国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

アメリカミズアブ幼⾍はキノボリウオの飼料タンパク質源として有効である

要約

果実残渣等を用いて簡易に生産できるアメリカミズアブ幼虫をタンパク源として調製した餌は、ラオスの主要な養殖対象魚であるキノボリウオにおけるタンパク質同化効率が従来の魚粉飼料よりも優れ、タンパク質含量が少ない飼料でも高成長が期待できる。

背景・ねらい

ラオスでは、近年の人口増加に伴い食用魚需要が急速に高まっているが、輸入に依存している高い飼料コストが養殖の普及を阻害する要因の一つとなっている。さらに、肉食性魚類の養殖にはタンパク質含量が高い飼料材が必要となり、高価な魚粉を大量に含む餌が用いられるため、飼料コストがかさむ。そこで、ラオス国内に分布するアメリカミズアブ(Hermetia illucens)を人為的に飼育し、得られる幼虫(図1a)を肉食性のキノボリウオ (Anabas testudineus)(図1b)の養魚飼料のタンパク質源として用いる場合の有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  1. ラオスの高温期である4-10月に鶏糞を用いてアメリカミズアブの成虫を誘引することで、容易かつ継続的に産卵させることができる。孵化した幼虫は、果実残渣やビール粕を餌にして簡易に飼育できる。
  2. 魚粉のみを動物タンパク質源とした餌(T1、粗タンパク質35%)、魚粉とミズアブ幼虫粉を等量混合した餌(T2、同30.0%)、およびミズアブ幼虫粉のみをタンパク質源とした餌(T3、同25.0%)の3種(表1)を用いてキノボリウオ養魚を行うと、T2・T3飼料ではT1よりもタンパク質含量が低いにも関わらず、主な成長指標(全長、体重、生残率、増肉計数)において有意な差は生じない(表2)。 
  3. タンパク質の同化指標であるタンパク質効率(摂取タンパク1gあたりの体重増加量)は、低タンパクのT3飼料の方が高タンパクのT1・T2よりも有意に優れ、同蓄積率(摂取タンパク質が魚体内に蓄積する率)もT3がT1よりも有意に優れることから(表3)、ミズアブ幼虫はキノボリウオにおいて魚粉よりも優れたタンパク質同化性を有するものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  1. 魚粉よりもタンパク質同化性が高いミズアブ幼虫をキノボリウオ養魚飼料として用いることで魚粉依存度を低減し、飼料コストの軽減が図られる。
  2. ミズアブ幼虫のキノボリウオにおける高いタンパク質同化性は、キノボリウオの強い昆虫食性に起因すると考えられ、食性の異なる他魚種での有効性は別途検証する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 アメリカミズアブ幼虫(a)とキノボリウオ(b)
    図1 アメリカミズアブ幼虫(a)とキノボリウオ(b)

  2. 表1 試験飼料T1、T2、T3の一般栄養成分(%乾重量)

    飼料成分 T1 T2 T3
    粗タンパク質 32.5 30 25
    粗脂肪 6.7 7.6 8.9
    粗灰分 11.1 9.5 7.3
    デンプン 22.8 28 27.7

    T1:魚粉のみで調製、T2:魚粉・ミズアブ幼虫粉を混合、T3:ミズアブ幼虫のみ

  3. 表2 試験飼料T1、T2、T3によるキノボリウオの成長

    成長指標  T1 T2 T3
    放流時全長 (mm)* 46.3 ± 7.4 46.3 ± 7.4 46.3 ± 7.4
    収獲時全長 (mm)** 159.9 ± 13.6 164.1 ± 11.7 160.9 ± 12.8
    放流時体重 (g)* 2.2 ± 1.2 2.2 ± 1.2 2.2 ± 1.2
    収獲時体重 (g)** 85.1 ± 25.5 92.0 ± 22.3 83.5 ± 22.2
    生残率 (%)*** 82.2 ± 2.0 81.7 ± 9.1 81.7 ± 2.9
    増肉係数*** 3.4 ± 0.2 3.2 ± 0.4 3.2 ± 0.1

    数値は全て平均±標準偏差、*n = 180, **n = 60, ***n = 3.T1、T2、T3は表1と同じ

  4. 表3 試験開始時及びT1、T2、T3飼料で飼育された魚体の収獲時の体成分(水分、粗タンパク、粗脂肪、粗灰分)(% 乾重量)およびタンパク質効率と蓄積率

    魚体成分 試験開始時 収獲時
    T1 T2 T3
    水分 77.6 ± 0.2 (6) 63.4 ± 1.5 (18) 62.8 ± 1.0 (18) 63.1 ± 0.8 (18)
    粗タンパク質 14.9 ± 0.3 (6) 18.1 ± 0.3 (6) 17.8 ± 0.8 (6) 17.2 ± 0.6 (6)
    粗脂肪 2.8 ± 0.1 (6) 12.0 ± 0.9 a (12) 12.3 ± 1.7 a (12) 14.4 ± 2.2 b (12)
    粗灰分 3.8 ± 0.6 (6) 5.4 ± 1.0 a (18) 5.7 ± 0.7 a (18) 4.1 ± 0.8 b (18)
    タンパク質同化指標   T1 T2 T3
    タンパク質効率   0.9 ± 0.1 a (3) 1.1 ± 0.1 a (3) 1.3 ± 0.1 b (3)
    タンパク質蓄積率   16.4 ± 0.7 a (3) 18.8 ± 2.3 a,b (3) 21.9 ± 0.8 b (3)

    数値は全て平均±標準偏差、*( )内の数字は個体数もしくは試験区数、**異なるアルファベットは試験区間に有意差があることを示す (Tukey HSD test, p < 0.05).T1、T2、T3は表1と同じ

所属

国際農研水産領域

分類

研究

国名
  • ラオス
  • 研究プロジェクト

    インドシナ中山間農村における資源の多目的活用・高付加価値化と持続的生産性の向上(農山村資源活用)

    プログラム名

    高付加価値化

    予算区分

    交付金農山村資源活用

    研究期間

    2018年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • 森岡 伸介 (水産領域)
  • Vongvichith Bounsong (ラオス水生生物研究センター)
  • 発表論文等

    Vongvichith B, Morioka S et al. (2020) Fisheries Science, 86:145-151 https://doi.org/10.1007/s12562-019-01381-5

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