オイルパーム廃棄木の搾汁残渣はバイオエタノールの有望な資源となる
オイルパーム廃棄木の搾汁後の繊維残渣を柔組織および維管束に分別し、それぞれ前処理することで、高い糖化効率を有するバイオエタノール発酵生産が可能となる。廃棄木の搾汁残渣から得られる発酵可能糖に対し約82%の高変換効率でエタノールを生産することができる。
背景・ねらい
オイルパームは生産性を維持するために約25年間隔で伐採、再植されるが、伐採されたパーム廃棄木が大量に発生している。パーム廃棄木から搾汁により得られる樹液には、グルコースやスクロースなど発酵可能な遊離糖が豊富に含まれている。JIRCASではこの樹液からのバイオエタノールおよび乳酸生産技術を開発している1)。本研究では、オイルパーム廃棄木の樹液だけでなく、搾汁の際に排出される繊維残渣もまたバイオエタノールに変換可能な有望な資源となることを示す。
成果の内容・特徴
- 樹液搾汁後の繊維残渣は柔組織と維管束で構成される(図1)。この柔組織と維管束は、その形状や重量の差を用い容易に分別できる(国際農林水産業研究成果情報 第18号)。柔組織と維管束を分別することで、柔組織中に特異的に含まれるデンプンを利用することができる3)。
- 柔組織および維管束の成分量(%, w/w)は、それぞれリグニン26.8%、23.6%、デンプン46.7%、0.2%、セルロース40.3%、49.1%、キシラン18.7% 、19.0%、アラビナン4.4%、1.1%であった。デンプン以外の成分は類似した含有量で構成されている3)。
- 搾汁後の繊維残渣はアルカリ前処理(5%水酸化ナトリウム、150°C、3時間処理)および市販セルラーゼ酵素(18.5ユニット/g乾燥繊維残渣)により91%の高い糖化効率を得ることができる3)。
- パーム廃棄木の搾汁後の繊維残渣100gから25gのエタノールを生産することが可能である(表1)。これは樹液以外の繊維残渣が有する利用可能な発酵糖の約82%がエタノールへ変換できることを示しており、樹液と共に搾汁後の繊維残渣も極めて有望な資源となる3)。
成果の活用面・留意点
- 柔組織はデンプンを含むため、セルラーゼ以外にデンプン分解酵素の併用が効果的である。
- 五炭糖発酵性酵母を用いることで、キシラン分解由来のキシロースなどの五炭糖も利用できるためバイオエタノール生産量を向上させることができる。
- 繊維残渣の前処理はアルカリ前処理以外、水熱前処理でも高い糖化効率を示す。
- 樹液の有用性が示されていることに加えて、最近では、その搾汁残渣の利用も注目されてきている。本提案のようにエタノール生産の原料、又は吸水性素材4)、燃料用ペレット(特許出願中)にも利用可能であるが、コスト等を検討し総合的な利用方法を考慮する必要がある。
具体的データ
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図1 オイルパーム廃棄木からの搾汁液と搾汁後の繊維残渣1-3)
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表1 オイルパーム廃棄木の搾汁残渣100gから得られるバイオエタノール生産量3)
アルカリ前処理柔組織および維管束の糖化効率は91%とした。
- Affiliation
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国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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技術B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » アジアバイオマス
受託 » NEDO・提案公募型開発支援研究協力事業(2011)
- 研究期間
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2013年度(2011年~2013年)
- 研究担当者
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小杉 昭彦 ( 生物資源・利用領域 )
Prawitwong Panida ( 生物資源・利用領域 )
鄧 嵐 ( 生物資源・利用領域 )
荒井 隆益 ( 生物資源・利用領域 )
見える化ID: 001768村田 善則 ( 生物資源・利用領域 )
- ほか
- 発表論文等
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固体混合物の分離装置本体及び分離方法 特願2011-190175(P2011-190175) https://www.jircas.go.jp/ja/patent/JP2013188748
Prawitwong, P. et al. (2012) Bioresource Technology, 125: 37–42
吸水性素材 特願2010-097436(P2010−97436) https://www.jircas.go.jp/ja/patent/JP2011224479
- 日本語PDF
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