国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ソルガムの⽣物的硝化抑制にはアンモニア酸化古細菌の抑制が関連する

要約

ソルガムが根から分泌する難水溶性の硝化抑制物質であるソルゴレオンは、生育とともに下層土に向かって新生される根から分泌され、分泌量には系統間差がある。ソルゴレオンの分泌量が多い系統の根圏土壌では、硝化活性とアンモニア酸化古細菌数がともに低下することから、ソルガムの生物的硝化抑制にはアンモニア酸化古細菌数の抑制が関連している。

背景・ねらい

窒素肥料の多施用による農耕地での高い硝化活性は、強力な温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)の放出による地球温暖化、硝酸態窒素の漏出による水環境汚染の大きな原因であり、また施肥窒素の利用効率を低下させて作物収量の減少をもたらす。作物自身が土壌の硝化(硝酸化成)を抑制して窒素吸収量を増加させる生物的硝化抑制(BNI)は、上記の問題を耕種的に解決に貢献する技術として注目されている。穀物として世界第5位の生産面積を持つソルガムは、難水溶性の硝化抑制物質ソルゴレオンを根から分泌しBNI能を示す。本研究では、ソルガム系統の根からのソルゴレオン分泌量と分泌位置および根圏土壌での土壌微生物群集との関連性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. ソルガムのパイプ栽培試験(図1)において、ソルゴレオン分泌量はソルガム系統により異なり、296Bが最も少なく、続いてIS32234、IS20205の順で多い(図2)。また、ソルゴレオン分泌量は生育とともに下層に向かって新しく伸びる新生根領域で増加する。
  2. 窒素肥料(120 kg N ha-1)を硫酸アンモニウム溶液として表土面より施用すると、上記の3系統ともに0~10 cmの土壌層の硝化活性が大きく高まるが、それより下層では低い状態が維持される(図3)。0~10 cmの土壌層の硝化活性はソルガム系統により異なり、296Bが最も高く、続いてIS32234、IS20205の順で低くなり、上記のソルゴレオン分泌量と逆である。これらは、ソルゴレオンがソルガムのBNI能の発揮に重要な役割をもつことを裏づける。
  3. 0~10 cmの土壌層でのアンモニア酸化細菌(AOB)とアンモニア酸化古細菌(AOA)の菌数を、定量的PCR(qPCR)で求めたアンモニア酸化酵素のアンモニアモノオキシゲナーゼαサブユニット遺伝子(amoA)存在量で評価し、ソルガムの3系統間で比較すると、AOA数はソルゴレオン分泌量と反比例の関係にあり、硝化活性とは比例関係にある。一方、AOB数の変動はみられない(図4)。このことから、ソルガム根圏土壌での硝化抑制には、ソルガムが根から分泌するソルゴレオンが作用し、amoAをもつ微生物のうちAOAが抑制されることが関連する。

成果の活用面・留意点

  1. ソルガムのBNI能の発揮にはAOAの抑制が大きく関与することから、他の植物のBNIに関してもAOBだけでなくAOAにも着目して研究を実施すべきである。
  2. 土壌pH、水分量、有機態および無機態の窒素量などの他の要因もソルガムのBNI能の発揮に影響していることに留意する必要がある。
  3. 本研究で適用したパイプ栽培試験は、BNIにおいて重要な根と根圏域の土壌を深さ別に分別し、収率よくサンプリングできることから、他の植物のBNI研究にも有用である。

具体的データ

  1. 図1 ビニールハウス内でのソルガムのパイプ栽培試験状況
    図1 ビニールハウス内でのソルガムのパイプ栽培試験状況
    播種後31日目(a)とパイプを外した土壌柱(b)

  2. 図2 窒素肥料施用下で栽培したソルガムの根からの土壌深度ごとのソルゴレオン分泌量
    図2 窒素肥料施用下で栽培したソルガムの根からの土壌深度ごとのソルゴレオン分泌量
    図内のバーは標準偏差を、文字は土壌深度ごとでの有意差があることを示す(同一文字の場合は有意差なし)。

  3. 図3 窒素肥料施用下で播種後70日間栽培したソルガム根圏土壌の深度ごとの硝化活性
    図3 窒素肥料施用下で播種後70日間栽培したソルガム根圏土壌の深度ごとの硝化活性
    図内の箱は四分位範囲、バーは最大・最小を示す。10 cm以深の層は施用アンモニウムが少ないため、硝化活性が上がらず、ソルゴレオンの影響が現れない。

  4. 図4 窒素肥料施用下で播種後70日間栽培したソルガム根圏土壌(深度0~10 cm)中の各菌の遺伝子存在量
    図4 窒素肥料施用下で播種後70日間栽培したソルガム根圏土壌(深度0~10 cm)中の各菌の遺伝子存在量
    amoA:アンモニアモノオキシゲナーゼαサブユニット遺伝子。図内のバーは標準偏差を、文字は遺伝子ごとの有意差を示す(同一文字の場合は有意差なし)。10 cm以深の遺伝子存在量もこれと同様の傾向を示す。

所属

国際農研生産環境・畜産領域

分類

研究

国名
  • 日本
  • 研究プロジェクト

    生物的硝化抑制(BNI)能を活用した環境調和型農業システムの開発(BNI 活用)

    プログラム名

    資源・環境管理

    予算区分

    交付金BNI活用

    研究期間

    2019年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • Sarr Papa Saliou (生産環境・畜産領域)
  • 安藤 康雄 (研究戦略室)
  • 中村 智史 (生産環境・畜産領域)
  • Subbarao Guntur Venkata (生産環境・畜産領域)
  • Deshpande Santosh (国際半乾燥熱帯作物研究所)
  • 発表論文等

    Sarr PS et al. (2019) Biology and Fertility of Soils, 56(2):145-166 https://doi.org/10.1007/s00374-019-01405-3

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