根圏土壌pHの低下はソルガムでの生物的硝化抑制に関わる一つの因子である
インドのアルフィソル(低肥沃な赤黄色土の一種)圃場で栽培したソルガムの根圏土壌の硝化活性とpHはともに非根圏土壌よりも低下し、両者間には相関がある。また、土壌pHの人為的な低下にともなっても硝化活性が低下する。以上より、ソルガムでの生物的硝化抑制の一因子として根圏土壌pHの低下が考えられる。
背景・ねらい
ソルガム(Sorghum bicolor (L.) Moench)は生物的硝化抑制(BNI)能をもつ作物であるが、そのBNI研究はこれまで水耕栽培でのみ行われており、圃場レベルでの評価例はない。そこで、ソルガムの主要な栽培国であるインドのアルフィソル圃場において栽培したソルガムの根圏土壌および非根圏土壌の硝化活性と土壌pHを比較することにより、両者間の関連性を明らかにして、農業システムにおけるソルガムのBNI能活用のための情報とする。
成果の内容・特徴
- アルフィソルの圃場4カ所で栽培したソルガムの根圏土壌(根に付着する数mmの範囲の土)と非根圏土壌(根圏土壌以外の土)の硝化活性を比較すると、多くの場合で根圏土壌のほうが硝化活性は有意に低い(図1a)。また、土壌pHは、根圏土壌のほうが非根圏土壌よりも低い(図1b)。
- ソルガム株の根圏土壌pHと硝化活性との関係をみると、両者間には正の相関があり、特に生育後期に相関係数は高くなる(図2)。
- ソルガム栽培株の非根圏土壌あるいは裸地土壌のpHを硫酸希釈液添加により低下させると、土壌pHの低下にともなって硝化活性は低下する(図3)。
- 以上より、アルフィソル圃場ではソルガム栽培による根圏土壌のpH低下にともなって硝化活性の低下がおこることから、根圏土壌のpH低下はソルガムにおける生物的硝化抑制に関わる一つの因子と考えられる。
成果の活用面・留意点
- これまでに同定されているソルガム根からのBNI物質の根圏土壌pH低下に対する関与は未解析である。
- アルフィソル以外の土壌でのBNIと土壌pH低下との関連性については不明である。
- ソルガム根からのBNI物質の分泌が根圏における低pH条件で促進されることが知られており、ソルガムがもつBNI能の有効活用のための情報として合わせて利用する。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境・畜産領域
- 分類
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研究B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 生物的硝化抑制
拠出金 » 農林水産省
- 研究期間
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2015年度(2011-2014年度)
- 研究担当者
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渡辺 武 ( 生産環境・畜産領域 )
Venkata Satish P. ( 国際半乾燥熱帯作物研究所 )
Sahrawat Kanwar L. ( 国際半乾燥熱帯作物研究所 )
Wani Suhas P. ( 国際半乾燥熱帯作物研究所 )
伊藤 治 ( 国連大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Watanabe et al. (2015) JARQ 49: 245-253
- 日本語PDF
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2015_A05_A4_ja.pdf489.54 KB
2015_A05_A3_ja.pdf263.22 KB
- English PDF
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2015_A05_A4_en.pdf160 KB
2015_A05_A3_en.pdf235.48 KB
- ポスターPDF
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2015_A05_poster.pdf396.31 KB