ラオス中部の薪利用は、特定の樹種の資源の減少に影響している。
ラオス中部の調査対象村の主要な燃料は薪であり、消費量は一世帯当たり年間約1.94トンに達する。また、消費量を村全体で見ると約272トン/年に上り、森林面積に換算すると約16haに相当する。農家は薪として2種類の樹種を好んで採取しており、これらの樹種の減少の原因となっている。
背景・ねらい
ラオスの農家は森林から非木材林産物(以下、NTFPs:Non-timber forest products)を採取して生活しているが、主な燃料である薪も森林から採取している。ラオスの全エネルギー消費量の約7割が薪・炭であり、その5割以上が家庭で消費されている。そのため薪の利用は、森林減少の原因の一つとしてしばしば議論の対象となる。そこで農家の薪利用について採取場所、採取地の植生、利用樹種、利用方法及び消費量を調査し、森林資源量に換算することで、森林への影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ビエンチャン県の調査対象村における薪の採取地は村中心部から30分~1時間の距離にある。農家は木材伐採が許可されている丘陵地を中心に採取し、一回の採取に3〜4時間の時間を要する。薪は焼畑後の焼け残りの樹木の他、生木が伐採されている(図1)。インタビューの結果、近年、薪採取地が遠くなっていることを農家は認識している。
- 薪は主に調理用と家畜(ブタ、鶏)の飼料調整用の燃料として用いられている。世帯ごとの薪使用量の差は小さく、平均すると一世帯当たり年間約1.94トン(絶乾重量)である。村全体(140世帯)の薪の消費量は年間約272トンに達する。この量は、薪採取地(休閑5年目)の植生調査結果と焼畑休閑林のバイオマス推定式から約16 haの森林のバイオマス量に相当する。同村における薪採取可能な面積は約800haあり、樹種を問わなければ薪量は十分に余裕がある。
成果の活用面・留意点
- タケを含む約50種類の樹木が薪として利用され、その内、Cratoxylum sp.(オトギリソウ科、現地名 マイテューナーム)及び Peltphorum dasyrachis(マメ科、現地名 マイサファン)と、これら2種類が多く占めている(図2)。農家は火力の強さと火持ちの良さから、これらの樹種を好んで利用している。Cratoxylum sp.と P. dasyrachisの賦存量は、薪採取地の植生調査結果、それぞれ約0.12 t / ha及び0.28t/ha(共に25本/ha)程度である。Cratoxylum sp.と P. dasyrachisの選択的な採取は、賦存量と消費量の関係から、持続性が失われていると考えられ、これらの樹種の減少と伐採禁止地域への利用拡大が懸念される。
- REDD+をはじめとする森林分野のプロジェクトで、森林からの薪の利用量を検討する上での基礎的な資料となる。本情報の薪消費量から森林面積を推定する場合は、森林植生は地域や休閑年数で変わるため、適用する地域の植生調査が必要となる。
- 薪の採取労働時間の軽減、特定樹種の資源減少の抑制を解決する方法として、村の近傍に薪炭として需要が高い2樹種を植栽した公共林(コミュニティフォレスト)の設置が提案できる。特にCratoxylum属の一部は黒炭より価値の高い白炭化できるなど、高付加価値化が期待でき、労働時間だけでなく農家の生活改善につながると考えられる。
具体的データ
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図1 ビエンチャン県調査対象村の薪採取位置
赤破線は調査対象農家により示された採取地。赤点は実際の2013年の採取地。
等高線は標高20m毎に主曲線、かつ100m毎に計曲線を示した。 -
図2 村人に好まれる薪炭材(左:Cratoxylum sp.、右 :P. dasyrachis)
- Affiliation
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国際農研 林業領域
国際農研 農村開発領域
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » インドシナ農山村
- 研究期間
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2015年度(2011-2015年度)
- 研究担当者
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木村 健一郎 ( 農村開発領域 )
米田 令仁 ( 林業領域 )
科研費研究者番号: 00435588Khamphumi Bounpasakxay ( ラオス国立農林研究所森林研究センター )
Xayalath Singkone ( ラオス国立農林研究所森林研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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木村健一郎ら(2015)環境情報科学論文集29:263-266
- 日本語PDF
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- English PDF
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- ポスターPDF
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