国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ソルゴレオンはソルガムの重要な生物的硝化抑制物質の一つである

要約

ソルゴレオンは、ソルガムが根から分泌する難水溶性の生物的硝化抑制物質である。ソルゴレオンの分泌量とソルガム根面の難水溶性物質画分の硝化抑制活性との間には高い相関があり、このことはソルゴレオンがこの画分の重要な硝化抑制物質であることを示している。

背景・ねらい

硝酸化成(硝化)は、脱窒とともに温室効果ガスの排出と施肥窒素の利用効率低下を引き起こす最も重要な経路である。一部の植物は根から物質を分泌して土壌中の硝化を抑制しており、このことは生物的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition、BNI)と呼ばれている。ソルガムは生物的硝化抑制能を有しているが、水溶性硝化抑制物質としてMHPPとサクラネチン、難水溶性物質としてソルゴレオン(図1)が同定されている(国際農林水産業研究センター 平成24年度成果情報)。ここでは、ソルガムの生物的硝化抑制における難水溶性物質画分でのソルゴレオンの役割を明らかにする。

成果の内容・特徴

  1. 水耕(ろ紙法)により栽培したソルガムの幼苗根のジクロロメタン(DCM、難水溶性物質を抽出)洗浄液中のソルゴレオン量と硝化抑制活性量との間には非常に高い相関がある(図2)。
  2. ソルガムの2つの育種用系統であるGDLP 34-5-5-3とIS41245について比較すると、GDLP 34-5-5-3はIS41245よりも有意に多くのソルゴレオンを分泌する(水耕栽培(ろ紙法)による、データ未表示)。ポット栽培のGDLP 34-5-5-3の根圏土壌の硝化活性は、上記の水耕栽培でのソルゴレオン分泌量に比例してIS41245のそれよりも有意に低い(図3)。また、圃場で栽培した場合も、上記2系統のソルゴレオン分泌量と根圏土壌の活性との関係はポット栽培の場合と同様である(データ未表示)。
  3. ソルゴレオンは、アンモニア硝化細菌のNitrosomonas europaeaの活性を強く阻害する。また、土壌1 gあたり40 µg以上のソルゴレオンを添加すると土壌中の硝化活性は強く抑制され、添加したNH4+-N(アンモニウム窒素)の多くが土壌中に残存するようになる(図4)。
  4. 以上の結果は、ソルガムでは、根からのソルゴレオンの分泌と難水溶性物質画分の硝化抑制活性との間には高い相関があり、このとはソルゴレオンが難水溶性物質画分において重要な硝化抑制物質であることを示している。

成果の活用面・留意点

  1. 土壌中の硝化活性が低いソルガムの生産体系実現のために、ソルゴレオンの分泌量の増加により生物的硝化抑制能を強化したソルガム品種の開発に利用できる。
  2. ソルゴレオンの分泌量の差異についてはさらに系統数を増やした検討が必要である。

具体的データ

  1. 図1 ソレゴレオンの構造式
    図1 ソレゴレオンの構造式
  2. 図2 ソルガムの根からのジクロロメタン(DCM)洗浄液中のソレゴレオン量と硝化抑制活性量との関係
    図2 ソルガムの根からのジクロロメタン(DCM)洗浄液中のソレゴレオン量と硝化抑制活性量との関係
  3. 図3 温室でポット栽培のソルガム2系統(IS1245とGDLP 34-5-5-3)から採取(種120日後、出穂期)した根圏土壌の硝化活性(25°Cで30日間保持)コントロール、植物栽培なし土壌 ; DCD、コントロール土壌にDCD(ジシアンジアミド)を25 µg g-1の濃度で添加
    図3 温室でポット栽培のソルガム2系統(IS1245とGDLP 34-5-5-3)から採取(種120日後、出穂期)した根圏土壌の硝化活性(25°Cで30日間保持)コントロール、植物栽培なし土壌 ; DCD、コントロール土壌にDCD(ジシアンジアミド)を25 µg g-1の濃度で添加
  4. 図4 ソレゴレオン添加土壌(添加濃度 0、10、20、30、40、100µg g-1)を20°Cで60日間保持した後の無機態窒素(NH4-NとNO3-N)の濃度 土壌への硫酸アンモニウムの添加量はNとして200 µg g-1
    図4 ソレゴレオン添加土壌(添加濃度 0、10、20、30、40、100µg g-1)を20°Cで60日間保持した後の無機態窒素(NH4-NとNO3-N)の濃度 土壌への硫酸アンモニウムの添加量はNとして200 µg g-1
所属

国際農研生産環境・畜産領域

分類

研究B

研究プロジェクト

[生物的硝化抑制]生物的硝化抑制能を利用した育種素材の開発と作付け体系への応用

プログラム名

資源環境管理

予算区分

交付金生物的硝化抑制

研究期間

2011〜2013年度(2011~2015年度)

研究担当者
  • Tesfamariam Tsehaye (生産環境・畜産領域)
  • 吉永 博巳 (生産環境・畜産領域)
  • DeshpandeSimon S.P. (国際半乾燥熱帯作物研究所)
  • Srinivasa Rao P. (国際半乾燥熱帯作物研究所)
  • K. L. Sahrawat (国際半乾燥熱帯作物研究所)
  • 安藤 康雄 (生産環境・畜産領域)
  • 中原 和彦 (生物資源・利用領域)
  • Hash C. T. (生産環境・畜産領域)
  • Subbarao Guntur Venkata (生産環境・畜産領域)
  • 発表論文等

    Tesfamariam, T. et al. (2014) Plant and Soil, 379: 325-335 https://doi.org/10.1007/s11104-014-2075-z

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