国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

RNA⼲渉法によるバナメイエビ卵⻩形成抑制ホルモン遺伝⼦の発現抑制

要約

バナメイエビにおける卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子構造を明らかにし、定量PCR法を構築することにより、体内の遺伝子発現量の変動を把握できる。また、遺伝子情報を基にRNA干渉法を用いることで卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子発現を抑制できる。

背景・ねらい

クルマエビ類のふ化場では卵成熟及び産卵を人為的に誘導させるため眼柄切除を行っているが、動物福祉の観点から社会的な批判を浴びている。一般的に、眼柄切除を行うことで、眼柄内に存在する卵黄形成抑制ホルモン(vitellogenesis-inhibiting hormone; VIH)を除去することができ、卵成熟を促進させる結果となる。有用エビ類における眼柄切除に代わる新たな卵成熟促進技術の開発を図るため、バナメイエビの卵黄形成抑制ホルモン遺伝子の構造を明らかにし、RNA干渉法を用いることにより、卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子発現を抑制する。遺伝子発現を抑制することにより、体内で卵黄形成抑制ホルモンの合成を抑えることを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. バナメイエビで卵成熟を抑制するVIHの作用を持つ5種類の眼柄由来ペプチド(sinus gland peptides; SGP-A, -B, -C, -F, -G)の遺伝子構造を明らかにする(図1)。
  2. 5種類のSGPの遺伝子発現量を測定する定量PCR法を構築することにより、バナメイエビにおけるVIH作用を持つそれぞれのSGP遺伝子発現量を比較することが可能になる。
  3. バナメイエビの眼柄で最も多く存在する眼柄由来ペプチド、SGP-Gの遺伝子に対する二本鎖RNA(VIH-dsRNA)を作成することができる(二本鎖RNAとは、2本の相補的な塩基配列を持つ合成RNAである)。
  4. 雌親エビ(体重50~70 g)へ体重1 g当たり3 µgのVIH-dsRNA を1回注射するだけで、投与してから20日間を通じて、眼柄での標的遺伝子(卵黄形成抑制ホルモン:SGP-G)の発現量を10%以下に減少させることができる(図2)。
  5. 上記のRNA干渉法により、バナメイエビにおける主要な卵黄形成抑制ホルモンの遺伝子発現を抑制することが可能になる。

成果の活用面・留意点

  1. 主要な卵黄形成抑制ホルモンのみならず、複数の卵黄形成抑制ホルモンに対する二本鎖RNAを作成し投与することにより、卵成熟への促進効果を増加させることができると期待される。
  2. クルマエビ類では卵黄形成抑制ホルモンのアミノ酸配列が類似していることから、バナメイエビのみならず、他のクルマエビ類への適応が期待される。
  3. エビに優しい新たな種苗生産技術を提供し、養殖産業の発展に寄与する。

具体的データ

  1. 図1 バナメイエビにおける卵黄形成抑制ホルモン作用を持つSGP遺伝子の構造模式図
    図1 バナメイエビにおける卵黄形成抑制ホルモン作用を持つSGP遺伝子の構造模式図
    遺伝子のイントロン領域はbp(base pair;塩基対)、エクソン領域はaa(amino acid;アミノ酸)で示す。図はKang et al. (2018)を改変 (Copyright: Fisheries Science)。

  2. 図2 VIH-dsRNA注射によるSGP-G遺伝子発現の抑制
    図2 VIH-dsRNA注射によるSGP-G遺伝子発現の抑制
    Initial:無処理区、TE buffer:調整バッファー投与区、GFP-dsRNA:緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein: GFP)二本鎖RNA投与区、VIH-dsRNA:VIH-dsRNA投与区。( ) は各区の個体数を示す。図はKang et al. (2019)を改変 (Copyright: Aquaculture)。

所属

国際農研水産領域

分類

研究

国名
  • 日本
  • プログラム名

    情報収集・提供

    予算区分

    交付金目的基礎エビ成熟

    研究期間

    2019年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • Kang Bong Jung (水産領域)
  • Wilder Marcy N. (水産領域)
  • 発表論文等

    Kang BJ et al. (2018) Fisheries Science, 84: 649–662 https://doi.org/10.1007/s12562-018-1212-7

    Kang BJ et al. (2019) Aquaculture, 506: 119-126 https://doi.org/10.1016/j.aquaculture.2019.03.028

    日本語PDF
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