にも有効
リン欠乏水田で高い施肥効果を発揮するリン浸漬処理P-dippingは、水稲の生育日数を短縮して低温ストレスリスクを軽減するだけではなく、初期生育を改善するため、突発的な水位上昇にともなう冠水害の回避にも有効である。さらに、P-dippingと組み合わせることで、窒素施肥の効果が大きくなることから、P-dippingは様々な圃場環境や窒素施肥に効果的な技術である。2023 水稲へのリン浸漬処理P-dippingは4.5~6.5葉程度の苗を用いると増収効果が高い
水稲の移植時に、リン肥料を混ぜた泥を苗の根に付着させるリン浸漬処理P-dippingでは、葉齢が4.5~6.5葉程度の苗を用いることで、最も高い増収効果が得られる。葉齢が4.5程度より小さい場合には苗の根に付着するリン量が少なく、6.5程度より大きい場合には肥料焼けにともなう苗の植え傷みが生じることで、P-dippingによる増収効果が低くなる。2023 有効土層の薄い土壌型プリンソソルにおけるソルガムの特異な施肥応答
西アフリカには作物が根を張れる土層(有効土層)の厚さが50 cm以下で、水分保持能が低いプリンソソルと呼ばれる特殊な土壌が広く分布する。このプリンソソルでは、他の土壌型とは異なり、土壌水分の不足が主穀であるソルガムの収量を制限しており、さらに、最適な施肥量も有効土層が25 cmのプリンソソルでは他の土壌型と異なる。現在西アフリカで再整備が進んでいるソルガムの栽培指針において、プリンソソルとそれ以外の土壌型を区別する必要がある。2023 土壌型プリンソソルにおけるササゲ栽培では施肥と密植による増収効果が高い
西アフリカのスーダンサバンナでは2つの土壌型(リキシソルとプリンソソル)の圃場が農家内で混在することが多い。プリンソソルは低肥沃であるが、施肥や密植によるササゲの増収効果がリキシソルよりも高く、両者を組み合わせるとより効果が高い。施肥を元肥と追肥に分けた場合、同量を元肥のみで施用する場合よりも収量が増加する。農家内で土壌が混在する場合、プリンソソルへ施肥や密植を優先することで総収穫量の増加が見込める。2023 スーダンサバンナの栽培データを用いて気候変動がササゲ栽培に及ぼす影響を推定
西アフリカのスーダンサバンナにおける詳細な栽培データを基にしたササゲの収量予測では、気候変動により今後30年間で降雨量が増すため、保水性の高い土壌(リキシソル)では多雨年にササゲの過湿害が深刻化する。一方、保水性の低い土壌(プリンソソル)では、引き続き干ばつが主な収量低下リスクとなる。半乾燥地であっても土壌型に応じて、干ばつだけでなく過湿害への対策が必要である。2023 ダイズさび病抵抗性品種KinoshitaとShiranuiは2つ目の抵抗性遺伝子を有する
ダイズさび病抵抗性の提供親として広く利用されてきた品種KinoshitaとShiranuiは、抵抗性遺伝子Rpp5を有することで知られているが、Rpp5の他にRpp3遺伝子を保持する。Rpp3とRpp5は様々なさび病菌に対する反応が異なるため、多くの地域のさび病菌に有効性が高い両品種の抵抗性を新品種に導入するには、2つのさび病抵抗性遺伝子を両方導入することが有効である。2023 統合環境制御と補光の併用は亜熱帯地域のイチゴ生産を増収させる
高温多湿な亜熱帯地域においても統合環境制御システムを用いることにより、イチゴの収穫量は国内平均と同程度に増加する。また日射量が少ない冬季や雨季においては、環境制御に加えて日中にLED補光することで収穫量は増加し果実糖度も向上する。2023 サトウキビとエリアンサスの属間交配によりサトウキビ根系特性の改良が可能である
エリアンサスは、乾燥ストレス耐性と関連する深根性やリグニンの根への沈着が多い特性を具えるサトウキビの近縁属遺伝資源である。サトウキビとエリアンサスの属間雑種F1は、サトウキビより土壌深層の根長密度が大きく、根のリグニン含量が多いことから、エリアンサスをサトウキビの育種に利用することで、サトウキビの乾燥ストレス耐性に関連する根系特性の改良が可能である。
