効率的なエタノール生産を目的としたオイルパーム廃棄木からの柔組織分別調製装置
オイルパーム廃棄木から効率的にエタノールを生産するため、樹液搾汁後の残渣から柔組織を分別する装置を開発する。本システムは、パドルを有するスクリューコンベアとサイクロン方式の分別機により構成され、搾汁残渣より柔組織を純度85%以上、回収率80%以上で分別することができる。
背景・ねらい
オイルパーム廃棄木のトランク(幹)の柔組織にはデンプンが含まれることから、パーム樹液とともに燃料用エタノール生産の原料として極めて有望である。オイルパーム廃棄木からの効率的なエタノール生産技術開発のため、柔組織と維管束組織が混在する搾汁残渣から比重の差を利用して柔組織のみを調製する装置の開発を行う。マレーシア森林総合研究所の協力を得て本機を用いた柔組織分別試験を行い、オイルパーム廃棄木からの燃料用エタノール生産技術の現地での普及および展開を目指す。
成果の内容・特徴
- 本機は、前回開発したオイルパーム搾汁システムとの組み合わせにより使用する。分別装置は、スクリューコンベアおよびサイクロンにより構成され、樹液搾汁後の残渣から約半分の体積を占める柔組織を分別する(図1)。
- 分別機に投入された搾汁残渣は、スクリューコンベアにて攪拌され、パドルミキサーにより維管束組織に結合している柔組織が分離される。比重の軽い柔組織は排風機によって吸引されるが、比重の重い維管束組織はパドルミキサーにより排風機の風量と逆方向に移動し、スクリューコンベアから排出される(図1右 緑矢印)。
- スクリューコンベアから吸引された柔組織は、サイクロンにて螺旋状に回転する風量により分離される。分離された柔組織はサイクロン円筒の下に位置するロータリーバルブにて回収される(図1右 赤矢印)。
- サイクロンから分別された柔組織画分の品質を柔組織の純度として表わした。スクリューコンベアの回転を23 rpm, パドルの回転を70 rpmに固定し、排風機の回転を変化させたときの柔組織の回収率は排風機の回転が1430 rpmまで向上したが、1700 rpm以上では柔組織の純度が低下した(図2)。スクリューコンベアを23 rpm、排風機の回転を1144 rpmに固定し、パドルの回転数を変化させたところ、パドルの回転数が70 rpmまでは高い純度で柔組織を回収することができた(図3)。
成果の活用面・留意点
- 搾汁残渣の水分含量の違いは柔組織の分別に影響を及ぼすが、スクリューコンベアとパドルミキサーの回転数、送風機及び排風機の風量を変えることで比重の異なるサンプルにも対応することができる。
具体的データ
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赤矢印:柔組織の流れ 緑矢印:維管束の流れ 青矢印:排風の流れ 黄矢印:パドルミキサーの回転 -
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- Affiliation
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国際農研 利用加工領域
- 分類
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技術B
- 予算区分
- 受託[NEDO提案公募型]
- 研究課題
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マレーシアにおけるオイルパーム幹(トランク)からの効率的燃料用エタノール製造技術の研究開発
- 研究期間
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2006~2010年度
- 研究担当者
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村田 善則 ( 利用加工領域 )
小杉 昭彦 ( 利用加工領域 )
荒井 隆益 ( 利用加工領域 )
森 隆 ( 利用加工領域 )
藤本 清彦 ( 森林総合研究所 )
YUSOFF Mohd Nor Mohd ( マレーシア森林研究所 )
IBRAHIM Wan Asma ( マレーシア森林研究所 )
ELHAM Puad ( マレーシア森林研究所 )
Sulaiman Othman ( マレーシア理科大学 )
Hashim Rokiah ( マレーシア理科大学 )
- ほか
- 発表論文等
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森隆、小杉昭彦、村田善則、荒井隆益(2010) オイルパーム廃棄木樹液からのエタノール生産技術開発.日本エネルギー学会誌,第89巻 第12号:p.1147-1152.
Y. Murata et al. (2011) Development of a sap squeezing system from old oil palm trunks for the purpose of bioethanol production. 第4回JIRCAS・USM合同国際シンポジウム,マレーシア ペナン,マレーシア理科大
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