研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- 西ジャワ高原野菜生産で、入手の容易な馬糞堆肥施用により減収せずに化学肥料施用を半減できる(2015)
インドネシア西ジャワ州高原地帯の火山灰土壌地域の野菜生産では、馬糞堆肥を10 t/ha施用することで、収量を維持したまま化学肥料施用量を施肥基準の半量に節減できる。
- プログラムCDM形成手法を活用した森林資源減少対策のガイドライン(2015)
パラグアイでは森林資源の減少に対処するため、JIRCASが手掛けた先行植林CDM事業成果の他地域への適用を容易にする植林プログラムCDMの手法を活用したガイドラインを策定した。
- モンゴル草原で放牧されるヒツジの冬季採食量はUNDP値より20%以上高い(2015)
モンゴルの森林ステップおよびステップ地域の草原で放牧されるヒツジにおいて、リグニン法で求められる採食量は、同国で一般に用いられているUNDPによる値と比べて冬季に20%以上高い。よってこの時季には、草原で放牧可能な家畜頭数が少なく推定される。
- マーシャル諸島共和国淡水レンズ保全管理マニュアル(2015)
本マニュアルはマーシャル国において干ばつ時の過剰揚水により塩水が部分的に上昇したマジュロ環礁ローラ島の淡水レンズの水利用法を改善し、水資源管理担当の公的機関による保全管理体制のあり方を示している。持続的水利用法が当該国の政策に反映される。
- 根圏土壌pHの低下はソルガムでの生物的硝化抑制に関わる一つの因子である(2015)
インドのアルフィソル(低肥沃な赤黄色土の一種)圃場で栽培したソルガムの根圏土壌の硝化活性とpHはともに非根圏土壌よりも低下し、両者間には相関がある。また、土壌pHの人為的な低下にともなっても硝化活性が低下する。以上より、ソルガムでの生物的硝化抑制の一因子として根圏土壌pHの低下が考えられる。
- ソルガム根での生物的硝化抑制物質の分泌は転写レベルで制御されている(2015)
ソルガム根からの親水性(水溶性)硝化抑制物質の分泌は、根のまわりのアンモニウム(NH4+)の濃度が1.0 mMまでの範囲で濃度依存的に促進される。促進にはNH4+の同化が必要である。また、促進に関与する細胞膜H+-ATPアーゼの活性は遺伝子の転写レベルで制御されている。
- 氾濫低湿地で高位安定収量を示すイネ品種がある(2015)
白ボルタ川上流域(ガーナ)の氾濫低湿地における天水直播水稲の収量は、河川からの距離で大きく異なり、かつ年次間変動も大きい。このような環境下でAmankwatia、Bodia、Sakai(いずれもガーナ在来品種)、IRBL9-W[RL] (日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統)は安定して相対的に高収量を示す。
- アグロバクテリウム遺伝子組換え技術によるブラジル産ダイズの乾燥耐性の改良(2015)
低いコピー数で遺伝子を植物に導入することができるアグロバクテリウム遺伝子組換え技術をブラジルのダイズ品種で確立し、シロイヌナズナにおいて乾燥ストレス耐性に重要な役割を担っているAREB1転写因子の遺伝子をブラジルのダイズ品種に導入すると、温室条件下で乾燥耐性を示す。
- 長期の乾燥による葉の黄化防止に関わる遺伝子を発見(2015)
植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、乾燥ストレスを受けると葉に蓄積するが、シロイヌナズナの環境ストレス応答に関わる7つのSNAC-A遺伝子は、ABAによって誘導される黄化関連遺伝子の発現を調節しており、長期の乾燥による葉の黄化において重要な役割をもつ。
- ダイズ耐塩性遺伝子Ncl の単離とその利用による耐塩性の向上(2015)
