国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

⼀穂籾数を増加させるSPIKE は低収量環境でイネの籾収量を向上させる

要約

イネの一穂籾数を増加させる量的遺伝子座SPIKEは、インド型品種IR64背景では収量水準が5 t ha-1を超えると穂数を減少させ増収効果が低下するが、収量水準が5 t ha-1以下では穂数を減少させず増収に寄与するため、途上国の多くの低肥沃度環境や少量施肥栽培でその効果を発揮する。

背景・ねらい

低肥沃度土壌が広がり、農家が十分な肥料を購入できないアジア・アフリカの地域では、低投入でも安定した収量を得る作物品種の開発が必要である。イネはアジア・アフリカの多くの地域で主要作物であるが、低肥沃度環境での収量性を目標として育成された品種は少ない。近年同定されたイネの量的遺伝子座SPIKE平成25年度国際農林水産研究成果情報A03「インド型イネ品種の籾収量を増加させる遺伝子、SPIKEの発見」)は一穂籾数を増加させるため、穂数が制限される低肥沃度土壌や少量施肥栽培に利用することにより、イネの生産性の拡大が期待できる。

成果の内容・特徴

  1. インド型品種IR64とIR64の遺伝的背景に量的遺伝子座SPIKEが導入された準同質遺伝子系統(NIL-SPIKE)を用いて、2010〜2017年の雨季及び乾季に国際稲研究所(北緯14度17分、東経121度26分)で実施した11回の栽培試験において、NIL-SPIKEは収量水準が5 t ha-1以下でIR64よりも顕著に籾収量が高いが、収量水準が5 t ha-1以上になるとIR64との籾収量差は軽減する(図1)。
  2. 2018年に国際稲研究所で実施した窒素(N)施肥試験において、収量水準が4 t ha-1の低N施肥区(45 kg N ha-1;移植前に基肥として化成肥料[N-P-K = 14-14-14]を処理)では、NIL-SPIKEはIR64よりも収量が高い傾向があるが、収量水準が6 t ha-1の高N施肥区(180 kg N ha-1;低N施肥区と同量の基肥に加え、硫安45 kg N ha-1を、移植2週間後、4週間後および出穂時に追肥)では、増収傾向は認められず、収量に関してN施肥と品種の間に有意な相互作用が存在する(図2)。
  3. 低N施肥区では、NIL-SPIKEとIR64の穂数は同等であり、NIL-SPIKEは一穂籾数の増加に伴い、IR64よりm2当たり籾数が多くなることで増収傾向となる。高N施肥区では、NIL-SPIKEの穂数がIR64よりも顕著に減少し、m2当たり籾数が低下することで増収傾向は認められなくなる(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. NIL-SPIKEは熱帯多収品種IR64背景で育成されており、また、アジア・アフリカの途上国では低収量環境(5t ha-1以下)は一般的であるため、SPIKEはアジア・アフリカの多くの熱帯低肥沃度地域や少量施肥栽培で活用できる。
  2. サブサハラアフリカに代表される収量水準2 t ha-1等の極低収量環境での増収効果については、実データを得ていないため検証する必要がある。
  3. 他品種の遺伝的背景におけるSPIKEの増収効果については検証する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 IR64とNIL-SPIKEを用いた11栽培試験での籾収量比較
    図1 IR64とNIL-SPIKEを用いた11栽培試験での籾収量比較
    収量水準は各試験でのIR64とNIL-SPIKE間の籾収量の平均値を示す。

  2. 図2 低N施肥区と高N施肥区でのIR64とNIL-SPIKEの籾収量比較
    図2 低N施肥区と高N施肥区でのIR64とNIL-SPIKEの籾収量比較
    ***、*、0.1%、5%水準で有意であることを示す
    n.s.は有意差なしを示す。
    異なるアルファベットは5%水準で有意であることを示す。

  3. 図3 低N施肥区と高N施肥区でのIR64とNIL-SPIKEの穂数、一穂籾数、m2当たり籾
    図3 低N施肥区と高N施肥区でのIR64とNIL-SPIKEの穂数、一穂籾数、m2当たり籾
    異なるアルファベットは5%水準で有意であることを示す。

所属

国際農研生物資源・利用領域

分類

研究

研究プロジェクト

不良環境に適応可能な作物開発技術の開発(不良環境耐性作物開発)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金不良環境耐性作物開発

研究期間

2019年度(2010~2020年度)

研究担当者
  • 髙井 俊之 (生物資源・利用領域)
  • 佐々木 和浩 (生物資源・利用領域)
  • 浅井 英利 (生産環境・畜産領域)
  • 藤田 大輔 (佐賀大学)
  • Lumanglas Patrick D. (国際稲研究所)
  • Simon Eliza Vie (国際稲研究所)
  • 石丸 (農研機構 中央農業研究センター)
  • 小林 伸哉 (農研機構 次世代作物開発研究センター)
  • 発表論文等

    Takai T et al. (2019) Euphytica, 215:102 https://doi.org/10.1007/s10681-019-2425-2

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