研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- スーダンサバンナでは地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を測定できる(2018)
地中レーダーで鉄石固結層の出現深度を精度良く測定できることを世界で初めて明らかにした。スーダンサバンナでは鉄石固結層の出現深度で土壌型や土地生産力を推定できるため、今後地中レーダーで簡単・迅速に土壌型および土地生産力の評価が可能になる。
- スーダンサバンナでは間作を除いた保全農業で十分土壌侵食を抑制できる(2018)
スーダンサバンナでは最小耕起と作物残渣マルチの2要素からなる保全農業で土壌侵食を抑制でき、「マメ科作物との間作」という要素を加えても更なる土壌侵食抑制効果は得られない。
- 畝間灌漑を改良した簡易サージフロー灌漑法は浸透損失を抑制し節水できる(2018)
畝間への給水を1日間隔で2回に分けて行う簡易サージフロー灌漑法は、通常の畝間灌漑と比べ、灌漑中に生じる浸透損失を削減できる。この灌漑法は、新たな投資や大幅な労力の増加を伴わずに、圃場への給水量を19~22%節減できる。
- 環礁島の地下淡水レンズの汚染源対策は地下水の滞留時間にも配慮すべきである(2018)
マーシャル諸島共和国では、発生源から環境中に排出される窒素負荷量は豚舎において最大である。大規模な豚舎に加え、地下水の滞留時間が長い島の外洋側や南側から汚染源対策を導入することが効果的である。
- 支柱栽培したヤムイモ地上部バイオマスの非破壊推定(2018)
支柱栽培したヤムイモの地上部バイオマスを非破壊的に推定する簡便・安価な手法を開発した。これにより、ヤムイモの生育調査を大幅に省力化することができるだけでなく、農家圃場における生育診断指標として利用できる。
- アフリカ小農支援のための農業経営計画モデル(2018)
アフリカ小農の技術普及や生計向上を目的として、小農の技術水準、生計戦略などを反映した農業経営計画モデルを構築し、所得を最大化する作付体系や技術導入規模を特定する。
- ゲノムワイド関連解析によるイネの側根形成に関与する遺伝子座の特定(2018)
ゲノムワイド関連解析により検出された遺伝子座qTIPS-11はイネ生育初期の側根形成に関与する。推定される原因遺伝子はグリコシル加水分解酵素遺伝子である。この機能型対立遺伝子は、より多くの側根を持つ直播適性に優れたインド型イネ品種の開発に利用できる。
- ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群(2018)
栽培ダイズ品種の遺伝的背景を持ち、染色体の一部のみが野生ダイズに置換された>染色体断片置換系統群を開発し、それらの系統を用いて種子重や開花期QTLのゲノム上の座乗領域を明らかにできる。開発した野生ダイズの染色体断片置換系統は重要形質の遺伝解析に利用できる。
- 人工気象器を用いたダイズの省スペース・低コスト高速世代促進技術(2018)
閉鎖環境栽培で昼間に不足しがちなCO2を補充できる人工気象器を用い、未熟種子を利用して、適切な光・温度条件のもとでダイズを栽培することにより、年間5世代の交配を伴う世代促進が可能である。
- サトウキビの新しい育種素材となるサトウキビとエリアンサスの属間雑種の作出(2018)
サトウキビ普及品種とその近縁遺伝資源エリアンサスを交配して作出した属間雑種は、エリアンサスの染色体数が系統毎に異なり、農業特性に多様な変異がある。サトウキビ育種での遺伝的基盤拡大や新規特性の導入に向けた新しい育種素材として利用できる。
- アフリカにおけるサバクトビバッタの時空間的分布パターン(2018)
