国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

Bacillus aryabhattaiは農作物残渣内の澱粉からバイオプラスチックを⽣産する

要約

日本の土壌から新たに単離した細菌Bacillus aryabhattaiはアミラーゼ遺伝子(amyA)を保有し、菌体外に分泌した澱粉分解酵素(アミラーゼ)による澱粉分解によってグルコース生産してポリヒドロキシ酪酸(PHB)を体内に蓄積する。

背景・ねらい

東南アジア地域では、キャッサバパルプやオイルパーム廃棄木等の農作物残渣が大量に排出され、様々な環境問題をもたらす要因となっているが、一方で農作物残渣中に含まれる澱粉は有用なバイオマス資源と考えられる。近年、石油性プラスチックの環境への影響が問題となっており、生分解可能なバイオプラスチックへの注目が世界的に高まっているが、バイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を生産する多くのPHB生産菌はグルコースを餌資源としており、澱粉から直接、PHBを生産することができない。本研究では、膨大な量の農作物残渣に由来する環境負荷を軽減し、有用なバイオマス資源として活用する技術開発の一環として、澱粉から直接PHB生産が可能な細菌を探索し、バイオプラスチック生産の有効性を検討する。

成果の内容・特徴

  1. 日本の土壌を単離源として84株のPHB生産菌を分離し、澱粉からPHBをもっとも大量に生産する細菌Bacillus aryabhattaiを単離した。B. aryabhattaiは、アミラーゼ遺伝子(amyA)を保有することから、菌体外に分泌したアミラーゼによって澱粉をグルコースに分解し、これを餌資源としてPHBを生産し、体内に蓄積する。
  2. 温度、pH、澱粉濃度等を考慮した最適条件下では、菌体重量は4.4 g/L、菌体中に含まれるPHB含量は46%、PHB生産量は1.9 g/Lと高い生産効率を示す(図1)。一方で、PHB生産菌として工業利用されているCupriavidus necatorはアミラーゼ遺伝子を持たないため澱粉を利用することができず、同環境下で培養してもPHBを生産できない(図1)。
  3. キャッサバパルプならびにオイルパーム廃棄木内の澱粉を用いてB. aryabhattai によるPHB直接生産を行うと、前者は96%、後者は99%が分解され、それぞれ0.12 g/L、0.33 g/LのPHBが生産される(図2、表1)。
  4. PHBの物性を表す重量平均分子量は市販のグルコースを用いて生産したPHBと同等であるが、耐熱性の一つの指標となる融点は、キャッサバパルプを利用して生産したPHBが市販のグルコースを用いて生産したものよりも高く(表2)、高温下での加熱加工に適するとともに製品の耐熱性も高まると期待できる。

成果の活用面・留意点

  1. 本菌を用いることで、澱粉分解酵素や遺伝子組換え菌を利用することなく、キャサバパルプやオイルパーム廃棄木等の残渣から直接、PHBを生産できるため、バイオプラスチック生産のコスト削減や農作物残渣の処理、環境負荷の低減等が期待できる。
  2. 実用化においては、農作物由来残渣内澱粉の安定かつ安価な供給ルートの確保や、大量生産における最適培養条件のさらなる検討が必要である。

具体的データ

  1. 図1 B. aryabhattaiによる可溶性澱粉からのPHB生産
    図1 B. aryabhattaiによる可溶性澱粉からのPHB生産

  2. 図2 農作物残渣内の未利用澱粉からのPHB生産
    図2 農作物残渣内の未利用澱粉からのPHB生産

  3. 表1 B. aryabhattaiによる農作物残渣内の未利用澱粉からのPHB生産量

    澱粉の原料 澱粉分解率 (%) 乾燥菌体量 (g/L) PHB生産量 (g/L) PHB含有量 (%)
    キャッサバパルプ 96±3 1.42±0.08 0.12±0.03 8.68±1.44
    オイルパーム廃棄木 99±1 1.95±0.05 0.33±0.06 17.07±2.83
  4. 表2 B. aryabhattai及び他の細菌によるグルコースとキャサバパルプから生産したPHB物性比

    菌株 炭素源 PHBの物性
    重量平均分子量 数平均分子量 融点()
    B. aryabhattai  グルコース 2.19×105 4.43´104 165
    キャッサバパルプ 1.61×105 4.28×104 170
    Bacillus spp. 871 グルコース 5.13×105 未測定 153
    Bacillus spp. 112A グルコース 5.21×105 未測定 148
    Saccharophagus degradans グルコース 5.42×104 未測定 166
所属

国際農研生物資源・利用領域

分類

研究

国名
  • マレーシア
  • 研究課題

    バイオマテリアル生産による資源循環型利用技術の開発

    プログラム名

    高付加価値化

    予算区分

    交付金アジアバイオマス

    研究期間

    2019年度(2011~2020年度)

    研究担当者
  • 荒井 隆益 (生物資源・利用領域)
  • 小杉 昭彦 (生物資源・利用領域)
  • Kumar Sudesh (マレーシア理科大学)
  • 発表論文等

    Wichittra B et al. (2019) Environmental Technology, 183:412-425 https://doi.org/10.1080/09593330.2019.1608314

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