種間交雑を利⽤して作出した株出し多収なサトウキビ新品種「はるのおうぎ」

要約

サトウキビ品種とサトウキビ野生種との種間雑種F1を交配に利用してサトウキビ新品種「はるのおうぎ」を育成した。本品種は、既存の普及品種と同程度の糖含有率であり、茎数が多く、萌芽性に極めて優れるため、春植え、株出しの両作型で原料茎重と可製糖量が普及品種より多い。

背景・ねらい

サトウキビ(Saccharum officinarum L.)は、世界の砂糖ならびにバイオ燃料等の生産にとって重要な資源作物であるが、既存の育種素材を利用した育種改良の停滞が課題となっており、未利用の近縁遺伝資源を利用した遺伝的多様性の拡大や新規特性の導入による生産性や不良環境適応性の改良が必要となっている。サトウキビは、地上部を収穫した後に地下に残る株から茎を再生させる省力・低コストな作型である株出し栽培が可能であり、同作型の生産性向上や継続回数の増加は重要な育種目標となる。サトウキビ野生種(S. spontaneum L.)は、株出し栽培での萌芽性が極めて優れることから、サトウキビの株出し栽培における単位収量の向上を実現するための重要な育種素材となる。そこで、サトウキビ品種とサトウキビ野生種との種間交雑で作出した種間雑種F1を育種素材として利用し、冬季の低温条件下での萌芽が課題となるサトウキビ栽培地域に向けて、株出し栽培で多収となる品種を開発する。

成果の内容・特徴

  1. サトウキビ栽培品種「NCo310」とサトウキビ野生種「Glagah Kloet」との種間雑種F1である多数回の株出し栽培での萌芽性や収量性に優れる飼料用サトウキビ品種「KRFo93-1」を種子親、早期高糖性の製糖用サトウキビ品種「NiN24」を花粉親とした交配により「はるのおうぎ」を育成した(図1、図2)。
  2. 茎径は細いが茎数が極めて多く、甘蔗糖度は、普及品種「NiF8」と同程度である(表1)。
  3. 萌芽性に優れ、手刈り収穫より萌芽が悪くなりやすい機械収穫後でも萌芽数が普及品種「NiF8」より極めて多い(図3)。
  4. 原料茎重と可製糖量は、春植え栽培、株出し栽培1年目および2年目のいずれの作型においても普及品種「NiF8」よりかなり多い(表1)。

成果の活用面・留意点

  1. 「はるのおうぎ」は、国際農研と農業・食品産業技術総合研究機構との共同育成品種であり、低温が生産上の課題となる鹿児島県熊毛地域(種子島)向けの奨励品種として、1,000 ha以上の普及を見込んでいる。
  2. 黒穂病抵抗性が劣るため、黒穂病が発生する地域での栽培は控える必要がある。
  3. サトウキビ品種とサトウキビ野生種との種間交雑は、低温が生産上の課題となるサトウキビ生産国における株出し多収品種の開発において重要な技術となる。

具体的データ

  1. 図1 「はるのおうぎ」の草姿

    図1 「はるのおうぎ」の草姿
    九州沖縄農業研究センター種子島試験地(鹿児島県西之表市)にて2018年11月撮影

  2. 図2 「はるのおうぎ」の系譜

    図2 「はるのおうぎ」の系譜

  3. 図3 「はるのおうぎ」の萌芽茎数

    図3 「はるのおうぎ」の萌芽茎数
    2018年に九州沖縄農業研究センター種子島試験地にて試験を実施した。1区1畦12 m、2反復のデータ。統計処理は、品種を固定効果,区を変量効果とする一般化線形混合モデルにより実施した。

  4. 表1 「はるのおうぎ」の主要農業特性

    作型 品種 原料茎数 茎長 茎径 1茎重 原料茎重 甘蔗糖度 可製糖量
    (本/ha cm mm g t/ha % t/ha
    春植え はるのおうぎ 143,950   224   20.6   685   97.3   12.4   11.0  
      NiF8 93,100   244   22.5   818   75.6   12.1   8.4  
      p <0.001   <0.001   <0.001   <0.001   <0.001   0.441   <0.001  
    株出し1年目 はるのおうぎ 188,667   244   19.4   619   117.2   11.8   12.7  
      NiF8 110,633   238   20.5   649   71.9   12.4   8.2  
      p <0.001   0.272   0.016   0.337   <0.001   0.098   <0.001  
    株出し2年目 はるのおうぎ 192,950   218   19.6   583   109.7   10.4   9.8  
      NiF8 134,800   215   20.5   558   74.6   10.4   6.7  
      p 0.003   0.733   0.116   0.492   <0.001   0.723   0.003  

    注)九州沖縄農業研究センター種子島試験地における生産力検定試験の春植え(2015~2018年度)、株出し1年目(2016~2018年度)、株出し2年目(2017~2018年度)の平均値。統計処理は、品種を固定効果,年次と区を変量効果とする一般化線形混合モデルにより実施した。

所属

国際農研 熱帯・島嶼研究拠点

分類

技術

研究プロジェクト

不良環境でのバイオマス生産性が優れる新規資源作物とその利用技術の開発(高バイオマス資源作物)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金 » 高バイオマス資源作物

受託 » 農林水産省・地域バイオマス

研究期間

2019年度(2009~2020年度)

研究担当者

寺島 義文 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

科研費研究者番号: 90414846
見える化ID: 001787

杉本 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

科研費研究者番号: 30414840

服部 太一朗 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 60403375
見える化ID: 597

松岡 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 60414843
見える化ID: 512

寺内 方克 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 20374621
見える化ID: 1808

境垣内 岳雄 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 00414847
見える化ID: 598

石川 葉子 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 70502938
見える化ID: 316

田中 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 90355503
見える化ID: 361

樽本 祐助 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 10355670
見える化ID: 596

早野 美智子 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 00616881
見える化ID: 599

安達 克樹 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 90355678
見える化ID: 595

梅田 ( 農研機構 )

科研費研究者番号: 10808009
見える化ID: 4109

ほか
発表論文等

服部ら「はるのおうぎ」品種登録出願公表第33768号(2019年7月4日)

服部ら (2019) 農研機構研究報告, 2:21-44

https://doi.org/10.24514/00003206

日本語PDF

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English PDF

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ポスターPDF

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