国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

キノボリウオの水田養魚は種苗の低密度放流により無給餌でも成立する

要約

ラオス山村域では、農民の動物タンパク質摂取不足を改善するために養魚振興が求められている。山村域の小規模農家が実施可能な水田養魚において、在来種であるキノボリウオを用いた場合、養魚種苗の低密度放流により無給餌でも高水準の生産性が見込まれ、さらに給餌することで生産性は向上する。

背景・ねらい

ラオスでは、近年の人口増加に伴い食用魚需要が急速に高まっているが、山村域では住民への動物タンパク質供給量の不足が強く懸念されている。また、現在の主流な養魚種であるティラピア、コイ等は外来種であり、域内の生物多様性保全の観点から今以上の振興はリスクを伴う。経済的に恵まれない山村域の小規模農民が新規の池や生簀を造成することなく、既存の農業水塊を養魚に利用する技術開発の一環として、美味で市場価値も高い在来種のキノボリウオ(Anabas testudineus、図1)を対象に水田を用いた養魚試験を行い、養魚の生産性向上に寄与する要因の抽出と、それらの要因の寄与度を評価する。

成果の内容・特徴

  1. ラオス国ビエンチャン県2村(ナームアン及びナポー村)での4ヶ年のキノボリウオ水田養魚試験を通じ(図1)、養魚生産性の指標となるBGI(Biomass Gain Index;生物量増加指数=収獲魚総重量/放流種苗総重量)への寄与要因として想定された、給餌条件(給餌の有無)、種苗の放流密度(尾/m2)、養魚期間(日)および放流時の種苗重量(g/尾)、の4変数の全ての組合せによる線形回帰分析モデルを比較した結果、養魚期間は要因として選択されず、給餌の有無 、放流密度および養魚期間 がBGIへの寄与要因として選択される(図2)。
  2. 養魚生産性(BGI)に寄与する要因として抽出される上記3要因[放流密度(SD)、養魚期間(SP)、給餌の有無(F)]を変数とした線形モデル(BGI =-27.9·SD-0.53·SP+6.07·F+108.9, R2 = 0.96)の各変数の回帰係数より、養魚生産に最も大きく寄与する要因は種苗の放流密度であり(図3)、低放流密度であれば無給餌であっても一定水準のBGI(約20)が期待できる。
  3. 養魚期間のBGIに対する寄与は小さく、生産性に顕著な影響を及ぼさないが、給餌の有無はBGIに対して寄与する要因と推定され、給餌することでBGIは向上する(図3)。
  4. 以上の結果に基づき、キノボリウオの水田養魚を実施する際には、1尾/m2未満の低密度で養魚種苗を放流することで、給餌条件では最大40程度(放流種苗総重量1kgとした場合、収獲重量40kg)のBGIが期待できるが、無給餌でも20程度のBGIが見込まれることから、給餌しなくともキノボリウオの水田養魚は成立する(図4)。

成果の活用面・留意点

  1. 種苗の放流密度0.5~1尾/m2、収獲時魚体重を50g/尾とした場合、ナームアン村では最大で約250~500kg/ha/年の養魚生産量が見込まれる。
  2. ラオス国内の養魚可能な常時湛水田を84,000ha(上記村の常時湛水水田率12%より推定)とすると、約21,000~42,000t/年の生産量が見込めるが、同国では種苗生産施設や技術者が著しく不足しているため、広汎な養魚振興にはインフラ整備・技術者育成が必要である。

具体的データ

  1. 図1 養魚水田(上)と収獲されたキノボリウオ(下、体長約18 cm)
    図1 養魚水田(上)と収獲されたキノボリウオ(下、体長約18 cm)

  2. 図2 養魚生産性(BGI)に影響すると想定された要因
    図2 養魚生産性(BGI)に影響すると想定された要因
    [F: 給餌の有無、SD: 放流密度、SP: 養魚期間、BW: 放流時種苗重量]とBGIの関係[線形回帰分析により、F、SD、SP(赤枠)が寄与要因として統計的に選択された。]

  3. 図3 放流密度、養魚期間、給餌の有無が養魚生産性(BGI)に与える影響の評価
    図3 放流密度、養魚期間、給餌の有無が養魚生産性(BGI)に与える影響の評価
    (SD:放流密度、SP:養魚期間、F:給餌or無給餌)

  4. 図4 放流密度および給餌の有無が養魚生産性(BGI)に与える影響のイメージ図
    図4 放流密度および給餌の有無が養魚生産性(BGI)に与える影響のイメージ図

所属

国際農研水産領域

分類

研究

国名
  • ラオス
  • 研究プロジェクト

    インドシナ中山間農村における資源の多目的活用・高付加価値化と持続的生産性の向上(農山村資源活用)

    プログラム名

    高付加価値化

    予算区分

    交付金農山村資源活用

    研究期間

    2018年度(2016~2020年度)

    研究担当者
  • 森岡 伸介 (水産領域)
  • 川村 健介 (社会科学領域)
  • Vongvichith Bounsong (ラオス水生生物研究センター)
  • 発表論文等

    Vongvichith B et al. (2018) JARQ, 52(4):359–366 DOI: 10.6090/jarq.52.359

    Factors Influencing Fish Productivity in Rice Paddy Aquaculture: A Case Study in Vientiane Province, Central Laos

    日本語PDF
  • PDF icon Download 2018_C03_A4_ja.pdf (566.18 KB)
  • PDF icon Download 2018_C03_A3_ja.pdf (296.37 KB)
  • English PDF
  • PDF icon Download 2018_C03_A4_en.pdf (402.58 KB)
  • PDF icon Download 2018_C03_A3_en.pdf (243.74 KB)
  • ポスターPDF
  • PDF icon Download 2018_C03_poster.pdf (478.5 KB)