研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- オイルパーム樹液のpH調整で乳酸発酵が改善する(2017)
オイルパーム幹から得られる樹液は、糖分が高く微生物にとって極めて有望な天然培地となるが、乳酸発酵において発酵能低下が認められる。樹液を弱アルカリ性に調整することで、不溶性沈殿を形成・除去できるとともに、微生物生育阻害をもたらす芳香族化合物が減少するため、樹液成分が改質され発酵阻害を防ぐことができる。
- 開花遺伝子の発現動態から東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」現象を予測する(2017)
東南アジア熱帯雨林の主要林冠構成樹種であるフタバガキ科樹種は、一定の乾燥かつ低温の気象条件が9~11週間続くと一斉開花する。環境要因、開花遺伝子の発現、一斉開花の関連性に基づいて開発したモデルにより、これまで困難であったフタバガキの一斉開花が降水量と気温のデータから予測できる。
- ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生飼育技術の開発(2017)
ラオス在来テナガエビMacrobrachium yuiの浮遊幼生は、孵化後から着底するまでは塩分3.5 pptの人工海水で飼育し、その後1週間を1.7 pptで馴致飼育した後に淡水飼育を開始することが好適条件である。この方法を用いることで浮遊幼生の70%以上が稚エビまで成長する。
- 家庭用バイオガス発生装置は温室効果ガス排出削減と農家の便益を実現する(2016)
途上国の農村部に家畜の排せつ物等を原料とする家庭用バイオガス発生装置を導入することは、温室効果ガスの排出削減と農家の調理用燃料経費の節減、労働時間の短縮など農家の便益を実現する気候変動緩和策である。
- 食糧政策は気候変動下の米価変動を緩和するが政策コストは上昇する(2016)
気候変動に脆弱なバングラデシュを対象とし、米価変動を緩和するための食糧政策の効果とコストを、政策を含む米需給モデルで試算する。気候変動シナリオRCP6.0に基づくと、価格の変動係数を1ポイント低下させるには、年に1.67億ドルの追加的支出が必要である。
- アフリカ産低品位リン鉱石は焼成処理で可溶化され高い肥効を示す(2016)
未利用資源であるブルキナファソ産低品位リン鉱石に、炭酸ナトリウムを添加し、900~1000°Cで焼成することでクエン酸可溶性リン割合が大幅に向上する。焼成物のトウモロコシおよび水稲に対する施用試験の結果、水稲では重過リン酸石灰と同程度の施用効果が認められる。
- 赤外光を利用したササゲ子実タンパク質含有量の迅速評価技術(2016)
赤外光を利用してササゲ子実の粉体サンプルの窒素含有量を推定し、これをタンパク質含有量に換算することにより、育種過程で利用可能な子実タンパク質含有量を迅速に評価できる。
- 植物の高温特異的合成プロモーターによる遺伝子発現法(2016)
植物ゲノムの網羅的な比較解析を行い、高温特異的に働くプロモーターを合成した。このプロモーターは、気候変動による温暖化に対応した農作物や、付加価値が高い農作物の開発への利用が期待できる。
- キヌアの標準自殖系統とゲノム配列(2016)
分子レベルでの解析に適した遺伝的に均質なキヌアの標準自殖系統を開発し、キヌアのゲノム(生物の設計図)配列を世界に先駆けて解読した。これらの成果は、優れた環境適応性と栄養特性をもつ作物の開発に貢献するものと期待される。
- 葉表面の気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化する転写因子(2016)
植物の葉緑体の発達を制御する転写因子(GLK1, GLK2)の機能を植物内で抑制すると、大気汚染物質であるオゾンに対する耐性が著しく向上する。GLK1, GLK2転写因子は気孔の開閉に関わる遺伝子の発現に関与し、その機能抑制植物では気孔が閉じ気味になる。
- イネ複数品種におけるゲノム編集系および効率的な変異系統獲得手法(2016)
未熟胚を用いたアグロバクテリウム法は、主要イネ品種へのCRISPR/Cas9システム導入によるゲノム編集に有効である。Cas9遺伝子が除去された形質転換後代の個体を選抜することで、キメラ性および分離異常を示さない変異系統を効率的かつ確実に作出できる。
- ダイズさび病に高度の抵抗性を示す3種の判別品種は抵抗性遺伝子Rpp1-b をもつ(2016)
ダイズさび病に抵抗性を示す4種の判別品種を含む7品種は、さび病抵抗性遺伝子Rpp1、Rpp1-b、Rpp2、Rpp3の1つを保有する。高度の抵抗性を示す3種の判別品種は抵抗性遺伝子Rpp1-bをもつ。DNAマーカーを利用してRpp1-bなどの抵抗性遺伝子を感受性品種に導入できる。
- インドシナ半島の発酵型米麺のタンパク質分解と特徴的なテクスチャの関連性(2016)
インドシナ半島で生産、消費される発酵型米麺では、原料米のコメ貯蔵タンパク質の一部が選択的に分解を受けることで、伸展性に優れたテクスチャとなる。発酵させない場合、麺のゲルの破断点となる構造がタンパク質により形成されるため、伸展性に乏しい。
- キャッサバパルプはC. butyricum の1,3-プロパンジオール生産能を高める(2016)
嫌気性細菌Clostridium butyricumを用いたグリセロールからの1,3-プロパンジオール(1,3-PD)生産において、培養時にキャッサバパルプを少量添加すると、1,3-PD生産能を飛躍的に高めることができる。1,3-PD生産能を高めると共にキャッサバパルプの新たな活用方法となる。
- ラオスの重要な食用魚パ・コーの生態的情報に基づく資源保全管理(2016)
西アジアから東南アジア一帯に広く分布し、ラオスにおける重要な食用魚であるタイワンドジョウ科Channa striata(現地名パ・コー)は、近年小型化や資源の減少が危惧されており、資源管理が必要である。本種は体長20 cm以上で性成熟し、4月前後に卵巣が成熟することから、この時期に体長20 cm(2歳)以上の個体を漁獲規制することが資源保全に効果的である。
- 健全な種子生産を維持するためのフタバガキ科林業樹種の択伐基準の改善(2016)
フタバガキ科4林業樹種について、種子の父性解析から得られた花粉散布・開花量のパラメータを用い、択伐後の他家受粉の減少量をシミュレーションにより推定した。その結果によれば、材密度が高い非早生樹種では他家受粉が大きく減少し健全な交配が維持できないため、択伐の伐採基準を現行よりも厳しくすることが望ましい。
- タイ東北部の砂質土壌における炭の添加は、チークの成長を向上させる(2016)
タイ東北部の砂質土壌に炭を添加することにより、保水性が改良されるばかりでなくリンの吸収が促進され、チーク苗の根の成長が促進される。
- ウシエビのイエローヘッドウイルス(YHV)は共食いにより感染拡大する(2016)
室内実験により、イエローヘッドウイルス(YHV)に感染した個体を共食いしたウシエビが同ウイルスに感染し、被害が拡大することを明らかにした。共食いによる感染リスクは水を介してのそれよりも大きいことから、養殖現場においては、共食いの機会を減らす対策が重要である。
- アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)
アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。
- 酸味が少なく外観良好なパッションフルーツ新品種「サニーシャイン」(2016)
パッションフルーツの新品種「サニーシャイン」は、果皮につやがあり外観が良好な上、高温期でも着色不良果の発生が少ない。また、収穫直後でも果実酸度が低く、食べやすい生食用品種として普及が期待できる。