オイルパームからプラスチック原料に有望なp-ヒドロキシ安息香酸を抽出する
オイルパームから亜臨界水抽出によってプラスチック原料に有望なp-ヒドロキシ安息香酸等の低分子量フェノール性物質を抽出する最適条件と部位別の収率を示す。種子殻や葉柄はp-ヒドロキシ安息香酸の抽出原料として評価できる。
背景・ねらい
マレーシアは世界で最もパーム油の生産量の多い国の一つである。オイルパーム(Elaeis guineensis Jacq., Arecaceae)からは、工場に集積される空果房や種子殻、プランテーションに残される葉柄や幹などの廃棄物が大量に発生する。こうしたオイルパーム部位から亜臨界水を用いてプラスチック原料に有望な物質を抽出できれば、廃棄物資源の有効利用に役立つことになる。
成果の内容・特徴
- マレーシアのオイルパームプランテーションで採取した各部位は、p-ヒドロキシ安息香酸の原料として11種類に分別される(図1)。
- 亜臨界水は、100°C〜150°C以上かつ臨界点温度(374°C)以下において加圧により液体状態を保った水の事である。熱分解反応が起こる超臨界水(374°C以上)抽出と比較して、亜臨界水抽出は加水分解力が高い特徴を持つ。
- オイルパームの亜臨界水抽出物にはp-ヒドロキシ安息香酸等の低分子量フェノール性物質が含有されている(図2,3)。p-ヒドロキシ安息香酸はそのまま、あるいは微生物変換して生分解性等の機能性を持つプラスチック等の原料として利用することができる。
- オイルパームの亜臨界水抽出を、温度・時間の組み合わせによって変換・抽出の最適条件を決定している。そこでは、温度が大きく影響している(図2)。
- p-ヒドロキシ安息香酸はオイルパームにもともと含有されているが、亜臨界水処理によってエステル結合が加水分解されて収率(抽出原料に対する%)が著しく増加する(図2A)。通常の熱水抽出に相当する100°Cの抽出と比較して200°Cの抽出では収率が55倍に増加している。
- オイルパーム各部位の中でp-ヒドロキシ安息香酸の収率が最大なのは種子殻である。葉柄(葉を含む)は収率が高くはないが、空果房や樹幹の6倍以上にもなる廃棄物資源量を考慮すると有望な部位である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 最適条件(温度、時間)での亜臨界水抽出は、有機溶媒、酸、アルカリ等の薬品を使用せずに、フェノール性物質を抽出できる環境負荷の低い方法である。
- 葉柄は現在有効な利用法がなく大部分がプランテーション内に放置されているため、収集する必要がある。一方、最もp-ヒドロキシ安息香酸の収率が高かった種子殻はパーム核油製造工場等に集積される(工場内で廃棄物として発生する)ため、利用し易い原料である。
- 亜臨界水抽出は200°C程度の高温に耐える耐圧容器と温度制御装置があれば行うことができ、超臨界水抽出と比較して機械の費用や使用エネルギー等の点で有利である。
具体的データ
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図1 オイルパーム各部位
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図2 亜臨界水抽出における温度(A)と時間(B)の影響(凡例は図3と同じ)
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図3 オイルパーム各部位からの低分子量フェノール性成分収率(抽出温度と時間:200°C、40分)
- Affiliation
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国際農研 林業領域
- 分類
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技術B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » アジアバイオマス
交付金 » 持続的林業
- 研究期間
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2012年度(2006〜2010、2011~2012年度)
- 研究担当者
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河村 文郎 ( 森林総合研究所 )
科研費研究者番号: 80353655Hashim Rokiah ( マレーシア理科大学 )
Sulaiman Othman ( マレーシア理科大学 )
Saary Nur Syahirah ( マレーシア理科大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Kawamura F. et al. (2014) Japan Agricultural Research Quarterly, 48(3):355–362.
河村文郎 (2008) グリーンスピリッツ, 4(3):10–13
- 日本語PDF
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- English PDF
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- ポスターPDF
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