有効土層の薄い土壌型プリンソソルにおけるソルガムの特異な施肥応答

関連プロジェクト
アフリカ畑作システム
要約
西アフリカには作物が根を張れる土層(有効土層)の厚さが50 cm以下で、水分保持能が低いプリンソソルと呼ばれる特殊な土壌が広く分布する。このプリンソソルでは、他の土壌型とは異なり、土壌水分の不足が主穀であるソルガムの収量を制限しており、さらに、最適な施肥量も有効土層が25 cmのプリンソソルでは他の土壌型と異なる。現在西アフリカで再整備が進んでいるソルガムの栽培指針において、プリンソソルとそれ以外の土壌型を区別する必要がある。

背景・ねらい

サブサハラアフリカ(SSA)で急激に増加する食料需要を満たすためには、SSAでの農業生産性の向上が不可欠である。国連食糧農業機関の統計によれば、1980年から2020年にかけて当該地域の人口は3倍に増加しているのに対して、SSAの半乾燥地の主穀であるソルガムの単位面積当たりの生産性は20%しか増加しておらず、依然として低迷している。この問題に対処するため、現在、西アフリカでは栽培指針の再整備が進んでいるが、気候を反映した農業生態区分は考慮されているものの、土壌型の違いは考慮されていない。しかし、西アフリカの半乾燥地には作物が根を張れる土層(有効土層)の厚さが50 cm以下と薄い、プリンソソルと呼ばれる特殊な土壌が広く分布している。この土壌は、他の土壌型に比べて水分保持能が低いため、プリンソソル上ではソルガムの施肥応答が他の土壌型とは異なる可能性がある。
そこで本研究では、西アフリカの半乾燥地で分布面積が広い3つの土壌型、すなわち有効土層が約100 cmと厚く水分保持能が高いリキシソル(LX)、有効土層が約50 cmのプリンソソル(PT)、有効土層が約25 cmのプリンソソル(PX)において、ソルガムの施肥応答の違いを明らかにする。

 

成果の内容・特徴

  1. 降水量が平均年より21%(標準偏差の1.3倍)少ない年に、有効土層が100 cmのLXでは収量の低下は認められないものの、有効土層が50 cmのPTや25 cmのPXでは、収量が低下する(図1、表1)。これは、いずれのプリンソソルでも土壌水分の不足が収量を制限しうることを示しており、プリンソソルでは、最適なソルガムの品種(例:より早生)や播種密度(例:より疎植)がリキシソルとは異なる可能性を示唆している。
  2. ブルキナファソで現在ソルガムに対して推奨されている窒素施用量(37 kg/ha)、その倍量(74 kg/ha)、3倍量(111 kg/ha)で施肥をする場合、有効土層が100 cmのLXや50 cmのPTでは74 kg/haまでソルガムの収量が増加するのに対して、有効土層が25 cmのPXでは37 kg/haでソルガムの収量が頭打ちになる。この原因は、有効土層が非常に薄いPXでは貯水量が少なく、施肥でソルガムの生育が旺盛になることに伴い増加する水要求量に応えられないためと考えられる。
  3. 以上のようにソルガムの施肥応答はLX、PT、PX間で大きく異なることから、西アフリカで現在再整備が進んでいる栽培指針においては、LX、PT、PXを区別し、最適な施肥量、品種、播種密度を検討する必要がある。

 

成果の活用面・留意点

  1. 本報を基に、現在、西アフリカの各国で再整備が進められている栽培指針で土壌型を考慮することにより、農家が施肥効率を最大化できるテーラーメイドの栽培指針の開発に道が開かれる。
  2. 西アフリカの半乾燥地では、地中レーダーにより簡単に土壌型を把握できる(平成30年度国際農林水産業研究成果情報A04「スーダンサバンナでは地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を測定できる」)。

 

具体的データ

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

食料

資源・環境管理

予算区分

交付金 » 第5期 » 食料プログラム » アフリカ畑作システム

交付金 » アフリカ流域管理

研究期間

2016~2023年度

研究担当者

伊ヶ崎 健大 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 70582021

南雲 不二男 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 20399372

Simporé Saïdou ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

Barro Albert ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

ほか
発表論文等

Ikazaki et al. (2023) Soil Science and Plant Nutrition 70(2): 114––122.

https://doi.org/10.1080/00380768.2023.2279582

Iseki et al. (2021) Field Crop Research 261: 108012. 

https://doi.org/10.1016/j.fcr.2020.108012

日本語PDF

2023_B12_ja.pdf1.04 MB

English PDF

2023_B12_en.pdf230.47 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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