国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

タイ発酵型⽶麺の液状化は、麺をpH 4程度の酸性に保つことで抑制できる

要約

タイ発酵型米麺の液状化は細菌による澱粉分解に起因し、麺のpHが6以上になると誘発されるが、pH 4程度に保つことで抑制される。液状化の抑制には、製麺後の発酵型米麺および原料である発酵米粉がpH 4程度の酸性であることの確認や、製麺工程で麺の洗浄に用いる水を酢酸等の食用可能な有機酸によりpH 4程度に調整することが推奨される。

背景・ねらい

発酵型米麺はタイをはじめラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーおよび中国南部で生産、消費される伝統食品である。発酵由来の乳酸を含む発酵米粉を原料とし、その生地を熱湯中に細長く押し出して麺状に加工する製品は、一般的に常温で3日程度の保存が可能とされるが、水分の滲出を伴って麺の形が崩れ、液状化する場合があり(図1)生産・流通上の問題となっている。液状化の原因を究明し抑制方法を普及することで、収益性の向上や食料廃棄の削減が期待できる。

成果の内容・特徴

  1. 約0.03%の乳酸を含むタイ発酵型米麺はpH 3.7の酸性であるが、クエン酸-リン酸緩衝液(pH 6.0または8.0)による10分間の浸漬処理を施した直後のpHは6.0または7.7となり、37℃で3日以上保温すると液状化の兆候として水分の滲出が見られる。一方、pH 4.0のクエン酸-リン酸緩衝液による同様の処理では、麺のpHは4.0程度に保たれ、液状化は観察されない(図2)。
  2. 抗生物質(クロラムフェニコール、終濃度200 μg/mL)を含むクエン酸-リン酸緩衝液による同様の処理で液状化は観察されないことから、液状化現象は細菌の増殖を伴うと考えられる。
  3. pH 6.0または8.0のクエン酸-リン酸緩衝液による浸漬処理で液状化する麺からは、37℃で2または1日以上の保温によりα-アミラーゼ活性が検出され、翌日から麺の構造を形成する澱粉の分解で生じる還元糖が検出されるが、pH 4.0のクエン酸-リン酸緩衝液による同様の処理ではα-アミラーゼ活性、還元糖とも検出されない(図3A、図3B)。
  4. 以上の結果から、タイ発酵型米麺の液状化抑制には、麺および、その原料である発酵米粉をpH 4程度の酸性に保つことが推奨される。発酵型米麺や原料である発酵米粉のpHは食品用pH計またはpH試験紙による簡易法で確認できる。
  5. 発酵型米麺の液状化を抑制するための知見や技術をタイ語で平易に解説する小冊子(図4A、図4B)を作成し、生産者を対象とする技術講習に活用することで、生産者への成果普及やフードバリューチェーンの向上に寄与する。

成果の活用面・留意点

  1. 液状化の原因や適切な乳酸発酵の重要性、簡便な液状化抑制技術に関する知見を小冊子や技術講習を通じて伝えることで、食品ロスの軽減が図られる。また、小冊子には発酵型米麺の製法や調理法等についても紹介しており、一般向けの食育教材としても利用できる。
  2. 生産者の多くは工場敷地内の井戸水で出荷前の発酵型米麺を洗浄しており、ミネラル分の影響による麺のpH上昇が液状化の要因の一つと考えられる。液状化の抑制には、麺の洗浄に用いる水のpHを食用可能な酢酸等の有機酸で調整することが推奨され、麺の風味への影響も考慮して使用量を検討し、洗浄後の麺のpHが4程度になることを確認する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 液状化した発酵型米麺
    図1 液状化した発酵型米麺

  2. 図2 緩衝液(pH 4.0, 6.0, 8.0)による浸漬処理を施した発酵型米麺を37℃で3, 5日間保温した時の形状変化
    図2 緩衝液(pH 4.0, 6.0, 8.0)による浸漬処理を施した発酵型米麺を37℃で3, 5日間保温した時の形状変化

  3. 図3 酸緩衝液(pH 4.0, 6.0, 8.0)による浸漬処理の後、37℃で5日間保温した麺におけるα-アミラーゼ活性(A)および還元糖量(B)の消長
    図3 酸緩衝液(pH 4.0, 6.0, 8.0)による浸漬処理の後、37℃で5日間保温した麺におけるα-アミラーゼ活性(A)および還元糖量(B)の消長

  4. 図4 発酵型米麺の液状化抑制方法などをタイ語で解説する小冊子の表紙(A)と発酵型米麺のpH管理方法を紹介するページ(B)
    図4 発酵型米麺の液状化抑制方法などをタイ語で解説する小冊子の表紙(A)と発酵型米麺のpH管理方法を紹介するページ(B)

所属

国際農研生物資源・利用領域

分類

技術

国名
  • タイ
  • 研究プロジェクト

    持続的農村発展のための食料資源の高付加価値化を通したフードバリューチェーン形成(フードバリューチェーン)

    プログラム名

    高付加価値化

    予算区分

    交付金フードバリューチェーン

    研究期間

    2019年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • 丸井 淳一朗 (生物資源・利用領域)
  • 吉橋 (生物資源・利用領域)
  • Shompoosang Sirinan (カセサート大学食品研究所)
  • Surojanametakul Vipa (カセサート大学食品研究所)
  • 発表論文等

    Marui J et al. (2020) Japan Agricultural Research Quarterly, 54(1):41-45 https://doi.org/10.6090/jarq.54.41

    pH-dependent Liquefaction of Thai Fermented Rice Noodles (khanom jeen) Associated with Bacterial Amylolytic Enzymes

    日本語PDF
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