2023 パッションフルーツの高温域での光合成能は非ストレス条件下の蒸散能で決まる
パッションフルーツにおいて、非ストレス条件(葉温が30°C)下で蒸散速度が高い品種・系統は、葉温が40°C以上になる極めて高温の条件下でも高い純光合成速度を維持する。また、気孔のサイズが大きい品種・系統ほど高い蒸散速度と大きな気孔コンダクタンスを示す。非ストレス条件下での蒸散能や気孔のサイズを選抜指標として利用することで、高温でも高い光合成能を示す系統を効率良く選抜できることが期待される。2023 パッションフルーツの高温域での光合成能は非ストレス条件下の蒸散能で決まる
パッションフルーツにおいて、非ストレス条件(葉温が30°C)下で蒸散速度が高い品種・系統は、葉温が40°C以上になる極めて高温の条件下でも高い純光合成速度を維持する。また、気孔のサイズが大きい品種・系統ほど高い蒸散速度と大きな気孔コンダクタンスを示す。非ストレス条件下での蒸散能や気孔のサイズを選抜指標として利用することで、高温でも高い光合成能を示す系統を効率良く選抜できることが期待される。2022 主要普及成果 セルラーゼ酵素を使用せずに「微生物の培養だけ」でセルロースを糖化する技術
新たに同定した好熱嫌気性細菌Thermobrachium celere A9菌は、セルロースが糖化されたセロビオースをグルコースに加水分解するβ-グルコシダーゼを菌体外に生産する。セルロース高分解菌 Clostridium thermocellumと共培養することで、セルラーゼ酵素を使用することなくセルロースバイオマスをグルコースに変換できるため、効率的で安価なセルロース糖化技術となる。
2022 ベトナム肉牛ふん天日乾燥過程における温室効果ガス排出係数
ベトナム南部の肉牛農家は主に天日によりふんを乾燥処理する。その過程における温室効果ガス排出は単位有機物及び初発単位窒素あたりそれぞれCH4: 0.295 ± 0.078 g kg−1 VS、N2O: 0.132 ± 0.136 g N2O-N kg−1 Ninitialであり、当該国当該処理区分における温室効果ガス排出係数として活用できる。天日乾燥処理により、ふん中微生物によるメタン代謝が大きく低減し、メタンは乾燥初期にのみ排出される。
2022 タイ肉牛生産過程における温室効果ガス排出の包括的評価
タイ肉牛飼養過程およびふん尿堆積過程におけるメタン排出はそれぞれ6.87%GEI(総エネルギー摂取量), 0.68%GEI程度であり、堆積ふんへの稲わら混合(重量比5%)は有機物分解を促進し、メタン排出ピーク及びメタン生成古細菌によるメタン代謝を低減するが、総温室効果ガス排出量に与える影響は限定的である。
2022 東南アジア肉牛反芻胃由来メタン排出推定式
東南アジアにおける肉牛反芻胃由来メタン排出量は、乾物摂取量、飼料成分(中性デタージェント繊維)、体重を説明変量に用いた推定式により、現行推定方法よりも高精度で簡易に推定できる。
2022 三期作を通じた間断かんがいは農家の利益向上と温室効果ガス削減に貢献
三期作(通年)を通じた調査は作期による栽培管理、生産費用、収量や販売価格の違いを考慮した評価を可能にする。これらを考慮した評価によると、ベトナム・メコンデルタにおいて、間断かんがい(AWD)三期作実施農家はAWD導入により利益を6%上げながら、温室効果ガス排出量を38%削減できる。農家の利益を向上しつつ、気候変動緩和・適応に貢献するコベネフィットな技術としてアジアモンスーン地域への展開が期待される。
2022 バリ島の水利組合(スバック)の資源配分における価値観の変化をゲーム理論で予測
バリ島の水利組合(スバック)を対象に、エージェントベースモデルとゲーム理論を組み合わせた手法により資源利用における価値観を分析すると、協力関係の維持に価値が置かれている現在の資源配分が、労働資源の減少の進行に伴う価値観の変化によって、非協力的な資源配分になると予測される。