アフリカで大発生するサバクトビバッタの幼虫および成虫は、夜間は大型の植物上に群がり不活発になる。成虫は温度依存的に逃避行動を変化させ、低温時には不活発になり逃避能力が低下する。この行動特性を応用することで殺虫剤の使用量を軽減できる可能性がある。
- 穂ばらみ期の地上分光計測データから収穫前にコメの収量が予測できる(2018)
穂ばらみ期の水稲群落上で分光計測を行うことで、収穫1カ月前に収量を予測することが可能である。さらに早い生育ステージ(幼穂形成期)でも低い精度で収量を予測できるが、開花後の成熟期に入ると予測は困難になる。収量の推定には、分光データのうち窒素とバイオマスに関連したレッドエッジ(700–760 nm)と近赤外(810–820 nm)の波長が重要である。
- 新規アルカリ好熱嫌気性菌Herbivorax saccincola A7はバイオマス分解能に優れる(2018)
リグノセルロース系バイオマスを原料とする堆肥から分離した新種の好熱嫌気性細菌H. saccincola A7はアルカリ環境を好み、セルロースとヘミセルロースを分解できる。本菌は、近縁菌には無いキシロースやキシロオリゴ糖の代謝酵素を持つことから、リグノセルロース系バイオマスの効率分解に適している。
- キノボリウオの水田養魚は種苗の低密度放流により無給餌でも成立する(2018)
ラオス山村域では、農民の動物タンパク質摂取不足を改善するために養魚振興が求められている。山村域の小規模農家が実施可能な水田養魚において、在来種であるキノボリウオを用いた場合、養魚種苗の低密度放流により無給餌でも高水準の生産性が見込まれ、さらに給餌することで生産性は向上する。
- 養魚ため池の貯留水を雨季水稲と乾季畑作に利用することで収益増が期待される(2018)
ラオス中部の中山間農村では、養魚用ため池の貯留水の活用により、雨季初期に水が不足する圃場の初期灌漑と乾季には畑作を行うための補給灌漑が可能になる。養魚に必要な最低水量を維持することで、ため池を養魚と灌漑に併用できる。また4月上旬に貯留水を抜く慣行法よりも、乾季畑作の灌漑に合わせて2月に水を抜く方が利益の増加が見込まれる。
- 稲わら堆肥連用はメコンデルタ水田に増収をもたらし、炭素隔離に貢献する(2017)
ベトナム・メコンデルタの水田における長期連用試験より、ヘクタールあたり6 tの稲わら堆肥の施用は、無施用に比べ、水稲収量を乾期作で0.75~0.87 t、雨期作で0.91~0.96 t高め、土壌炭素量を年間356~401 kg ha-1 year-1増加させる。
- フィリピンのサトウキビ単作地域における地下水への窒素負荷量の推定(2017)
地下水の窒素汚染が懸念されるフィリピンの代表的なサトウキビ栽培地域での窒素負荷量を推定した。地表面への窒素の負荷源として、肥料・家畜排泄物・人排泄物・降雨があるが、地下への潜在的な窒素負荷の多くは、肥料由来の窒素である。
- 塩害軽減のための低コスト浅層暗渠排水技術マニュアル(2017)
乾燥・半乾燥地域の灌漑農地における塩害軽減対策のための技術マニュアルである。塩類集積の要因と対策を示し、リーチング効果促進のため圃場の排水性の改善を図る低コスト型浅層暗渠排水技術を解説している。マニュアルは政府関係者、水消費者組合、農家が利用する。
- ソルガム根での難水溶性と水溶性の硝化抑制物質の分泌機構には差異がある(2017)
ソルガム根から分泌される水溶性硝化抑制物質の分泌は低い根圏pHで促進され、細胞膜のプロトンATPアーゼの活性が関与する。一方、ソルゴレオンが抑制活性の多くを占める難水溶性硝化抑制物質の分泌は、根圏pHの影響を受けにくい。
- 西アフリカ産イネ遺伝資源におけるいもち病抵抗性の変異(2017)
西アフリカ産遺伝資源のうち、アジアイネの栽培種 (Oryza sativa L.) は、いもち病に対して広い変異を有し、多くの品種が高い抵抗性を示すが、アフリカイネの栽培種 (O. glaberrima Steud.) は中程度でO. sativaに比べ低い。