家禽加⼯残渣の活⽤によるミルクフィッシュ⽤⿂粉削減飼料の開発
ミルクフィッシュ養殖用飼料原料として家禽加工残渣を12%配合することにより、ミルクフィッシュ養殖用飼料中の魚粉を75%、魚油を15%削減できる。本飼料を用いることで、近年高騰する魚粉及び魚油の使用量が削減され、養殖魚の成長率や化学成分含量、味わいに影響を及ぼすことなく、飼料コスト軽減による水産養殖業者の経営改善が期待できる。
背景・ねらい
水産養殖用飼料の主要タンパク質源である魚粉や主要脂質源である魚油の価格は、原料となる魚の漁獲量減少と世界規模での給餌養殖の発展に伴う需要過多によって高騰しており、この結果生じている飼料コストの増大が水産養殖業者の経営を圧迫している。現地で利用可能な安価で効率的な代替原料の有効性を検証し、魚粉及び魚油への依存率を低下させることを目指し、フィリピンでは養殖用飼料原料として殆ど利用されていない家禽加工残渣をミルクフィッシュ(図1)養殖用飼料の原料として活用した魚粉削減飼料を開発する。
成果の内容・特徴
- タンパク質含量約27%、脂質含量約10%、炭水化物含量約31%に調製した3種類の実験用飼料(表1)を用いてミルクフィッシュ稚魚(約50g)から市場サイズ(300g超)までの飼育成長試験を行うと、ミルクフィッシュの増重率、日間成長率、増肉係数及び生残率に有意差は認められない(one-way ANOVA 及びFisher’s PLSD、以下同様)(図2A)。
- 収穫時のミルクフィッシュ血漿中のリン脂質、トリアシルグリセロール及び総コレステロール濃度等の化学成分についても、飼料による有意な影響は認められない(図2B)。
- 収穫魚の筋肉における粗タンパク質、粗脂質、灰分及び水分の含量にも有意な差は認められず(図2C)、全魚体、肝臓においても同様であった。
- 収穫された魚の臭い、味、歯応え等への嗜好性に関する一般人及び研究者48名による5段階評価では、飼料による顕著な差はみられない。
- 上記の結果から、家禽加工残渣を用いた魚粉削減飼料には従来の飼料と同等の成長効果が期待でき、生産されたミルクフィッシュの品質にも問題が無いことが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 開発された家禽加工残渣飼料の汎用性を確認することにより、ミルクフィッシュ以外の養殖魚種の飼料にも活用できる可能性がある。
- 家禽加工残渣のロットごとの成分組成に合わせて配合比率を調整する必要がある。
具体的データ
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図1 収穫されたミルクフィッシュ(Chanos chanos)尾又長29.8cm
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表1 実験用飼料の家禽加工残渣・魚粉・魚油配合率
CTF LPF HPF 家禽加工残渣 0% 8% 12% 魚 粉 20% 10% (-50%) 5% (-75%) 魚 油 4.45% 4.00% (-10%) 3.78% (-15%) -
図2 ミルクフィッシュの成長、収穫時の品質に及ぼす実験飼料の効果
(CTF区の値を1.00とした場合の相対値)
実験開始時尾数:1,483±1尾、飼育期間:84日、平均水温:28.3 ± 1.2℃
A 成長・生残、B収穫時の血漿中化学成分含量(N=10×2反復)、
C 収穫時の筋肉成分含量(N=15×2反復)
- Affiliation
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国際農研 水産領域
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 熱帯水産資源
- 研究期間
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2019年度(2016~2020年度)
- 研究担当者
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杉田 毅 ( 水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 )
Gavile Amafe Belleza ( 東南アジア漁業開発センター )
Sumbing Joemel Gentelizo ( 東南アジア漁業開発センター )
- ほか
- 発表論文等
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Sugita T et al. (2020) Japan Agricultural Research Quarterly, 54(3) (掲載予定)
- 日本語PDF
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- English PDF
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- ポスターPDF
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