国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

アフリカにおけるサバクトビバッタの時空間的分布パターン

要約

アフリカで大発生するサバクトビバッタの幼虫および成虫は、夜間は大型の植物上に群がり不活発になる。成虫は温度依存的に逃避行動を変化させ、低温時には不活発になり逃避能力が低下する。この行動特性を応用することで殺虫剤の使用量を軽減できる可能性がある。

背景・ねらい

サバクトビバッタ(Schistocerca gregaria)は、普段は単独性の孤独相と呼ばれる状態で点在して生活しているが、生息密度が高まると群れで生活する群生相に相変異する。群生相化した集団は長距離移動し、アフリカで農作物に深刻な被害を及ぼしている。本バッタに対しては、殺虫剤の直接散布が主な防除技術として活用されている。不活発な時間帯をターゲットにすることで効率よく防除できると考えられるが、生息地において、どこでどのように活動しているかは詳しくわかっていないため、効率よく殺虫剤を散布できていないという問題がある。発生地であるモーリタニアにおいて、野外における群生相の幼虫と成虫それぞれの時空間的分布パターンを理解することにより、効率の良い殺虫剤の散布方法の開発が期待できる。

成果の内容・特徴

  1. 幼虫は、日中は集団で移動しているが、日暮れ前にいくつかの集団に分かれ、一番大型の植物に最も多く群がり(図1、2)、移動せずに一夜を過ごす。
  2. 成虫は、日中は集団形成し、飛翔と摂食を繰り返しながら移動しているが、夜間は大型の植物上に群がる(図3)。
  3. 成虫は気温と留まっている植物のタイプに応じて観察者が成虫に接近した時の逃避行動を変化させる(図4)。高温時(23.4~26.5℃)には、大型の木本植物(> 2m)でも中型の草むら(< 1.5m)でも飛翔して逃げる。早朝の気温が低温時(7.9~14.0℃)には、留まっている植物が大型の木本植物の場合はその場に留まり、中型の草むらの場合は、地面に落下し、速やかに植物の中に逃げ込む。
  4. 以上より、幼虫と成虫は共に夜間は大型の植物に群がり、成虫の逃避行動は温度依存的で、低温時に逃避能力は低下する。

成果の活用面・留意点

  1. 現状では、殺虫剤の散布はバッタが広範囲に分布し、活発に動く日中に行われているが、バッタが大型の植物上で集団を形成し、不活発になる日暮れから明朝にかけて防除活動を行うことで殺虫剤の使用量を削減できる可能性がある。
  2. バッタのもつ、大型の植物に群がる習性は、人為的な誘引技術を開発する際に活用できる。
  3. 幼虫も温度依存的に逃避行動を変化させるかを調査する必要がある。
  4. この情報は木本植物が点在する植生地域で活用できる。

具体的データ

  1. 図1 幼虫集団による生息場所選択
    図1 幼虫集団による生息場所選択
    様々な大きさの植物が生えているが、幼虫は日暮れ前に、いくつかの集団に分かれ、一番大型の植物(矢印)に最も多く群がる。

  2. 図2 夜間に幼虫が群がった植物のサイズ
    図2 夜間に幼虫が群がった植物のサイズ
    異なる10の幼虫集団を観察した。一つの集団の中で、最も多く幼虫が群がった植物(黒丸)から半径20m以内の他の個々の植物(白丸)のサイズ(幅×奥行×高さ)を測定した。
    図中の数字は観察した植物の数。

  3. 図3 成虫集団による生息場所選択
    図3 成虫集団による生息場所選択
    夜間は幼虫と同様に大型の木本植物上に集団形成する。

  4. 図4 成虫の逃避行動に及ぼす植物と気温の影響
    図4 成虫の逃避行動に及ぼす植物と気温の影響
    図中の数字は観察したバッタの数。

所属

国際農研生産環境・畜産領域

分類

研究

国名
  • モーリタニア
  • 研究プロジェクト

    国境を越えて発生する病害虫に対する防除技術の開発(病害虫防除)

    プログラム名

    農産物安定生産

    予算区分

    交付金病害虫防除

    研究期間

    2018年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • 前野 浩太郎 (生産環境・畜産領域)
    • 見える化ID: 
      3484
  • Ould Mohamed Sid'Ahmed (モーリタニア国立バッタ防除センター)
  • 発表論文等

    Maeno KO and Ould Baba Ebbe MA (2018) Insects, 9(3):1-13 DOI: 10.3390/insects9030099

    Maeno KO et al. (2018) Journal of Arid Environments, 158:47-50 DOI: 10.1016/j.jaridenv.2018.07.005

    日本語PDF
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