オイルパーム搾汁液を使った生分解プラスチックの生産
樹齢25年以上のオイルパーム廃棄木搾汁液中の糖を原料にBacillus megaterium MC1株を用いて代表的なバイオプラスチックであるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を効率よく生産できることを示した。
背景・ねらい
現在、バイオプラスチックは原料としてトウモロコシデンプンや食用油が用いられているが、石油由来のプラスチックに比べて価格が高く、食料との競合を引き起こすことが懸念される。一方オイルパームは、東南アジアにおける代表的な農作物であるが、油脂生産性を維持するために20年~25年ごとに伐採更新され、その際大量の廃棄木が発生する。我々は、オイルパーム廃棄木搾汁液中に大量の糖が蓄積されることを見出すとともに酵母及び乳酸菌を用いて搾汁液からエタノール及び乳酸を効率的に生産できることを明らかにした。PHBは熱耐性及び生分解性にすぐれておりポリ乳酸と共に需要拡大が期待されている。そこで廃棄物である搾汁液からの安価で効率的なPHB生産技術の開発を目指す。
成果の内容・特徴
- オイルパーム廃棄木搾汁液を培地としてPHB生産菌B. megaterium MC1株の培養を行った。廃棄木搾汁液を原料にしてポリヒドロキシ酪酸(PHB)を菌体中に大量に蓄積することを初めて示した(図1)。
- PHB生産に最適な搾汁液の糖濃度を決定するためにミネラルを添加した糖濃度の異なる搾汁液を調製しPHBを生産した。培養12時間後に最大生産量を示し糖濃度が2.5% W/V の搾汁液から1.91 g/LのPHBを生産する(図2)。
- 窒素源はPHB生産量に大きく影響することから数種類の窒素源を搾汁液に加えPHBの生産量を比較した。その結果、窒素源として比較的安価な尿素がPHB生産に効果的である。
- 原料中の炭素源と窒素源の比はPHBの生産量に大きく影響する。異なる炭素源と窒素源の比から成る搾汁液を調製し、最適な条件を決定した。培地中の炭素と窒素が50:1の時にPHB生産量は最大となる。
- 最適生産条件を見出し、試験を行った結果、培養16時間で2.5 %の糖を含む搾汁液から3.28 g/LのPHBを生産する (図3)。
成果の活用面・留意点
- 搾汁液は、糖やビタミンなどの栄養源が豊富なため腐敗を防ぐために、速やかな殺菌処理が必要である。
- 殺菌処理は、搾汁液中の糖やビタミンの崩壊を防ぐために、フィルター滅菌や低温殺菌が望ましい。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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研究B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » アジアバイオマス
- 研究期間
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2011年度(2011~2015年度)
- 研究担当者
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荒井 隆益 ( 生物資源・利用領域 )
見える化ID: 001768小杉 昭彦 ( 生物資源・利用領域 )
森 隆 ( 生物資源・利用領域 )
村田 善則 ( 生物資源・利用領域 )
Lokesh B. E. ( マレーシア理科大学 )
- ほか
- 発表論文等
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小杉ら「エタノール又は乳酸の製造方法」日本国特許 JP2007/74764
Lokesh et.al. (2012) CLEAN 40(3):310-317
- 日本語PDF
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