国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

西ジャワ高原野菜生産で、入手の容易な馬糞堆肥施用により減収せずに化学肥料施用を半減できる

要約

インドネシア西ジャワ州高原地帯の火山灰土壌地域の野菜生産では、馬糞堆肥を10 t/ha施用することで、収量を維持したまま化学肥料施用量を施肥基準の半量に節減できる。

背景・ねらい

火山灰土壌地域に位置するインドネシアの西ジャワ州高原地帯は温帯野菜の代表的な生産地である。生産の拡大にともない、牛糞や鶏糞を原料とする堆肥の供給は十分でなく、化学肥料の過剰な施用が問題となっている。他方、西ジャワ州では2014年時点で約1.4万頭の馬が飼養されているが、現在馬糞の利用はほとんど行われていない。
このため、同地域で入手可能だが、農業利用が進んでいない馬糞を原料とする堆肥を施用し、作物収量に影響を与えることなく化学肥料施用を節減する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  1. 馬糞を原料とし、切り返しを行いながら4週間発酵させた馬糞堆肥(図1)は、牛糞堆肥と同水準である約0.7%の窒素、牛糞堆肥よりも高い約0.8%のリン酸を含有する。また、C/N比が9程度と牛糞堆肥に比べ低く、土壌中での分解が比較的容易である(表1)。
  2. インドネシア野菜研究所(西ジャワ州西バンドン県)の試験圃場で、馬糞堆肥を1作当たり10 t/ha施用すると、化学肥料を施肥基準(113 kg N/ha, 96 kg P2O5/ha, 120 kg K2O/ha)の半量に節減しても、収量への影響はない(図2)。トマトの収量は低下するが、統計的に有意な差ではない。
  3. インドネシア野菜研究所周辺の農村で、堆肥施用による化学肥料節減技術に関する農家説明会に参加し、現地語(インドネシア語)で作成された技術を解説するリーフレット(図3)を用いた説明を受けた農家の多く(参加者30名中19名)は、化学肥料節減技術に対する関心を示している。本技術が、地域の野菜生産農家に受け入れられる可能性は高い。

成果の活用面・留意点

  1. この技術は現地の未利用資材を用いるもので、化学肥料の施用量を減らしたいと考えている多くの野菜農家が使用できる。
  2. 飼養頭数から推計した西ジャワ州西バンドン県における馬糞発生量は、本技術を同県の全キャベツ栽培面積に導入した場合に必要な馬糞の量を充足できる。
  3. 西ジャワ州高原地帯では、現在も馬が日常の交通手段の一つとして利用されているが、自動車の利用が一層進み地域における馬の利用が減少した場合、将来は馬糞の入手が困難となる可能性がある。

具体的データ

  1. 馬糞堆肥の製造過程
    図1 馬糞堆肥の製造過程
    馬糞(写真左)を竹製の枠内に堆積して発酵させる(写真右)。(写真提供:インドネシア土壌研究所)
  2. 表1 馬糞堆肥の成分含有量と牛糞堆肥との比較(現物当たりの成分含有率、%)

    表1 馬糞堆肥の成分含有量と牛糞堆肥との比較(現物当たりの成分含有率、%)
    *1 片峯ら(2000)
    *2 馬糞堆肥は有機炭素、牛糞堆肥は全炭素
  3. 試験圃場における化学肥料標準施用区-化学肥料半量区の作物収量の比較
    図2 試験圃場における化学肥料標準施用区-化学肥料半量区の作物収量の比較
    堆肥10t/ha施用、標準耕起、3反復の平均値、エラーバーは標準誤差。キャベツ及びトマトは2011年雨期作、サヤインゲンは2012年雨期作、トウモロコシは2012年乾期作
  4. 現地語で作成した技術解説リーフレット(左下)を読む農家説明会参加者
    図3 現地語で作成した技術解説リーフレット(左下)を読む農家説明会参加者
    URL: http://www.jircas.affrc.go.jp/english/manual/horse_manure/horse_manure.pdf
所属

国際農研研究戦略室

分類

行政B

国名
  • インドネシア
  • プログラム名

    資源環境管理

    予算区分

    交付金気候変動対応

    研究期間

    2015年度(2011-2015年度)

    研究担当者
  • 杉野 智英 (研究戦略室)
  • Sumarini Nani (インドネシア野菜研究所)
  • Suwandi (インドネシア野菜研究所)
  • Rini Rosliani (インドネシア野菜研究所)
  • Diah Setyorini (インドネシア土壌研究所)
  • Wiwik Hartatik (インドネシア土壌研究所)
  • Rasti Saraswati (インドネシア土壌研究所)
  • 発表論文等

    Sugino, T. et al. (2013) Proceedings of SEAVEG2012: 168-175

    Sugino, T. et al. (2015) Proceedings of SEAVEG2014: 191-198

    日本語PDF
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  • English PDF
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