国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

サトウキビとススキ属植物との属間雑種は低温条件下での光合成特性が優れる

要約

サトウキビとススキ属植物との属間交雑により作出した属間雑種F1には、サトウキビより低温条件下での光合成速度や寒冷地でのバイオマス生産性が優れる系統があり、サトウキビの低温環境への適応性改良に向けた新しい育種素材として利用できる。

背景・ねらい

C4植物でありバイオマス生産性に優れるサトウキビ(Saccharum officinarum L.)は、世界の砂糖ならびにバイオ燃料等の生産にとって重要な資源作物である。熱帯原産のサトウキビは低温感受性で、気温が14 ℃以下で生育障害が起きることから、世界のサトウキビ栽培地域には、低温がサトウキビ生産上の課題となっている地域が多く存在する。そのため、サトウキビの低温環境への適応性を改良することは重要な育種目標となる。サトウキビの近縁属遺伝資源であるススキ属植物(Miscanthus spp.)は、C4 植物の中では低温環境に最も適応した植物の一つであり、低温下でも光合成速度が低下しにくく、寒冷地におけるバイオマス作物として注目されている。そこで、これまで世界的にも報告例が少ないサトウキビとススキ属植物との属間交雑を実施し、サトウキビの低温条件への適応性の改良に利用できる新しい育種素材を作出する。

成果の内容・特徴

  1. サトウキビ系統「KY06-139」および「KR05-619」と日本在来のススキ属植物である「塩塚」(M. sinensis)および「都城」(M. Sacchariflorus)との属間交雑により、それぞれ2系統および16系統の属間雑種F1を作出した(図1)。
  2. ススキ属植物である「塩塚」および「都城」は、低温条件下(12~13℃昼/7~9℃夜)で7日および14日処理した場合の光合成速度がサトウキビ系統より高い。それらの属間雑種F1には、低温条件下における光合成速度がサトウキビ系統より高く、ススキ属植物と同程度となる系統が存在する(図1)。
  3. 属間雑種F1は、低温条件下(12~13℃昼/7~9℃夜)で7日間処理後、温暖条件下(26℃昼/18℃夜)で7日間栽培した場合の光合成速度の回復程度がサトウキビ系統より優れる(表1)。
  4. 属間雑種「JM14-09」は、寒冷地(札幌市、43°07’N、141°33’E)における圃場試験での乾物重が母本としたサトウキビ系統「KR05-619」や父本としたススキ属植物「塩塚」より大きい(図2)。

成果の活用面・留意点

  1. 本研究で作出した属間雑種F1は、サトウキビの低温条件下におけるバイオマス生産性や光合成特性の改良に向けた新しい育種素材として活用できる。
  2. 父本としたススキ属植物は札幌市(43°07’N、141°33’E)で越冬したが、母本のサトウキビ系統および属間雑種F1は越冬できなかった。属間交雑によるサトウキビの越冬性改良の可能性を明らかにするために、属間雑種の越冬可能な環境を明らかにしていく必要がある。

具体的データ

  1. 図1 サトウキビとススキ属植物の属間雑種における低温条件下での光合成速度
    図1 サトウキビとススキ属植物の属間雑種における低温条件下での光合成速度
    2016年10月28日に地下茎をポット(3反復)で植え付け、2016年12月9日から21日間22~25℃昼/13~15℃夜で養成した材料に、12~13℃昼/7~9℃夜で7日および14日低温処理した後の光合成速度を測定した。各処理の異なるアルファベットは、系統間に5%水準以上で有意差があることを示す。A1,000は、光合成有効光量子束密度が1,000 μmol m−2s−1の条件下での光合成速度を測定したことを示す。

  2. 表1 低温処理後に温暖処理した場合の光合成速度

    系統名 A1500 (µmol m-2 s-1)1)
    低温処理前2) 低温処理後3) 温暖処理後4)
    JM14-09 28.8 b5) 17.1 (59) ab 29.9 (104) a
    JM14-72 33.2 a 14.8 (45) b 25.4 (177) b
    JM14-88 23.4 c 13.2 (56) b 24.0 (103) b
    KR05-619 28.3 b 9.3 (33) c 20.5 (172) c
    KY06-139 29.3 b 9.5 (32) c 20.3 (169) c
    塩塚 24.2 c 16.0 (66) b 24.9 (103) b
    都城 29.9 b 19.7 (66) a 28.9 (197) a

    注)1) 光合成有効光量子束密度が1,500 μmol m−2s−1の条件下での光合成速度。2) 地下茎をポット(3反復)に植え付け、3週間栽培した材料を26℃昼/18℃夜で14日間処理した後の光合成速度、3) 2)の材料を12℃昼/7℃夜で7日間処理した後の光合成速度、4) 3)の材料を26℃昼/18℃夜)で7日間処理後の光合成速度。5) 各処理における異なるアルファベットは、系統間に5%水準以上で有意差があることを示す。表中の括弧内の数値は、低温処理前の光合成速度に対する割合を示す。

  3. 図2 寒冷地(札幌市)での乾物収量
    図2 寒冷地(札幌市)での乾物収量
    北海道大学の圃場において2017年、2018年の2年間評価した。1区1株、3反復とし、両年ともに5月に育苗株を圃場に定植し、11月に収穫を実施した。試験期間中の平均気温及び降水量は、両年ともに17~18℃、700~800 mmであった。異なるアルファベットは、系統間に5%水準以上で有意差があることを示す。

所属

国際農研熱帯・島嶼研究拠点

分類

研究

研究プロジェクト

不良環境でのバイオマス生産性が優れる新規資源作物とその利用技術の開発(高バイオマス資源作物)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金高バイオマス資源作物

研究期間

2019年度(2016~2020年度)

研究担当者
  • 寺島 義文 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 安藤 象太郎 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • Kar Suraj (北海道大学)
  • 山田 敏彦 (北海道大学)
  • 発表論文等

    Kar S et al. (2019) GCB Bioenergy, 11(1):1318-1333 https://doi.org/10.1111/gcbb.12632

    Kar S et al. (2019) BioEnergy Research https://doi.org/10.1007/s12155-019-10066-x

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