研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
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- 主要普及成果 少ない窒素肥料で高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)強化コムギの開発(2021)高いBNI能を持つ野生コムギ近縁種であるオオハマニンニクとの属間交配により、多収品種にBNI能を付与したBNI強化コムギを開発できる。BNI強化コムギは、土壌中のアンモニア態窒素の硝化を遅らせ、その土壌中濃度を向上させ、低窒素環境でも生産性が向上する。BNI強化コムギの活用により、窒素肥料の損失に伴うN2O排出による地球温暖化の緩和と水質汚濁物質の削減が期待できる。
- トウモロコシ根の生物的硝化抑制(BNI)物質の発見(2021)BNI活性を有するトウモロコシ根の表層の疎水性画分から、新規高活性BNI物質ゼアノンが見出されるとともに、HDMBOAとその類縁体、HMBOA及びHDMBOA-β-グルコシドが見出される。今回同定した4物質が、トウモロコシ根のBNI活性の重要な役割を担っている。
- BNI強化コムギによる窒素肥料由来温室効果ガス削減効果(2021)開発済の土壌の硝化抑制率30%のBNI強化コムギにより、2030年までに施肥窒素量を11.7%削減、窒素利用効率を12.5%向上可能と試算される。さらに、土壌の硝化抑制率が40%に向上し、最適栽培地域に導入された場合、ライフサイクルアセスメントを用いた評価に基づくと、2050年までに世界のコムギ栽培地域から窒素肥料由来の温室効果ガスを9.5%削減可能と推定される。
- フタバガキ科熱帯林業樹種Shorea leprosulaの茎の成長と新葉の関係(2021)フタバガキ科樹木のS. leprosulaでは、茎は葉と同調して断続的に成長し、葉の切除により茎の伸長が顕著に抑制される。葉の成長は茎の伸長の制御要因となっており、その制御機構の解明は、木材生産や適切なサイズの苗木の安定供給に役立つことが期待される。
- ラオス山地では植栽密度と立地選択によりチーク成長が倍増する(2021)ラオス山間部では植栽密度のコントロールと植栽する斜面の形状や傾斜の選択によって人工林チークは肥大成長および伸長成長に倍程度の差異を持つことから、適地判定が重要である。凹形緩傾斜面の下部が適地として最も推奨され、密植は避けた方が成長がよい。
- 洪水インデックス保険に対して稲作農家が支払う保険料の算出(2021)
気象災害の多いミャンマー国の沿岸域の稲作農家の経営安定化のためには、農家が受け取る最適なインデックス保険の保険金と保険会社の保険料を求める必要がある。降水量、リスク回避度、コメ販売価格変化にしたがって保険金と保険料を算出する手法を開発する。
- アフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は天水稲作で輸入肥料を代替できる(2021)未利用のアフリカ産低品位リン鉱石を用いて製造したリン肥料は、ブルキナファソの天水稲作において、高価な輸入リン肥料である過リン酸石灰と同等の施肥効果を示すことから、代替となり得る。収量に寄与する肥料中のリン成分は場所で異なり、地下水位の高い河床では水溶性リンと可溶性リンの両者が、地下水位の低い河岸斜面では水溶性リンが寄与する。
- ダイズ根系の改良に資する根長に関与する遺伝子座の特定(2021)ダイズ品種「Fendou 16」は長い主根を持つ。QTL解析の結果、主根長に関与する遺伝子座は第16番染色体のDNAマーカーSat_165とSatt621間のゲノム領域に存在する。同定されたダイズの長根型品種ならびにその遺伝的な情報はダイズの根系の遺伝的改良に利用できる。
