バイオエタノール生産を目的としたオイルパーム廃棄木からの樹液搾汁システムの開発

要約

オイルパーム廃棄木より効率的に樹液を搾汁するシステムを開発した。本システムは、かつら剥き機(既存機)、シュレッダー(新規開発)、圧搾機(新規開発)により構成され、搾汁率約80%の効率で、1時間に約500 kgのオイルパームトランクを処理することができる。

背景・ねらい

オイルパームは樹齢と共に果実の生産量が低下するために約25年で一斉に伐採、再植され、その際大量のパーム幹(トランク)が廃棄される。我々は伐採後のパームトランクに、サトウキビに匹敵する糖が熟成により蓄積されることを見出し、パームトランクからの樹液を用いたエタノール生産技術の開発を行っている。これまでパームトランクから樹液を搾汁できる装置はなかった。ここでは、オイルパームトランクより効率よく樹液を搾汁するためのシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  1. 搾汁システムは、既存のかつら剥き機、シュレッダー及び圧搾ミルの3つより構成される。パームトランクの樹皮と外層を除いたパーム内層部(パームトランクコア)をシュレッダーにより破砕し、圧搾ミルにて破砕した細裂片からの搾汁を行なう(図1)。
  2. シュレッダーはパームトランクコアを回転させつつ前端より裁断部へ送る部分(図2-1A)と送り込まれたトランクコアを破砕する部分(図2-1B)から構成される。破砕部では受け及び加圧ローラーによりトランクコアは安定して支持され、回転刃により細裂片にまでカットされる。
  3. 圧搾ミルは二連のミル(第一ミルと第二ミル)を有し(図2-2)、各ミルはそれぞれ3本の回転油圧式加圧ロールにより構成される。投入口より供給された細裂片が第一ミルで搾汁され、搾汁された細裂片はネックシュートを通って第二ミルにて再度搾汁される。搾汁液はミル下の収受パンより回収され、搾汁残渣は排出シュートから装置外へ排出される。
  4. サトウキビに比べてオイルパームの繊維が太く短い特徴を有することから、a)太い繊維に対応できるように圧搾ミル加圧ロールのグルーブ溝(縦方向の溝)を大きくし、細裂片の取り込みを向上させた。b)搾汁効率を上げるため加圧ロールのシェブロン溝(横方向の溝)を浅くすることで、細裂片の滑りを少なくした。
  5. トランクコア(直径15-20 cm、長さ1.2 m)をシュレッダーにて破砕し、圧搾ミルにて細裂片から搾汁したとき、ミルの回転が遅く(第一ミル:2.1 rpm、第二ミル:2.4 rpm)、ミルの圧力が高いとき(第一ミル:29.5 MPa、第二ミル:32.5 MPa)、搾汁率は80%であった(表1、実験条件1と2)。圧搾ミルには第一ミルと第二ミルの間に水流ポンプおよびノズルが装備されているため、加水することにより、搾汁率を向上することができる(表1、実験条件3と4)。

成果の活用面・留意点

現在のシュレッダーは、ベニヤ加工後のトランクコア(直径20 cm、長さ1.2 m)にのみ対応できるが、破砕部をスケールアップすることにより、現在より大きなパームトランクに対応することが可能である。

具体的データ

  1.  

    図1 オイルパーム廃棄木からの樹液搾汁システムの構成及び搾汁プロセス

    図1 オイルパーム廃棄木からの樹液搾汁システムの構成及び搾汁プロセス

  2.  

    図2
    図2 内層部(パームトランクコア)を細裂片にまで破砕するシュレッダー(2-1)と細裂片から樹液を搾汁する圧搾ミル(2-2)
  3. 表1 搾汁率に及ぼす圧搾機運転条件の影響

    表1 搾汁率に及ぼす圧搾機運転条件の影響
Affiliation

国際農研 利用加工領域

分類

技術A

予算区分
受託[NEDO提案公募型]
研究課題

マレーシアにおけるオイルパーム幹(トランク)からの効率的燃料用エタノール製造技術の研究開発

研究期間

2009年度(2006~2010年度)

研究担当者

村田 善則 ( 利用加工領域 )

小杉 昭彦 ( 利用加工領域 )

荒井 隆益 ( 利用加工領域 )

( 利用加工領域 )

ほか
発表論文等

森ら 日本国特許 特願 2009-238779 ヤシ幹(トランク)用シュレッダー及び搾汁システム

村田ら 油ヤシ古木に活用の芽、日経産業新聞、平成21年11月17日

Murata et al. (2009) 第6回バイオマスアジアワークショップ
http://www.biomass-asia-workshop.jp/biomassws/06workshop/poster/P-31.pdf

日本語PDF

2009_seikajouhou_A4_ja_Part1.pdf244.13 KB

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