土壌型プリンソソルにおけるササゲ栽培では施肥と密植による増収効果が高い
背景・ねらい
マメ科作物のササゲは乾燥に強いことから、雨の少ない西アフリカ内陸部の半乾燥地(スーダンサバンナ)で広く栽培されている。ササゲは現地に暮らす人々の重要なタンパク質供給源であるが、土の養分量が少ないために、面積あたりの収穫量はアジアや米国のおよそ4分の1以下である。
養分量の少ない土壌で収穫量を増やす最もシンプルな方法は施肥である。しかし、肥料価格が高いことに加え、施肥をしても期待するほど収穫が増えないため、一般的な農家はササゲ栽培でほとんど肥料を使用しない。また、少ない養分に起因する低成長を補うため、播種密度を高めることも対策として考えられるが、現地では50年以上前に設定された推奨播種密度が未だに改訂されずに使用されている。
スーダンサバンナに優占する2つの土壌型のうち、リキシソルは相対的に肥沃で保水性が高い一方、降雨直後に土壌表層の気相率*が低下しやすいため、降雨直後には酸素不足による過湿害を受けやすい。プリンソソルは肥沃度や保水性が低く、降雨による肥料流亡のリスクが高い。養分量や保水性が異なる2つの土壌について、施肥や密植の効果を両者の比較により明らかにし、同地域の重要作物であるササゲの収量を増加させる栽培管理を検討する。
* 気相率:土壌の全容積に対する空気容積の比率
成果の内容・特徴
- 収量に対する施肥の効果はプリンソソルでリキシソルよりも平均して約1.4倍高い(図1)。この違いは、保水性の高いリキシソルにおいて、降雨後に気相率が一時的に著しく低下し、高い地温と相まって根圏の酸素不足が生じるためと考えられる(図2)。これが繰り返される結果、根の発育が阻害される。
- 無施肥の場合、播種密度を推奨法の2倍の密植とすると、プリンソソルでは平均1.5倍程度の収量増収効果がある。リキシソルでは収量増加効果は小さい(図1)。2つの土壌型とも、施肥と密植を組み合わせた場合、施肥単体よりも収量増加が見込める(図1)。
- 2つの土壌型とも、施肥を元肥と追肥の2回に分ける場合、全量を元肥で施用する場合よりも収量増加を見込むことができる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 土壌型は数百メートルの範囲内で変化する。農家内でも圃場の土壌型によって施肥量や播種密度を変えることで効率的にササゲ収量を改善することができる。
- 追肥の時期は地上部の繁茂期にあたる播種後4週目が望ましいが、スーダンサバンナでは雨季中の最も雨が多い時期に相当するため、追肥直後に激しい降雨があった場合、肥料の流亡により追肥効果が得られなくなるリスクがある。肥料流亡のリスクは保水性の低いプリンソソルでより大きい。
具体的データ
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- 予算区分
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交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ畑作システム
交付金 » アフリカ食料
- 研究期間
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2018~2023年度
- 研究担当者
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井関 洸太朗 ( 生物資源・利用領域 )
伊ヶ崎 健大 ( 生産環境・畜産領域 )
科研費研究者番号: 70582021Batieno Joseph ( ブルキナファソ環境農業研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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Iseki et al. (2023) Field Crops Research 292: 108825.https://doi.org/10.1016/j.fcr.2023.108825
- 日本語PDF
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※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。