- ダイズの種子サイズと形状に関与する遺伝子座の特定(2021)ダイズ種子のサイズと形状を制御する多数のQTLが検出され、特に効果の大きいQTLクラスター(qSS2)は、第2番染色体に座乗している。準同質遺伝子系統を用いた圃場試験により、qSS2の効果が実証できたことから、これらのQTLが、ダイズの種子サイズや形状の改善に資することが期待される。
- ウイルスベクターを用いたキヌアの遺伝子機能解析法(2021)有用な分子育種技術が開発されていないキヌアにおいて、ウイルスベクターを用いてキヌアの遺伝子発現を制御し、遺伝子機能を解析する技術を確立する。本手法はキヌアの新規遺伝子の同定や、分子育種素材の開発に利用できる。
- ダイズ紫斑病菌のゲノム情報(2021)新たに取得したダイズ紫斑病菌のゲノム配列は、完成度が高く、ダイズ紫斑病菌の病原性関連遺伝子等の研究、分子生物学的情報に基づいた病害診断技術の開発などに利用できる。
- メキシコのダイズさび病菌の病原性は2つの傾向に大別される(2021)
メキシコの2州で2016年から2019年に採取されたダイズさび病菌は、全く異なる病原性の特徴を示す2つのグループに分けられる。病原性の明瞭な地理的差異の情報は、さび病抵抗性品種の導入による病害防除に利用できる。
- 西アフリカの群生相化したサバクトビバッタは産卵直前に雌雄が合流(2021)アフリカで大発生するサバクトビバッタの群生相化した成虫は、雌雄がそれぞれの性に偏った集団を形成しているが、日中、産卵直前のメスがオスの集団に飛来、交尾し、夜間に集団で産卵している。この行動特性を応用することで、集団形成の時間と場所を特定でき、使用する農薬の量の軽減が期待できる。
- フィリピンにおける養殖ミルクフィッシュの成長と肥満度は水温で予測できる(2021)フィリピンにおいて、ミルクフィッシュの成長と肥満度、水温のデータを解析することで、魚の成長予測が可能になる。水温を把握することによって、肥満度予測の可能性を示すことができ、適切な給餌にも役立つ。
- 生殖細胞凍結保存技術によりクルマエビ類の遺伝的多様性保全を図る(2021)卵の凍結保存技術が確立されていない魚介類において、生殖細胞の凍結保存は、全遺伝情報を保存できる唯一の手法となっている。開発した水産重要種クルマエビ類2種における生殖細胞凍結保存技術は、水生無脊椎動物で初の生殖細胞凍結保存技術である。
- リン欠乏水田でのリン施肥による水稲増収量は土壌リン吸着能から推定できる(2021)マダガスカルに広く分布するリン欠乏水田において、リン肥料を施用した際のイネの増収量は、近接する圃場間でも大きく異なり、土壌のリン吸着能が高いほど低下する。
- 深層学習で熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を推定するモデル(2021)土壌の分光データを使用した深層学習により、農耕地および自然植生を含む熱帯の多様な生態系における土壌のリン供給能を迅速かつ高精度に推定できる汎用性の高いモデルを開発できる。
- イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法(2021)リン欠乏土壌ではイネの出穂が遅延するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では低温不稔が助長される。低温不稔のリスクが高い圃場にリンを施用することで、リン欠乏と低温不稔の双方の改善につながり、増収効果を高めることができる。
- メタ解析により明らかになったアフリカ陸稲への施肥効果(2021)アフリカにおける主要陸稲品種NERICA4の栽培試験データをメタ解析に供し、化学肥料の増収効果を環境要因に応じて定量的に評価する。結果は粘土含量が異なる土壌間で、降水量や窒素施用による異なる効果を示し、アフリカ陸稲栽培での施肥設計の指針となる。
- 灌漑地区上流への野菜作導入で農家の所得向上と灌漑水の均等な配分が両立する(2021)水不足のためにコメの不作付地が増加しているタンザニア北部ローアモシ灌漑地区の灌漑スキームでは、市場性のある野菜作を導入することで農家所得が向上し、スキーム全体の水資源利用の効率化とより均等な灌漑水の配分が期待できる。