生産者と消費者双方の取り組みによる窒素負荷削減効果の見える化

関連プロジェクト
熱帯島嶼環境保全
国名
日本
要約
沖縄県石垣島に食の窒素フットプリントを適用することにより、生産者と消費者の双方の行動が食料システムに起因する島内外の窒素バランス改善に与える影響を評価できる。その前提条件として牛糞堆肥の農地還元促進を生産者の行動とし、植物性たんぱく質中心の食生活や食品ロス削減とその家畜飼料への再利用を消費者の行動と位置付ける。生産者の取り組みでは、島内の化学肥料および窒素負荷量をそれぞれ20%および13%削減できる。消費者の取り組みでは、島外地域での窒素投入および負荷量をそれぞれ19%および31%削減できる。

背景・ねらい

 反応性窒素は作物生産に不可欠だが、化学肥料への過度な依存により堆肥などの有機資源利用が進まず、農業由来の窒素負荷を高める一因となっている。また、動物性たんぱく質中心の食生活や食品ロスの増加も、食料システム全体としての窒素負荷を拡大させている。こうした反応性窒素の増加は、すでに地球が安全に許容できる範囲 (プラネタリー・バウンダリー) を超えているとされ、地球規模の重要課題として位置付けられている。窒素に起因する環境負荷を軽減するために、生産者と消費者の双方が窒素循環の改善に取り組むことが求められている。しかし、これらの取り組みが地域内外の窒素バランスに与える影響を包括的かつ定量的に評価した研究は限られており、島嶼地域を対象とした食と環境をつなぐ施策などに活かしにくい状況にある。
 食の窒素フットプリントは食料システムから環境中に排出される反応性窒素を表し、窒素負荷主因の特定や改善シナリオの検討などに活用ができる。本研究は、沖縄県石垣島に食の窒素フットプリントを適用し、島内外の食料・飼料の流れを対象とした窒素投入量と負荷量を定量的に分析する。さらに生産者・消費者の行動変容による窒素投入量および負荷量の削減ポテンシャルをシナリオ分析で評価する。

成果の内容・特徴

  1. 石垣島へ食の窒素フットプリントを適用する。肉牛飼養が盛んな石垣島での計算を精緻化するため、輸入・移入粗飼料や牛糞堆肥の農作物生産への配分を考慮する。島内の食料生産で不足する食料は輸入・移入でまかなうと仮定する。輸入・移入食料の内容は2015年の日本の食生活から決定する。
  2. 石垣市や国、県の統計データを用いて現況の窒素フローを求める (図1)。牛糞利用率は既往研究を参考に13%とする。石垣島では2022年現在、島内の窒素投入量は約116万kg N (化学肥料)、負荷量 (環境中に排出される窒素) は約176万kg Nであり、島外地域 (輸入・移入の食料・飼料の生産に関連) の窒素投入量 (化学肥料など) は約142万kg N、負荷量は約73万kg Nである。
  3. 対策シナリオを設定し、生産者および消費者の窒素投入量と負荷量の削減ポテンシャルを評価する。生産者の取り組みとして、牛糞堆肥の農地還元率を70%に引き上げた場合を検討する。消費者の取り組みとして、植物性たんぱく質中心だった1970年の日本の食生活を取り入れ、さらに食品ロスの削減と飼料利用を進めるシナリオを設定する。
  4. 窒素負荷量は、生産者の取り組みにより島内で13%削減され、消費者の取り組みで島外地域で31%削減できる (図2上)。窒素投入量は、生産者の取り組みにより島内で20%削減され、消費者の取り組みにより島外地域で19%削減できる (図2下)。

成果の活用面・留意点

  1. 本成果は、窒素負荷の削減を目的とした生産者側の施策のみならず、消費者の行動変容を含めた包括的な環境評価への応用が期待できる。
  2. みどりの食料システム戦略やSDGsに沿った取り組みを進める自治体の施策や、フィリピンなど他の熱帯地域への応用、行政・教育・企業などとの連携を通じた普及・啓発活動の強化へ活用できる。
  3. 本シナリオの実効性評価には、地場産業への影響や経済性を考慮した多面的な分析が必要である。また、段階的な普及計画の策定を目指し、低環境負荷で持続性の高い食生活モデルの提案や、有機資源の効果的な循環利用法の検討を進める必要がある。

具体的データ

分類

行政

研究プロジェクト
プログラム名

環境

予算区分

交付金 » 第5期 » 環境プログラム » 熱帯島嶼環境保全

研究期間

2021~2025年度

研究担当者

濵田 耕佑 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

江口 定夫 ( 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) )

科研費研究者番号: 30354020
見える化ID: 1631

平野 七恵 ( 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) )

朝田 ( 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) )

科研費研究者番号: 10574460
見える化ID: 1633

ほか
発表論文等

Hamada et al. (2025) Environmental Research Letters 20: 114017
https://doi.org/10.1088/1748-9326/ae0b95

日本語PDF

2025_A04_ja.pdf1.02 MB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

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