ラオス山地では植栽密度と立地選択によりチーク成長が倍増する
背景・ねらい
インドシナ半島の内陸部に広がる山地帯はインドとともにチーク天然材の産地であるが、天然林資源の枯渇と保護により人工林での生産が急務である。焼畑耕作地等へのチーク人工林の殖産においては、造林を成功させるとともに生産量の予測が必要である。インドシナ半島の中央に位置するラオス山地において植栽が進められている人工林チークの成長に係る因子を明らかにし適地判定手法の確立を図ることで、山間部における有効な土地利用と農家所得の向上が期待できる。
成果の内容・特徴
- ラオス国ルアンパバン県南西部約30km×30kmの範囲にあるチーク人工林のうち20年生以上の27ヶ所において代表となる優勢木を3本ずつ、計81本のチーク個体を伐採し、樹幹解析(根元から樹木先端までを一定の間隔で輪切りにして、1本あたり平均17枚、合計1,374枚の円盤を作成し、年輪を読み取る)を行い、各チーク個体の林齢に伴う肥大成長および樹高成長過程を解析した結果に基づいている。
- ラオス山地の人工林におけるチーク個体の肥大成長(図1左)および伸長成長(図1右)は植えられた場所によりそれぞれ2倍程度の差異がある。
- チーク個体の肥大成長および伸長成長は、植栽される斜面の形状や傾斜の影響を大きく受ける(図2)。地形的には急斜面を避けるとともに、凸地よりも凹地が、斜面上部よりも下部が適地として推奨される。
- 調査対象地では20年生を超えた時点における立木密度が約500~1,600本/haであったが、その範囲においては立木密度が低いほど肥大成長、伸長成長ともに良好となる。
成果の活用面・留意点
- チークの適地判定手法は、利用した指標が現場において簡易な測器もしくは目測によって値の得られるものであることから、技術指導員等の養成により、容易に農家に普及可能である。
- 肥大成長および伸長成長の予測式の出力を材積換算式に代入すればチーク収穫量の予測も期待される。
- 気候や気象条件、地質や土壌条件の類似した地域(例えばタイ北部など)への拡大適用が期待されるが、そのためには検証調査による補正が必要である。
具体的データ
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図1 人工林チーク個体の肥大成長(左)および伸長成長(右)
チーク人工林27カ所から伐採した各3本の上層木について年輪から成長履歴を推定したデータ -
図2 チークの肥大成長(左)および伸長成長(右)の経験則式におけるパラメータと立木密度および立地条件との関係
偏相関解析による結果。因子間の関係はそれらを結合する線の太さによって強度を、色によって正負(緑:正、赤:負)を表す。林齢と胸高直径および樹高との関係を表す経験則式にはミッチャーリッヒ式
Y=A(1-exp(-k(ti-t0)), Y:ある林齢iの時の直径もしくは樹高、ti:林齢)を用い、その各パラメータ(青丸):A(成長上限)、k(成長曲線の曲率)、t0(成長開始のタイムラグ)は各個体の樹幹解析により導出。白地丸は林況および立地条件の因子でSDE:立木密度、EV:標高、SD:斜面方位(北→西)、SF:斜面形状(凸→凹)、SG:傾斜、SP:斜面位置(下→上)。緑〇と赤〇は1%水準で成長と有意な正および負の関係にある因子。図はVongkhamho et al. (2022)より改変(転載・改変許諾済)
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金
- 研究期間
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2016~2020年度
- 研究担当者
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今矢 明宏 ( 林業領域 )
科研費研究者番号: 60353596Vongkhamho Simone ( ラオス国立農林研究所森林研究センター )
竹中 千里 ( 名古屋大学 )
科研費研究者番号: 40240808山本 一清 ( 名古屋大学 )
科研費研究者番号: 40262430山本 浩之 ( 名古屋大学 )
ORCID ID0000-0001-6275-499X科研費研究者番号: 50210555 - ほか
- 発表論文等
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Vongkhamho S et al. (2022) Forests, 13:118
- 日本語PDF
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2021_A08_ja.pdf441.46 KB
- English PDF
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2021_A08_en.pdf332.94 KB
- ポスターPDF
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2021_A08_poster.pdf338.36 KB
※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。