研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- 植物の高温特異的合成プロモーターによる遺伝子発現法(2016)
植物ゲノムの網羅的な比較解析を行い、高温特異的に働くプロモーターを合成した。このプロモーターは、気候変動による温暖化に対応した農作物や、付加価値が高い農作物の開発への利用が期待できる。
- キヌアの標準自殖系統とゲノム配列(2016)
分子レベルでの解析に適した遺伝的に均質なキヌアの標準自殖系統を開発し、キヌアのゲノム(生物の設計図)配列を世界に先駆けて解読した。これらの成果は、優れた環境適応性と栄養特性をもつ作物の開発に貢献するものと期待される。
- 葉表面の気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化する転写因子(2016)
植物の葉緑体の発達を制御する転写因子(GLK1, GLK2)の機能を植物内で抑制すると、大気汚染物質であるオゾンに対する耐性が著しく向上する。GLK1, GLK2転写因子は気孔の開閉に関わる遺伝子の発現に関与し、その機能抑制植物では気孔が閉じ気味になる。
- イネ複数品種におけるゲノム編集系および効率的な変異系統獲得手法(2016)
未熟胚を用いたアグロバクテリウム法は、主要イネ品種へのCRISPR/Cas9システム導入によるゲノム編集に有効である。Cas9遺伝子が除去された形質転換後代の個体を選抜することで、キメラ性および分離異常を示さない変異系統を効率的かつ確実に作出できる。
- ダイズさび病に高度の抵抗性を示す3種の判別品種は抵抗性遺伝子Rpp1-b をもつ(2016)
ダイズさび病に抵抗性を示す4種の判別品種を含む7品種は、さび病抵抗性遺伝子Rpp1、Rpp1-b、Rpp2、Rpp3の1つを保有する。高度の抵抗性を示す3種の判別品種は抵抗性遺伝子Rpp1-bをもつ。DNAマーカーを利用してRpp1-bなどの抵抗性遺伝子を感受性品種に導入できる。
- インドシナ半島の発酵型米麺のタンパク質分解と特徴的なテクスチャの関連性(2016)
インドシナ半島で生産、消費される発酵型米麺では、原料米のコメ貯蔵タンパク質の一部が選択的に分解を受けることで、伸展性に優れたテクスチャとなる。発酵させない場合、麺のゲルの破断点となる構造がタンパク質により形成されるため、伸展性に乏しい。
- キャッサバパルプはC. butyricum の1,3-プロパンジオール生産能を高める(2016)
嫌気性細菌Clostridium butyricumを用いたグリセロールからの1,3-プロパンジオール(1,3-PD)生産において、培養時にキャッサバパルプを少量添加すると、1,3-PD生産能を飛躍的に高めることができる。1,3-PD生産能を高めると共にキャッサバパルプの新たな活用方法となる。
- ラオスの重要な食用魚パ・コーの生態的情報に基づく資源保全管理(2016)
西アジアから東南アジア一帯に広く分布し、ラオスにおける重要な食用魚であるタイワンドジョウ科Channa striata(現地名パ・コー)は、近年小型化や資源の減少が危惧されており、資源管理が必要である。本種は体長20 cm以上で性成熟し、4月前後に卵巣が成熟することから、この時期に体長20 cm(2歳)以上の個体を漁獲規制することが資源保全に効果的である。
- 健全な種子生産を維持するためのフタバガキ科林業樹種の択伐基準の改善(2016)
フタバガキ科4林業樹種について、種子の父性解析から得られた花粉散布・開花量のパラメータを用い、択伐後の他家受粉の減少量をシミュレーションにより推定した。その結果によれば、材密度が高い非早生樹種では他家受粉が大きく減少し健全な交配が維持できないため、択伐の伐採基準を現行よりも厳しくすることが望ましい。
- タイ東北部の砂質土壌における炭の添加は、チークの成長を向上させる(2016)
タイ東北部の砂質土壌に炭を添加することにより、保水性が改良されるばかりでなくリンの吸収が促進され、チーク苗の根の成長が促進される。
- ウシエビのイエローヘッドウイルス(YHV)は共食いにより感染拡大する(2016)
室内実験により、イエローヘッドウイルス(YHV)に感染した個体を共食いしたウシエビが同ウイルスに感染し、被害が拡大することを明らかにした。共食いによる感染リスクは水を介してのそれよりも大きいことから、養殖現場においては、共食いの機会を減らす対策が重要である。
- アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)
アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。
- 酸味が少なく外観良好なパッションフルーツ新品種「サニーシャイン」(2016)
パッションフルーツの新品種「サニーシャイン」は、果皮につやがあり外観が良好な上、高温期でも着色不良果の発生が少ない。また、収穫直後でも果実酸度が低く、食べやすい生食用品種として普及が期待できる。
- 西ジャワ高原野菜生産で、入手の容易な馬糞堆肥施用により減収せずに化学肥料施用を半減できる(2015)
インドネシア西ジャワ州高原地帯の火山灰土壌地域の野菜生産では、馬糞堆肥を10 t/ha施用することで、収量を維持したまま化学肥料施用量を施肥基準の半量に節減できる。
- プログラムCDM形成手法を活用した森林資源減少対策のガイドライン(2015)
パラグアイでは森林資源の減少に対処するため、JIRCASが手掛けた先行植林CDM事業成果の他地域への適用を容易にする植林プログラムCDMの手法を活用したガイドラインを策定した。
- モンゴル草原で放牧されるヒツジの冬季採食量はUNDP値より20%以上高い(2015)
モンゴルの森林ステップおよびステップ地域の草原で放牧されるヒツジにおいて、リグニン法で求められる採食量は、同国で一般に用いられているUNDPによる値と比べて冬季に20%以上高い。よってこの時季には、草原で放牧可能な家畜頭数が少なく推定される。
- マーシャル諸島共和国淡水レンズ保全管理マニュアル(2015)
本マニュアルはマーシャル国において干ばつ時の過剰揚水により塩水が部分的に上昇したマジュロ環礁ローラ島の淡水レンズの水利用法を改善し、水資源管理担当の公的機関による保全管理体制のあり方を示している。持続的水利用法が当該国の政策に反映される。
- 根圏土壌pHの低下はソルガムでの生物的硝化抑制に関わる一つの因子である(2015)
インドのアルフィソル(低肥沃な赤黄色土の一種)圃場で栽培したソルガムの根圏土壌の硝化活性とpHはともに非根圏土壌よりも低下し、両者間には相関がある。また、土壌pHの人為的な低下にともなっても硝化活性が低下する。以上より、ソルガムでの生物的硝化抑制の一因子として根圏土壌pHの低下が考えられる。
- ソルガム根での生物的硝化抑制物質の分泌は転写レベルで制御されている(2015)
ソルガム根からの親水性(水溶性)硝化抑制物質の分泌は、根のまわりのアンモニウム(NH4+)の濃度が1.0 mMまでの範囲で濃度依存的に促進される。促進にはNH4+の同化が必要である。また、促進に関与する細胞膜H+-ATPアーゼの活性は遺伝子の転写レベルで制御されている。
- 氾濫低湿地で高位安定収量を示すイネ品種がある(2015)
白ボルタ川上流域(ガーナ)の氾濫低湿地における天水直播水稲の収量は、河川からの距離で大きく異なり、かつ年次間変動も大きい。このような環境下でAmankwatia、Bodia、Sakai(いずれもガーナ在来品種)、IRBL9-W[RL] (日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統)は安定して相対的に高収量を示す。