国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

プログラムCDM形成手法を活用した森林資源減少対策のガイドライン

要約

パラグアイでは森林資源の減少に対処するため、JIRCASが手掛けた先行植林CDM事業成果の他地域への適用を容易にする植林プログラムCDMの手法を活用したガイドラインを策定した。

背景・ねらい

パラグアイでは草地を含む大規模な農地開発や燃料向けの木材需要の増加により、年間約18万haの森林面積が減少している。また、パラグアイにおけるCO2総排出量の約95%は森林の農地等への転換に由来するものであり、森林資源の保全・回復は国全体で取組むべき喫緊の課題である。JIRCASは、パラグアイにおいて最初のクリーン開発メカニズム(CDM)事業を手掛け、この事業を通じて植林の促進を図った。この成果を他地域に適用するため、CDMの仕組みのひとつであるプログラムCDMに着目し、パラグアイ行政機関とともに、より広域の植林プログラムCDMの形成に取組んだ。プログラムCDMは、プログラム期間中に無制限に同一技術手法を用いた個別CDM活動を追加できる。ここでは行政職員向けのガイドラインとして提示する。

成果の内容・特徴

  1. 先行植林CDM事業の広域的普及を図るため、これまでに国連登録実績のない植林分野のプログラムCDMの形成に取組み、形成に不可欠なプロジェクト設計書の作成やパラグアイ側のプログラム管理組織の構築、植栽された樹木の温室効果ガス(GHG)吸収量の算定等の手法を示した(表1)。
  2. 小規模農家が適切かつ効率的に植林活動を行うために、従来のポット苗による植林からチューブ苗によるものに変更して苗木の軽量化を図り、これを基にした、より効率的な苗木生産、苗木配布、更には農家が適切に植栽を行うための農家研修、農家による植栽といった一連の植林活動工程を一体化した植林促進手法を構築し、その手法を明示した(図1)。
  3. 小規模農家の生計改善及び森林資源の回復を踏まえた対応策として、施業体系の技術的側面から胸高直径の実測値から樹高を推定する相対成長式を作成する等してユーカリ植林の収益性を評価し、収益性が確保できる育林指標を示した(図2)。

成果の活用面・留意点

  1. 国家森林院職員により3つの農家グループで上記の植林促進手法が活用され、実施可能であることが実証済みであるように、パラグアイ行政職員による個別植林CDM事業や類似の植林事業の形成・実施に活用することが可能である。
  2. 途上国のGHG排出削減を促進させる『途上国による適切な緩和行動(NAMA)』といった枠組みや、COP21で国連への提出及び対策をとることが義務付けられた自国の排出削減目標の策定に活用可能と考えられる。NAMAは、策定にあたりGHG排出削減量の正確性や信頼性を確保する一連のプロセス(測定、報告及び検証)に従う必要があり、国連による厳格なルールに沿ったCDM方法論を基にした本ガイドラインは適切な水準を満たしている。
  3. スペイン語、ポルトガル語及び英語で作成しており、近隣諸国等への適用が可能である。
  4. JIRCASホームページからダウンロードできる。
    http://www.jircas.affrc.go.jp/english/manual/manual_index.html

具体的データ

  1. 表1 ガイドラインの章構成と主な内容

    序章

     

    背景及び目的、取組の概要、ガイドラインの構成と内容、利用

    1

    植林プログラムCDMの概要

    プログラムCDMの概要、CDMの流れ、プログラムCDMの調整及び管理主体の役割、プロジェクト設計書の構成及び記載内容

    2

    植林プログラムCDMの形成の試み

    適用するCDMのタイプ及び方法論、プロジェクト境界の選定、プログラム活動及び個別CDM事業の形成方法(プログラム管理組織の構築、植林促進手法の計画・実施等)

    第3

    純人為的GHG吸収量の算定方法

    適用する小規模植林CDM方法論(AR-AMS0007Ver03.1)、純人為的GHG吸収量の算定手順及び算定例

    4

    農家林業経営の収益性分析方法

    農家林業の収益性の分析手順及び算定事例

  2. 図1 植林促進手法
  3. 図2 収益性を確保するためのユーカリ育林目標値及び内部収益率等
    図2 収益性を確保するためのユーカリ育林目標値及び内部収益率等