ブラジルのダイズ品種FT-Abyaraから単離された耐塩性遺伝子(Ncl )は、植物体地上部のNa+、K+、Cl−の濃度を同時に抑制する。DNAマーカー選抜や形質転換の育種手法によってNclを導入した既存のダイズ品種は耐塩性が向上する。塩害圃場においてNcl 保有系統は高い子実収量を維持できる。
- ヤム遺伝資源多様性解析のためのSSRマーカーの開発(2015)
ヤマノイモ (Dioscorea) 属作物の一種であるD. cayenensisのゲノムDNAより探索した単純反復配列 (SSR) 領域を増幅する90個のマーカーを作成した。これらのマーカーはアフリカで栽培されている6種のヤム遺伝資源において高い汎用性を示し、ヤムの主要な種の系統関係や多様性の評価に適したマーカーである。
- ササゲ遺伝資源の子実品質関連形質の評価とデータベースの公開(2015)
ササゲ育種や研究への遺伝資源の利用の活性化のため、ササゲ遺伝資源の子実品質関連形質(計27形質)について、各形質の多様性の幅や特徴的な形質を有する遺伝資源を明らかにし、検索機能付きデータベースを公開した。
- 機械収穫効率が高いエリアンサスの栄養繁殖品種「JEC1」の育成(2015)
エリアンサスの栄養繁殖品種「JEC1」は、種子で増殖する既存品種「JES1」と同等の乾物収量を示し、1株あたりの茎数と乾物重では個体間の均一性が「JES1」より高い。そのため、「JEC1」の機械収穫効率は「JES1」より高く、バイオマス原料の効率的な生産が可能である。
- イネのリン利用効率に関する新規遺伝子座の同定(2015)
吸収リン量に対する乾物生産量を示す一つの重要な指標であるリン利用効率(PUE)に関する量的形質遺伝子座(QTL)は、イネゲノムの第1および11染色体上にある。
- 日本のイネいもち病菌レースと品種の抵抗性変異との相互関係(2015)
日本のイネいもち病菌レースは地域により異なるタイプが分布している。これはその地域で栽培されてきたイネ品種の抵抗性遺伝子との関係で説明できる。
- サトウキビ野生種を利用しタイで共同育成したサトウキビ新品種(2015)
新品種としてタイで登録されたサトウキビ3品種「TPJ03-452」、「TPJ04-713」、「TPJ04-768」を、サトウキビ野生種との種間交雑を利用して育成した。「TPJ03-452」と「TPJ04-768」は、砂糖収量は普及品種と同程度で繊維収量は多い。「TPJ04-768」は、厳しい乾季を持つ東北タイでも株出し栽培における収量減が少ないため、多回株出し栽培が期待される。
- サトウキビ白葉病を媒介するヨコバイ類の移動分散能(2015)
サトウキビ白葉病の媒介虫であるタイワンマダラヨコバイMatsumuratettix hiroglyphicusおよびヤマトヨコバイYamatotettix flavovittatusの試験期間(20日間)を通した平均移動距離は、それぞれ162.1m、387.5mであり、このデータは圃場での健全種茎生産技術開発に利用できる。
- ラオス中部の田越し灌漑水田では水不足による移植の遅れが水稲減収をもたらす(2015)
ラオス中部の中山間地農村において、田越し灌漑水田の雨季水稲の減収は、主に水不足による移植時期の遅れにより生じている。収量低下を回避するためには、早期の田面湛水を促し、7月中に移植することが望ましい。
- ラオスの養魚餌料として有望なアメリカミズアブの周年採卵技術(2015)
インドシナ一帯に広く分布するアメリカミズアブHermetia illucensは、高栄養な養魚餌料として有望なことから、周年採卵が可能な成虫飼育および採卵法を明らかにした。これにより効率的な幼虫生産が可能となり、ラオス農村部の小規模農家が養魚に利用できる。
- ラオス中部の薪利用は、特定の樹種の資源の減少に影響している。(2015)
ラオス中部の調査対象村の主要な燃料は薪であり、消費量は一世帯当たり年間約1.94トンに達する。また、消費量を村全体で見ると約272トン/年に上り、森林面積に換算すると約16haに相当する。農家は薪として2種類の樹種を好んで採取しており、これらの樹種の減少の原因となっている。