東南アジア肉牛反芻胃由来メタン排出推定式

関連プロジェクト
気候変動総合
要約

東南アジアにおける肉牛反芻胃由来メタン排出量は、乾物摂取量、飼料成分(中性デタージェント繊維)、体重を説明変量に用いた推定式により、現行推定方法よりも高精度で簡易に推定できる。

背景・ねらい

家畜の反芻胃は温室効果ガス(GHG)の重要な排出源であるため、その排出量の正確な把握が必要である。個体ごとのメタン(CH4)排出量の直接的な測定には多大な労力を要するため、飼料給与量等の簡易に測定可能な指標を用いて間接的に推定することが望ましい。現在、各国からの反芻胃由来CH4総排出の推定には、IPCCが推奨する総エネルギー摂取量(GEI)を基準としたCH4変換係数(Ym)が画一的に用いられているが、その根拠となるデータは欧米諸国の飼料組成及びウシ品種を用いて得られた値である。飼料組成や気候条件等が欧米諸国と大きく異なる東南アジアにおける推定には適さないため、当該地域のデータを根拠とした独自のCH4変換係数及び予測式等の整備が必要である。これまでにタイ・ベトナムにおいて国際農研が保有するメタン排出測定チャンバーを用いて得られたデータを基にその推定式を整備してきている(平成30年度国際農林水産業研究成果情報A01「東南アジアにおける肉牛からの消化管発酵由来メタン排出量の推定」)。本課題においては、これをグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA)*の枠組みを活用して発展させ、当該地域におけるCH4測定チャンバーによる既存のCH4排出量測定データ及び飼料給与量等のデータを収集し、これらを基に当該地域における反芻胃由来CH4排出の最適な推定式を構築する。

*GRA(Global Research Aliance): 農業分野の温室効果ガス排出削減等に関する研究ネットワーク

 

成果の内容・特徴

  1. GRA-LRG global network projectの研究の一環として、東南アジア諸国8ヶ国の研究者に対しCH4排出測定データ及び乾物摂取量や飼料組成データ等の保有状況を調査する。その結果、チャンバーによる測定データはタイ、ベトナム、インドネシアのみが保有する。データ選別の結果、398データをCH4排出量推定式の作出に用いる。また、参照データセットとして東アジア(日本及び中国)から1998年~2018年までに得られたデータ(総計1,101点)を用いる。
  2. 乾物摂取量を基に作成した推定式(表1-式①)について、現在東南アジア各国でインベントリ推定に用いられているIPCC由来推定式(GEIを基に作成)等と予測誤差(RMSPE)を比較すると、IPCC Tier 2 (2019)やGlobal Network Tier 2(グローバル・リサーチ・アライアンスの現行推定方法)の値よりも低いことから、正確性が高い(図1)。また、中性デタージェント繊維や体重を説明変量として加える場合(表1-式②、③)は、推定誤差はさらに小さくできる(図1)。
  3. 総データについて粗飼料給与率を3段階(全粗飼料: 119、高粗飼料: 163、低粗飼料: 116)にカテゴリー分けし、それぞれの推定式を作成することで、より正確な推定が可能となる(表2)。特に東南アジアにおいて多くみられる粗飼料多給(50-85%)のモデル式では、既存の推定式と比較して予測誤差が最小となる推定式となる。

 

成果の活用面・留意点

  1. 既存の手法(IPCC Tier 2等)と比較して精度の高い推定式として、現行の各国GHG排出インベントリにおいて活用することが可能である。
  2. 推定式作成に用いられたCH4排出量や飼料摂取量等のデータは一部の国(タイ・ベトナム・インドネシア)において実施された試験に限られており、東南アジア全体を代表しない可能性が残されていることに留意する必要がある。

 

具体的データ

  1. Figs

     

分類

行政

研究プロジェクト
プログラム名

環境

予算区分

交付金 » 第5期 » 環境プログラム » 気候変動総合

研究期間

2019~2021年度

研究担当者

前田 高輝 ( 生産環境・畜産領域 )

鈴木 知之 ( 農研機構 畜産研究部門 )

科研費研究者番号: 70391175

Tee Tuan Poy ( マレーシアプトラ大 )

Liang Juan Boo ( マレーシアプトラ大 )

ほか
発表論文等

Tee et al. (2022) Anim. Feed Sci. Technol. 294: 115474.
https://doi.org/10.1016/j.anifeedsci.2022.115474

日本語PDF

2022_A03_ja.pdf1.36 MB

English PDF

2022_A03_en.pdf882.59 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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