ダッタンソバは加圧を要しない膨化処理により苦味の⽣成を抑えられる

要約

子実に多量のルチンを含むダッタンソバは食品材料としての幅広い活用が期待される。加圧を要しない高温加熱のみの簡易膨化処理により、殻のままポン菓子状の製品化が可能となり栄養価の高いソバ加工品ができる。高温処理によりルチン分解酵素活性を抑制し苦味を呈するケルセチン生成を抑制することで製品にルチンを豊富に残存させることができる。

背景・ねらい

雑穀は高い栄養価と農業生態環境への広い適応能力を持つことから、世界の食料安全保障と飢餓の解消に大きな役割を果たすことが期待されている。特に中国四川・雲南省を起源地とするダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)は、普通ソバ(F. esculentum)に比べて高標高地帯でも栽培が可能であり、血管収縮抑制作用や抗酸化能があるルチン含量も極めて高いことなど、付加価値の高い作物として知られている。中国、ロシア、ネパール、ヨーロッパ諸国で広く栽培されており、特に他作物の栽培が困難な山間地帯では重要な食料資源となっている。しかし、その子実は硬質な果皮(殻)を持つため、効率的に殻を取り除くことが困難であり、製粉歩留まりが悪く、加工性も劣ることなどが加工上の課題となっている。また、多くのダッタンソバ品種は、高いルチン分解酵素活性を有することから、加水を伴う加工中に非常に苦味の強いケルセチンを生成するため、粉として利用する妨げとなっている。そこで、ダッタンソバの苦味の生成を抑制する簡易な加工法として、殻のまま直接加熱により膨化させる処理(簡易膨化処理)の効果を検証する。

成果の内容・特徴

  1. ダッタンソバ子実は、殻付のまま瞬時に高温加熱する簡易膨化処理によって、圧力を加えることなくポン菓子状に爆裂し、そのまま食べられる製品ができる(図1)。
  2. 簡易膨化処理ではルチンが失われることなく残り、苦味を呈しない製品となる(表1)。
  3. ダッタンソバは子実中にルチン分解酵素を含むが、簡易膨化処理により、ルチン分解酵素の活性が失われる。そのためダッタンソバ子実の粗酵素液にルチン溶液を添加しても、全てのルチンが残存し苦味の強いケルセチンの生成が抑制される(図2)。
  4. 簡易膨化処理の有無で、食品成分(タンパク質、脂質、炭水化物、灰分、食物繊維)やエネルギーには大きな差は見られない(表2)。

成果の活用面・留意点

  1. 本成果で示した簡易膨化処理は、高温高圧を必要とする通常の膨化処理に比べ、低コストで実施でき、そのまま食べられる製品を提供できるため、開発途上地域の食品加工技術として有用である。
  2. 簡易膨化処理後のダッタンソバを粉状に加工してもルチンは残存するため、麺、饅頭、パンなどに添加可能でルチン含量が高く苦味の少ない機能性食品の開発や消費形態の多様化に向けた応用が期待できる。
  3. ダッタンソバは品種により種子サイズや形状が異なるため、加熱温度や含水率などの最適化条件は品種毎に検討することが望ましい。

具体的データ

  1. 図1 ダッタンソバを用いた簡易膨化処理

    図1 ダッタンソバを用いた簡易膨化処理
    簡易膨化処理によりポン菓子状に体積が増し、軟らかな食感でそのまま食せる製品となる。

  2. 表1 簡易膨化処理の有無によるルチン残存量

    サンプル名 簡易膨化処理 ルチン
    (㎎/100g)
    ダッタンソバ A
    (北海道産)
     1,637±118.2
    1,469±49.5
    ダッタンソバ B
    (中国産)
    1,548±77.8
    1,202±72.2
    簡易膨化処理ではルチン分解は軽微であり、苦味を感じない程度の製品となる。
  3. 図2 ルチン分解酵素によるルチン残存量測定

    図2 ルチン分解酵素によるルチン残存量測定
    簡易膨化処理を施したダッタンソバでは、酵素活性が失われることで、その粗酵素抽出液にルチンを添加しても全てのルチンはそのまま残存し、苦味の強いケルセチンの生成は抑制される。

  4. 表2 簡易膨化処理によるダッタンソバの栄養素変化

     
    サンプル名
    簡易膨化
    処理
    タンパク質
    (g/ 100g)
    脂質
    (g/ 100g)
    灰分
    (g/ 100g)
    炭水化物
    (g/ 100g)
    食物繊維
    (g/ 100g)
    エネルギー
    (kcal/ 100g)
     
     
    北海道産ダッタンソバ
    13.7
    4.1
    2.3
    79.9
    5.7
    411
     
     
    北海道産ダッタンソバ
    12.5
    4.0
    2.2
    81.3
    4.5
    411
     
所属

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究

国名

中国

研究プロジェクト

持続的農村発展のための食料資源の高付加価値化を通したフードバリューチェーン形成(フードバリューチェーン)

プログラム名

高付加価値化

予算区分

交付金 » フードバリューチェーン

研究期間

2019年度(2016~2020年度)

研究担当者

藤田 かおり ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 50435939
見える化ID: 1775

吉橋 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 60450269
見える化ID: 001766

ほか
発表論文等

Fujita K. and Yoshihashi T. (2019), Food Science and Technology Research 25 (4): 613-618

https://doi.org/10.3136/fstr.25.613

日本語PDF

2019_C02_A4_ja.pdf639.37 KB

2019_C02_A3_ja.pdf243.19 KB

English PDF

2019_C02_A4_en.pdf351.68 KB

2019_C02_A3_en.pdf291.83 KB

ポスターPDF

2019_C02_poster_fin.pdf356.04 KB